安全は人、モノ、カネで成り立つもの。

テーマ:

本日4月25日は、107人もの尊い人命が失われたJR西日本の尼崎脱線事故が発生した日。時の流れは早く、もうあの事故から17年が経ちました。私もあの時のニュース速報をラジオで聴いて耳を疑いましたが、その惨状を見るなり鉄道ファンの一人としてかなりのショックを受けたモノです。

事故の要因は経験未熟だった運転士の過失ですが、その背景としてJR西日本の利益優先で安全軽視の企業体質の他に、ベテランの大量退職で若手を大量に採用した事による社員の歪な年齢構成、その事により後身の育成がままならなかった事など、複雑な事情が絡み合っていると言われています。

 

さて…所変わって北海道の話ですが、23日に発生した知床観光船の事故、あまりにも痛ましい限りです。

道民の一人として、犠牲者とそのご遺族に心よりお悔やみ申し上げます。

 

日本国内の旅客船事故としては近年稀に見る大惨事となった要因として、会社の杜撰な管理体制、まだ知床の海を知り尽くしていない船長の未熟さ、そして地元漁師ですらシケで漁をやめて港へ戻ってきている中、同業者の忠告を無視して予定通り乗客を乗せて出航したという問題点が次々と浮き彫りになっています。

 

ただ、観光船の運営会社も相当なブラック企業のようで、今の経営者に変わってから船長職だったベテラン従業員を全て解雇し、新たに雇った船長で船の運航を回していたというのですから開いた口が塞がりません。今回遭難した船を操縦していた船長もFacebookに自ら「ブラック企業で右往左往」という言葉を残している位ですから、利益優先で安全を軽視した企業体質に問題があったというのが背景なのは確かでしょう。これらの事情も尼崎脱線事故に通じるモノがあります。

 

結局、「人、モノ、カネ」全てが欠けていれば安全は成り立たないというのが改めて浮き彫りになったといえましょうか。

元々経営が苦しかったJR北海道も安全対策に「人、モノ、カネ」を投資しなかった結果、2011年の石勝線脱線火災事故を手始めに次から次へと事故やトラブルが相次ぎ、その事によって何よりも安全最優先の経営方針に変わっています。しかし、ベテラン社員の不足による歪な年齢構成で技術継承もうまくいかず、毎年大量の新入社員を採用しても給与などの待遇面や将来の不安などを理由に若手社員を中心とした大量離職が今問題になっています。

 

相変わらず終わる兆しのないコロナ禍で、運輸業は皆苦しい経営を強いられています。

JRも本州3社ですら赤字経営に転落し、特に西日本では先日赤字ローカル線の収支と輸送実態を公表したばかりです。

赤字経営が続けば、安全を担保するための「人、モノ、カネ」を確保できなくなり、他のJR各社もそうですが経営の足を引っ張る不採算路線をいよいよ整理しなければならない、その時が来てしまうのでしょうか。JR各社と沿線自治体は苦しい選択を迫られる事になりそうです。


安全最優先…人の命を預かる交通機関なら当たり前の事ですが、その事を軽視して起こってしまった先日の観光船事故に、ただただ愕然するばかりです。悲劇を繰り返してはなりません。

AD