宗谷ラッセルと根室本線キハ40 前編

2022年2月9日から13日にかけて北海道を訪れました。その前編として人生初の宗谷ラッセル撮影をエントリーにまとめました。

存在は知っていた北海道のラッセル。しかし雪中・深夜の自動車運転に自信がない事、そもそもラッセルより特急の編成写真のほうが好みだという理由で尻込みしていました。しかし、ついに2021年末ラッセルシーズンから石北本線のDE15から置き換わるということで、重い腰を上げて冬の北海道訪問を決めました。

そんな2022年1月末、根室本線の富良野~新得間のバス転換が事実上決定という衝撃的なニュースを耳にします。それなら、ラッセルと根室本線を掛け持ちできる、それは良いアイディアに思えました。


尻込みしていたラッセル撮影などと言う割に、やはり旅行となれば楽しみなものです。

しかし2月6日に札幌周辺が異例の大雪に見舞われ、札幌近郊のJRは全線運休。2月8日の夜からようやく札幌-小樽が運転再開するも、快速エアポートは2月9日朝にようやく間引き運転ながらも運転再開。

幸い、私の予約していたAIR DO 37便が新千歳空港に21:45着。2月9日最終の快速エアポート221号が22:05発と乗り継ぐことができました。

23時過ぎには列車の発着がなくなった札幌駅

しかしこの時点で特急列車が運転再開する見込みもなく(結局、特急が運転再開したのは2月11日)旭川へバスで行くしかありません。翌日の2月10日、7時に札幌を出発するバスは満席で乗れず、1時間待って8時発のバスで旭川へ。このブログを書くために時刻表を見ると7時半のバスがありますが、運休していました。いつ再開したか不明。

ところが高速道路が事故渋滞で旭川到着は1時間遅れの11時半。勿論、飛行機から最終の快速エアポートに乗り継いで、特急の予定をバスで旭川に無事に付けたならよくやったと思いますが、レンタカーでただちに北上し、名寄へ向かう宗谷本線ラッセル雪362を撮影するという想定は崩れてしまいました。

(余談ですが、最悪の想定としては札幌で一泊後に新千歳空港へ動いている地下鉄と路線バスで改めて向かい、女満別空港へ空路。北見から旭川へ特急大雪に乗るというプランも用意していました。こちらを実行する必要に迫られなくて良かったです)


さて、バスが旭川に到着したのが11時半。そこから名寄方面へ向かっても雪362には間に合いません。となれば撮影可能なラッセルは旭川→名寄を運転する雪351を比較的旭川近辺で撮影するほかありません。

急ぐ必要もないので、温かいラーメンで腹を満たした後に移動を開始。

雪351 蘭留-塩狩

人生で初めてのラッセル撮影の地として、蘭留の俯瞰を選びました。

国道40号線の蘭留駅を過ぎた辺りを左折し、冬季でも除雪されている林道に入ります。勾配がきつくなり、道路が大きく曲がる場所に「右方屈曲あり」の道路標識が立っている辺りに踏み跡がありました。

ここでは列車が「後追い」となるので、雪の少ない、ラッセル作業の望めないコンディションがベストです。まさにうってつけ。

そして、人生初のラッセル撮影の結果はこの通りです。決して悪いとは自分でも思いません。晴れているし、予想に反して雪を多少巻き上げていますが、赤い車体も良く見えます。そうはいっても、本当ならこの快晴で雪362を撮りたかったなという思いは消えないワケです。

3323D 特別快速「なよろ3号」雪351 塩狩駅

雪351は塩狩駅で停車しますので、通過する「なよろ3号」に間に合うように駅へ向かいました。

駅は山陰にすっぽりと入ってしまいますが、そう遠くない将来に引退するであろうラッセルと北海道最新型のディーゼルの並びをカメラに収めることができました。この区間にH100型が大量投入されたのは21年春のことですから、キハ40を拝むには一年遅かったです。

塩狩駅に停車中のラッセル。私と、もう一名、鉄の方がいらっしゃいました。平和で何よりです。

雪351 剣淵-士別

初日の最後は士別駅南側の道道536号線のオーバークロスから正面を狙いました。

勿論、補助翼もフランジャーも仕舞われていますが、夕暮れ時の静けさは伝わっているかな。そう思います。

士別にして日没。

士別の街で少し休んだのち、名寄の北東にある「なよろ温泉サンピラー」へ車を走らせました。市内からはやや外れますが、このエリアで最も遅い時間まで営業している温泉施設ではないかと思います。

スキー場の宿泊施設の温泉なので、利用者も多いですし、いかにもスノボな風貌の方も多いのでちょっとナァとは思いましたが、やはり温泉は気持ち良いものでした。


「まん延防止」だの「緊急事態宣言」だのが発令中で名寄のファミレスが早い時間に営業終了してしまうので、テイクアウトの牛丼を車内で食べて、日付の変わる12時まで時間を潰す羽目になりました。

早々に北上を開始する訳にはいきません。というのも、昼に撮影した雪351が名寄まで運転されたからと、必ずしも名寄以北を走る雪361が運転されるとは限らないためです。

雪361 音威子府駅

などとエラそうに書きましたが、仮眠から起きたのは雪361が名寄を出発したであろう時間をとうに過ぎていました。

時刻表と地図を眺め、音威子府駅が私がラッセルを追い越せる最も早い駅だろうと目星を付けました。待合室こそ暖房が入っているものの、暗闇に包まれたホームで数分待つと、ラッセルが入線してきたのでした。よかったよかった。

作業灯を点灯させたラッセルが駅を出発すると、あっという間に静けさと暗闇に包まれます。駅舎の明かりすら届かない暗闇です。こんな写真ですが、撮影地に行って撮りました、それ以外のストーリーがあるほうが思い入れが深まります。


音威子府駅からラッセルを追って北上し、天塩中川駅へ向かいました。

雪361/371 音威子府駅

音威子府の道の駅でトイレ休憩としましたが、佐久を過ぎたあたりで追いつけたでしょうか。この区間は速度が出ないのですね。

ラッセルが駅に滑り込む2, 3分前には余裕をもって駅前の駐車場に入ることができました。

雪361/371 音威子府駅

私一人、暗闇に撮り残された音威子府駅と打って変わって、撮影者に賑わう天塩中川駅バルブ。

雪361/371 音威子府駅

あっという間に約20分の停車時間が過ぎ、ラッセルの発車を見送りました。

この後、順当にラッセルを追いかけると、幌延、豊富、抜海駅へラッセルを先回りすることができるのだと思いますが、今回の北海道旅行は管理人単身で移動しています。

天塩中川から先のバルブは最初から考えていなかったとはいえ、夜のうちに稚内まで移動したかったのですが、限界を感じて豊富町の開源パーキングシェルターで仮眠としました。


開源パーキングシェルターで仮眠後、稚内へ向かいました。

稚内まで来るならば、稚内港北防波堤ドームをお目にかかりたかったのです。樺太へ向かう連絡船のターミナルだった場所です。船大工が型枠を作ったという優美なアーチで構成された防波堤ドームに圧倒されます。呑み込まれるようなコンクリートの建築に怖さすら感じました。

門司の大連航路上屋や大連の発着場…は近寄れてないですが、この時代の鉄道連絡船の遺構を見ることができるのは本当に幸いなことだと思います。


稚内に向かったもう一つの理由は、南稚内駅北側の車庫からラッセルが出庫するのを確認することだったのですが、実は正確に何時に出庫するのか把握できておらず、7時20分頃に運転士らしき鞄を持った人間が車庫に入っていったのを見て満足して移動しました。

改めて自分の行動を振り返ると、南稚内出庫を自分の目で見て確認しないならここまで来た意味半減どころではなかったと思います。

雪372 抜海-勇知 “勇知跨線橋”

稚内での自身の行動はともかく、この日は利尻富士の下半分が見えていたので、山の見える撮影地で、と悩みつつ稚内からの道道を南下して”勇知跨線橋”へ向かいました。初めてこのエリアを訪問して利尻富士の下半分だけでも見えるのは十分ラッキーだと思いますが、生憎、山の下半分を背景にして喜ぶのは私にはレベルが高すぎます。

補助翼が開かないのは分かっているので、文句はありません。

雪372 歌内-天塩中川 “歌内カーブ”

“勇知跨線橋”撮影後に豊富-幌延の跨線橋(45.084811,141.756487)へ向かいましたが、ここは曇り空で選ぶべき場所ではなかったです。宗谷本線に並走する国道から下半分だけの利尻富士とともに一枚仕留めるべきでした。

さらに有名な”雄信内俯瞰”へ向かいましたが、ここは登り口が不明に加えて明らかに時間不足でした。”雄信内俯瞰”へ向かうなら豊富周辺はパスして、抜海から直接向かうべきでした。

いろいろ反省点を抱えつつ、”歌内カーブ”へ向かいました。理想は雪を跳ね飛ばす豪快なカット…勿論、この日のコンディションではそんなものは期待できず、この通り。ただまあ、これはこれで。

雪362 天塩中川-佐久 “琴平カーブ”

天塩中川での停車時間に次の撮影地へ移動しました。”歌内カーブ”から”琴平カーブ”までは国道ではなく線路沿いの道道を使用しますから、レンタカーが数珠つなぎで走るにはちょっと怖いなと思いました。

“琴平カーブ”では補助翼もフランジャーも使用されました。天塩中川で操作員交代でもしたのでしょうか。作業灯も全点灯です。

鉄の集まっている雪山に上って適当に三脚を立てましたが、この立ち位置、左側のグレーの電柱が気になります。次の機会があるなら、もう少し下段で線路に近づきたいところです。

雪362 初野-美深

超有名な恩根内の跨線橋は好みの構図ではなかったので、最初から候補には入れていませんでした。恩根内をスルーするなら、必然的に美深周辺で撮影地を探すことになります。

美深駅の周辺ではもう一か所、駅の南側の俯瞰ポイント(44.460873, 142.385325)も候補でした。美深駅の停車時間では掛け持ちは不可能です。旭川から予定通りの特急か、一本早いバスに乗れていれば初日に南側の俯瞰へ行く予定でしたが、行けていません。

どちらへ行こうか、あるいは、確実性を上げて恩根内へ行くか悩みましたが、この踏切へ足を運びました。

撮影地でご一緒した方と、晴れていて雪を跳ねないカットは相当にポイントが低いのではという救いようの無い話題になりましたが、個人的には晴れた写真のほうが気持ちはよいかなと思います。


美深から雪351の撮影への転戦は不可能ではないにせよ時間的に怪しい事、雪351は蘭留の俯瞰を曲がりなりにも仕留めたからには、複線型の石北ラッセルへ向かうのが妥当であろうと判断をして、石北本線、中愛別へ転戦しました。

石北ラッセル雪551列車を中愛別に15:10着という事前情報でしたが、ラッセルは待てど暮らせどやって来ず、そうこうしているうちに北海道開発局のパトロールから国道の跨線橋の路肩から撤退せよ指示され、揉める気もないのですごすごと撤退。

結局、待っている間にやってきた他の鉄から、ラッセルは愛別に15:52着というダイヤであること、そして重要なことに翌日に宗谷ラッセルが運休し、翌々日に運転すると知らされました。

6084D 特急「大雪4号」中愛別-愛別

ともかく、ここまで来てラッセルをカメラに収めないというのも勿体ない話なので、傍の踏切で待っていると、遮断機が鳴り始め、文字通りあっという間にキハ183系気動車が通過してゆきました。

ラッセルに気を取られて忘れていました。「大雪4号」が通過する時間だったのです。痛恨のミスでした。

ラッセルの通過した15分後には太陽も山に沈んでしまい、機関車も富良野美瑛ノロッコ豪の派手なものでした。残念。

一日の最後に夕日を浴びる大雪山の山々、そして冬らしい、北海道らしい、風景を目にすることができました。

なんだかなあと思う場面の多かった一日ですが、最後の最後に美しい光景を目にして満足しました。美しいラッセルの写真を撮れるのが理想でしたが、それは容易ではないということです。


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