JR西日本のローカル線の存廃問題についての産経新聞の記事からあれこれ考察するシリーズ、

 

 前編では、記事の概要に触れながら、「交通事業者が自治体と協議しようとしても、自治体が廃線を恐れて協議自体を拒否する」という現状の問題点を中心にご紹介しました。後編では「なぜ自治体は鉄道の廃線を恐れるのか」について、私が考える理由を挙げたい思います。

 なお、これはあくまでも一個人の推測・主観的な考えによるものです。「路線の廃止を事業者から持ち掛けられたら、自治体はどのように感じるだろうか」ということを考えてみてもいいのではないかと思い、この記事をアップしています。

 

 

1.ごく少数であっても、実際に困る住民がいるから

 まず言えることは、「廃線になると移動手段に困る住民がいるから、廃線には反対する」という自治体の主張は間違っているわけではない、ということです。あくまでも、これ以外にも理由があるのではないか、というのが今回のお話です。

 

2.都市計画や交通計画、観光客の誘致に大きな影響が出るから

 自治体が策定する都市計画や交通計画には、鉄道路線は主要な幹線として位置づけられることが多いです。そんな路線がなくなってしまったら、今まで築き上げてきた計画を根本から見直さなければならなくなりますし、とりうる施策も限られてしまいます。

 また、遠方からのアクセスがしにくくなり、観光客が減ってしまうことにもつながりかねません。

 

3.自治体にとって大きなマイナス業績となるから

 コロナ渦以前より、地方を中心に人口減少が進み、公共交通の利用者が減り、鉄道やバスが減便になる事態は少しずつ起こっていました。一方で、高齢化の進行により、車がなくても移動できる「地域の移動手段の確保」の必要性は逆に高まり、交通事業者だけでなく、自治体も取り組むべき課題として重要視されるようにもなりました。交通空白地域を解消するために、多額の費用を投じてコミュニティバスやデマンドタクシーなどを運行する自治体も少なくありません。

 というわけで、自治体も「地域の移動手段の確保」という役目を担っているわけですが、鉄道が廃線になったらどうなるでしょうか。少なからず、住民や議会から「自治体は手をこまねいて見ていたのか、何も対策していなかったのか」と批判を受ける可能性があります。

 鉄道の利用者数や路線の維持、さらにはその自治体を訪れる観光客の数を自治体の施策目標に掲げている場合もあるでしょう。そうした場合は、大きなマイナス業績になることは必至です。

 

4.町のイメージが悪くなるから

 あまり言及されていませんが、廃線に反対する理由は、これもあると思います。廃線となったとなると、「この町は人流や町の賑わいがなくなっている」という負のイメージがつきかねません。また、都市部は基本的に鉄道が発達していることが多いので、廃線となると「自分たちの町と都市部との格差がさらに広がる」「自分たちの町が見切られたように感じる」「自分たちの町の衰退しているさまを、否が応にも見せつけられるように感じる」という思いにかられるかもしれません。

 こうして考えると、「不採算路線だからといって、廃止にしようとするな!」と自治体が身構えるのも納得できます。

 

<まとめ>

 いかがでしたでしょうか。鉄道の廃線に反対する理由としては、表向きは1,2で上げた理由が主張されることが多いです。しかし実際のところは、「廃線は自治体にとって大きなマイナス業績となる」「町のイメージが悪くなる」ことのほうを恐れているような気もします。

 それは分からなくはないのですが、前編でも記した通り、本当に大事なことは「地域住民が真に使える公共交通を、事業者や住民と協働で作っていく」ことのはずです。対外的なアピールにならなくても、地味で泥臭いものであっても、皆で公共交通を利用し、立場を超えて運行改善に取り組むことが必要ではないでしょうか。