Railway Frontline

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JR西日本、岡山DCに合わせ津山線に新観光列車「SAKU美SAKU楽(さくびさくら)」投入【鉄道最新情報】

2022年夏に開催が予定されている岡山デスティネーションキャンペーン(以下、岡山DC)に合わせて登場する「SAKU美SAKU楽」。特徴的な名前の新観光列車に込められたJR西日本の観光列車戦略とは。

皆様こんにちは。「Railway Frontline」運営者のNagatownです。

今回お伝えする【鉄道最新情報】はJR西日本の新たな観光列車、その名も「SAKU美SAKU楽」。JR西日本はこの列車を使ってどのように岡山DCを盛り上げようとしているのでしょうか。

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画像はhttps://www.westjr.co.jp/press/article/items/220317_06_sakubisakura.pdfより引用

「SAKU美SAKU楽」の基本情報

JR西日本は、2022年7月1日から津山線で新たな観光列車「SAKU美SAKU楽(読み:さくびさくら)」の運行を開始すると発表しました。2022年夏に開催予定の岡山DCに合わせ、岡山県北エリアに向けて運行します。

車両は、可愛らしいピンク色に染まったキハ40系気動車の一両編成。「温泉・おもてなしがもたらす癒しや、岡山県北エリアに名所として点在する桜をイメージした『淡いピンク色』の車体に、風に運ばれた四季折々の花びらをデザイン」したとのこと。列車種別は、全車普通指定席の快速列車となります。

今回発表された運行スケジュールは2022年7月~9月までのもの(10月以降の運行予定は後日発表)。毎週金曜~日曜の各日は臨時列車として、毎週月曜日は定期列車と併結する形で、JR西日本津山線の岡山~津山間を一日に二往復します。

 

特徴的なネーミングの訳とは?

ピンク色の車両デザインもさることながら、目を引くのはおよそ初見では正確に読むことができそうもない列車名。実は、一般公募をもとに決まった名前なのです。

約1か月間行われた公募では、Twitterと郵送で全国から542件(応募者数は291名)の応募がありました。その中で最も多かったのは美作や津山といった地名に関する列車名。その次に、美・桜・湯・花に関する列車名が多く寄せられました。最終的にこの中から事務局が選定し、「列車名に込められた思いが新たな観光列車のコンセプトにふさわしいこと」「車体カラーである淡いピンク色に似合い愛着ある表現である」といった理由から、「SAKU美SAKU楽」に決定したということです。

なお、「SAKU」という言葉には、①美しさ・楽しさを「作」る②笑顔・花が「咲く」③その地の美しさを探し求める「索」という3つの意味が込められています。

 

どんな旅ができる?列車内でのおもてなしは?

さて、「SAKU美SAKU楽」ではどんな旅ができるのでしょうか。空想の中で少し旅行をしてみましょう。

金曜日から日曜日に乗車する場合、岡山を出発する最初の列車は10時50分発です。岡山駅を発車し、山陽本線と別れると線路はすぐに緑豊かな山の中に入っていきます。旭川と並行して右に左にカーブを繰り返しながら大自然の中に分け入っていく乗車体験はとても気持ちがよさそうです。

車内に目を転じると、岡山県北エリアの山や森の自然をイメージしたという緑色のボックスシートと茶色の床が落ち着きを演出しています。車内アテンダントが届けてくれる特製弁当は、ホテルグランヴィア岡山の監修で、豊富な食材で岡山の伝統を感じられる「岡山ばら寿司」。地元の味覚に舌鼓を打てば、列車は程なく岡山と津山の中間に位置する福渡駅に到着します。

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画像はhttps://www.westjr.co.jp/press/article/items/220317_06_sakubisakura.pdfより引用

福渡駅では、地元のこだわり商品の詰め合わせが用意されています。「建部ヨーグルト」の”のむフルーツヨーグルト”や「ケーキハウスキシモト」の”サクッ咲くたけべクッキー”など、地元ならではのお土産がうれしいおもてなしです。

終点の津山には12時22分着。津山から先は三方面に延びる路線に乗り換えてさらに先を目指すもよし、鉄道好きなら駅近くの「津山まなびの鉄道館」で鉄道の歴史に触れるもよし。旅はまだまだここからです―。

 

JR西日本が描く観光列車戦略

JR西日本は近年、瀬戸内を走る「etSETOra(えとせとら)」や広島・山口エリアを走る「○○のはなし」、島根・鳥取エリアを走る「あめつち」といった観光列車を相次いで登場させています。これらの列車はいずれもキハ40系気動車の改造車を利用し、新造車両と比較してイニシャルコストを抑えているほか、特定の列車を特定の路線に対応させるのではなくエリアごとのイメージを反映させた列車とすることで、観光地のシーズンなどに合わせた柔軟な運用を可能にしています。今回登場する「SAKU美SAKU楽」もこの類型に含まれると考えられます。すなわち、岡山DCの終了後には同エリア内の他路線での運用も視野に入れているのではないかと推測できます。

また、運行ダイヤの設定にも少し戦略的な要素を感じます。津山駅に到着した列車は、30分~40分ですぐに岡山駅へと折り返していってしまいます。ここには、岡山北エリアの玄関口の役割を果たすターミナルである津山駅からさらに先を目指して旅を続けてほしいという思いが込められているのではないでしょうか。観光列車で津山を訪れた人たちが、さらにその先の路線を乗り継いでいくという流れができることによって、同エリアの隅々にまで観光需要による経済効果が及び、ひいては経営状態の苦しい地方路線の持続性向上にもつながることを期待したいところです。

奇しくも本日、3月17日は政府の蔓延防止等重点措置の全面解除が決定し、経済立て直しへの転換点といえる日となりました。コロナ禍の先に待つ観光需要の復活を見据え、JR西日本にとっての夏は既に始まっています。

「SAKU美SAKU楽」が津山線の沿線に新鮮で華やかな風を運んでくる日を楽しみに待ちたいですね。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

またお会いしましょう!

 

2022年3月17日

Nagatown