人気鉄道系YouTuberの西園寺さんが、1週間普通列車だけで日本縦断する企画を実施しました。 日本最北端の終着駅である稚内から、日本最南端の終着駅である枕崎駅まで、途中できるだけ観光しながら、普通列車だけで7日間で走破するというものです。今回はこの企画について分析したいと思います。

 

 

 

 なお、本文は100%ネタばれとなりますので、必ず本編をご覧になった後にこの記事をお読みいただくことをおすすめします。また、時刻は2022年3月12日ダイヤ改正前のものであり、現在とは異なりますのでご注意ください。

 

1.分析の前に~旅のルールや前提条件の確認~

 この企画にはいくつかルールがあったので、まずそれを確認します。

(1)乗車できるのは普通列車だけであり、新幹線や有料特急・急行には一切乗車できない。ただし、新快速などの快速列車は乗車可能。また、新幹線と並行する第3セクター線(青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道・肥薩おれんじ鉄道)も乗車可能。

(2)稚内から枕崎までの移動期間は7日間。7日間で枕崎にたどり着けなかった場合、ゴール失敗となり企画は強制終了となる。

(3)交通費以外で、1日に使えるお金は1万円まで。観光地や宿へ向かうバスやタクシー代もこの予算から出す。

(4)在来線がつながっていない函館~青森間は、フェリーで移動するものとする。このフェリー代およびフェリーターミナルまでのバス代は、交通費に含み、1日1万円の予算の対象外とする。

 

 なお、1・3・7日目の動画から、ロケは1月24日(月)~26日(水)と2月8日(火)~11日(祝)だと分かるので、1~6日目は平日、7日目は土休日ダイヤとして検証します。

 

2.実際の行程

 では初めに、実際に西園寺さんがとったルートをおさらいしましょう。<>で示した駅は、観光したりご当地グルメを食べたりした駅になっています。なお、札幌~白石間は別の切符を購入して移動されています。なお、4日目まではルートのみ表示しています。

 

1日目:稚内-<音威子府>-名寄-旭川-岩見沢-札幌

2日目:<札幌>-苫小牧-<登別>-東室蘭-長万部

3日目:長万部-<森>-<函館>-<青森>-八戸

4日目:八戸-<金田一温泉>-<盛岡>-一ノ関-小牛田-<仙台>-福島-郡山

5日目:郡山6:20→新白河6:59、7:04→黒磯7:27、7:32→上野10:05(浅草・スカイツリー寄り道)、12:11→<東京>12:16、13:07(12:55)→<熱海>14:57、15:18→静岡16:40、18:12→浜松19:11、19:13→豊橋19:46、20:03→米原22:10、22:11→大阪0:03

6日目:大阪6:51→姫路7:56、8:01→<岡山>9:29、10:07→福山11:07,11:14→三原11:47、11:59→<広島>13:13、14:45→岩国15:34、15:35→下関18:42、18:57→<小倉>19:11、20:15→久留米22:01,22:02→熊本23:30

7日目:熊本8:01→八代8:40、8:55→出水10:15、10:19→川内11:22、11:27→<鹿児島中央>12:16、14:02→<指宿>15:27、17:14→<西大山>17:33、18:53→枕崎19:58

 

というわけで、無事にゴールできました。北海道を脱出するのに3日かかりましたが、東北・東海道・山陽の移動で取り返し、最後は鹿児島を満喫することができました!

 

3.検証

(1)稚内の出発時間が1本遅くなっていたら?

 1日目の動画で、「稚内10:28発の普通を逃したら、次の普通は18:03発までない。18:03発に乗ることになったら、7日間で枕崎に到達できなくなる」との発言がありました。もし、稚内18:03発の普通でスタートしていたら、どうなっていたでしょうか。

1日目:稚内18:03→名寄21:49、22:16→旭川23:40  

2日目:旭川6:29→札幌8:58、12:27→苫小牧13:38→…

 

ということで、2日目に札幌で実際ルートに収れんします。しかし、1日目は真っ暗で景色も何も見えない中でひたすら乗るだけ、2日目も朝が早いうえに通学時間帯にも重なってカメラも回しづらいので、動画の面白さは半減していたことでしょう。

 

(2)北海道の停滞は痛かった?

 1日目には何とか深夜に札幌到達、2日目には最終列車を乗り逃し、危うく極寒の北海道で野宿になってしまうピンチに見舞われました。そんなこんなで、函館に到着したのは3日目の11:36、青森行きのフェリー出発は14:35でした。

 北海道でかなり停滞した感がありましたが、もし最速で乗り継いでいればどうなっていたでしょうか。

1日目:稚内10:28→名寄14:21,14:44→旭川15:55、16:12→岩見沢17:54、18:05→白石18:40、19:00→苫小牧20:13、21:56→東室蘭23:02

2日目:東室蘭7:26→長万部8:54、13:21→函館16:33

 

 長万部での接続がすこぶる悪く、函館に着くのは2日目の夕方です。青森・函館ともフェリーターミナルが遠いので、駅からフェリーターミナルまではバスを利用することとなります。最寄り駅から歩いて行こうと思えば行けなくはないですが、真冬の夜中に歩くことになってしまうため、現実的には2日目は函館泊、3日目の朝にフェリー乗船となるでしょう。

 それを考えれば、2日目に昼まで札幌でのんびりし、登別で温泉を満喫しながらも、3日目の午後にフェリー乗船を果たしているのは、観光をはさみながらうまく乗り継いだといえるでしょう。

 

(3)JRだけで東北を南下したら?

 今回の企画では、第3セクター線の青い森鉄道、IGRいわて銀河鉄道経由となっていました。もし第3セクターを使わず、JRだけで南下するとしたら、どうなっていたでしょうか。実際ルートでは3日目の21:30に青森を出発していたので、それを踏まえて一例をあげてみます。

 3日目:青森21:47→弘前22:30

 4日目:弘前6:27→秋田8:45、9:12→横手10:29、11:34→新庄12:55、14:19→山形15:32、16:31→米沢17:17、18:42→福島19:28、19:42→郡山20:31

 青森から福島まで、奥羽本線を全線走破するルートです。秋田・横手・新庄・山形・米沢で途中下車しても、4日目に郡山宿泊となり、これ以降は実際ルートに収れんします。これはこれで面白くはなったと思いますが、冬の日本海側は大雪や強風による運休のリスクがあるため、回避してよかったでしょう。

 

(4)JRだけで九州を南下したら?

 実際ルートでは第3セクターの肥薩おれんじ鉄道を利用していましたが、JRだけで鹿児島中央まで南下するルートも2つあります。1つ目は八代から肥薩線を通るルートですが、動画内でも解説があったように、災害により大部分が不通となっているので利用できません。もし肥薩線が通常通り運行されていれば、こちらを通っても見どころ満載の動画となったでしょう。

 2つ目は、小倉から日豊本線で東九州を縦断するルートです。このルートで枕崎まで向かう場合の最終乗り継ぎは以下の通りです。

 

6日目:小倉18:59→中津20:25→宇佐20:52→別府21:52→大分22:18→佐伯23:43

7日目:佐伯6:18→延岡7:26、12:34→宮崎10:04、14:48→都城16:02→国分17:29→鹿児島中央18:48→指宿20:06→枕崎21:27

 

 このルートの最大の難点は、大分・宮崎県境を越える佐伯~延岡間(通称:宗太郎越え)にあります。佐伯から延岡へ向かう普通列車は、なんと6:18発の1本のみ!!大分方面からの始発列車は7:43着なので、6日目に佐伯まで到達していないといけません。

 そこから逆算すると、6日目に小倉18:59発の普通中津行きに乗ることが条件となります。実際ルートでは6日目の19:11に小倉に到着していたので、日豊本線方面に進んでしまっていたら、ゴール失敗となっていました。

 

4.まとめ

 結局、実際ルートで7日目に枕崎へ到達するための最終乗り継ぎは以下の通りです。

<6日目>

宇都宮4:37→大宮5:54→東京6:30→横浜7:00→小田原7:57→熱海8:23→三島8:55→静岡10:00→浜松11:25→豊橋12:02→名古屋13:00→岐阜13:19→米原14:20→京都15:30→大阪16:00→三ノ宮16:23→姫路17:07→岡山18:40→福山19:40→三原20:14→広島22:04→岩国22:57→柳井23:30

<7日目>

柳井6:30→新山口7:56→下関9:53→小倉10:16→博多11:23→熊本13:22→鹿児島中央18:48→指宿20:06→枕崎21:27

 

 5日目に宇都宮、6日目に柳井(山口県)に到達していれば、時刻表上ではゴール可能です。東北以降は北海道よりは本数も多く、列車も速いので、前半もたついても後半で取り返せる設定となっていたわけです。

 ただ、どこかで途中下車する余裕を持たせることを考えると、現実的には5日目に名古屋、6日目に小倉まで到達しておかないと厳しかったのではないかと思います。

 実際ルートでは5日目に大阪、6日目に熊本まで到達していましたので、観光するゆとりもありました。なお、最速で乗り継いでも、枕崎到着は5日目の夜になるので、実際のところ観光に使える猶予は2日間ということになります。

 今回の企画は、ゴールできるかできないかよりも、ゴールするまでの過程をいかに充実させるかというところが、動画の見せ場だったと思います。2日間の猶予期間で、できる限りご当地のものを味わい、温泉に寄ったりで、制限がありながらも企画を見事に完遂されたのは、さすが西園寺さんだと思います。7日間の旅、非常に楽しく観させていただきました。

 なお、2日目に予算オーバーした”禊”として、路線バスだけで日本縦断することになってしまいました。次はどんな旅になるのか、動画を楽しみに待ちたいと思います。