JR東海が発売する企画乗車券に「シャトルきっぷ」というものがあります。この名称だけでは、どういった特長があるきっぷなのかが分かりにくく、通勤・通学時間帯にシャトル運用が行われている区間で利用できる回数券タイプのきっぷなのかと勝手に想像してしまいますが、実際には、東海道本線の穂積~醒ヶ井の各駅から米原までは在来線に、そして米原から京都・新大阪までは新幹線に乗車することができる往復タイプの企画乗車券です。京都・新大阪を目的地とすることや一部区間で新幹線を利用することをアピールするのであれば、例えば「新幹線 京都(又は新大阪)お出かけきっぷ」というような、もっと分かりやすい名称でもいいと思いますし、そもそも米原で乗り換えが発生することを前提としているにも関わらず、直通をイメージさせる「シャトル」という言葉を用いることにも違和感がありますが、そこは何かしらJR東海の深い意図があるのかもしれません。今回は、この「シャトルきっぷ」を初めて利用し、久しぶりに京都までの乗車旅を楽しんできましたので、その内容を紹介したいと思います。
「シャトルきっぷ」とは?
1 設定区間
東海道本線の穂積・大垣地区(穂積、大垣、垂井、関ケ原、柏原、近江長岡又は醒ケ井)から京都・新大阪までの区間で、先に紹介したとおり、発駅から米原までは在来線に、米原から京都・新大阪までは東海道新幹線の普通車自由席に乗車するものです。発着駅は上記7駅に限定されており、岐阜や西岐阜の設定はありません。また、穂積・大垣地区→京都・新大阪を往路とするもののみで、その反対(新大阪・京都→穂積・大垣地区を往路とするもの)はありません。
米原-京都間の在来線(琵琶湖線)には新快速が設定されているため、わざわざ米原で乗り換えて1区間だけ新幹線に乗車しなくても十分ではないかという意見もあるでしょうが、JR側の事情からすれば、琵琶湖線はJR西日本、東海道新幹線はJR東海と別会社になることから、このきっぷを発売するJR東海としては、すべて自社路線で完結させたいという思惑があるのだと思います。
ちなみに、新幹線に乗車することができる企画乗車券を所持していれば、新幹線に替えて同区間の在来線を利用することもできることが多い(例:新幹線名古屋/豊橋往復きっぷなど)と思いますが、「シャトルきっぷ」では米原-京都間の在来線を利用することはできず、別途乗車券が必要となる旨がしっかりと券面に記載されています。
2 利用/発売期間
通年で発売されており、平日や土・休日を含めて利用可能ですが、ゴールデンウイークや年末年始などの多客期には利用できません。
また、有効期間は2日間で、日帰り旅行だけでなく、1泊2日の旅でも利用することが可能です。
3 発売箇所
上記7駅で自駅を発着するもののみ発売しています(大垣発着分のみ周辺の旅行会社でも取り扱いあり)。つまり穂積発着分は穂積駅でしか購入することができず、僕のように名古屋・岐阜方面から引き続き乗車したい場合でも、一旦は上記7駅のいずれかで下車して「シャトルきっぷ」を購入しなければなりません。
という訳で、今回は金山-穂積間の往復乗車券を購入し、穂積で下車して「シャトルきっぷ」を購入しました(穂積で下車するのはきっぷを購入するためだけです)。事前に名古屋や金山で「シャトルきっぷ」を購入することができればさらに便利なのですが、JRのきっぷのルールでは、原則として購入する駅を発着駅とする乗車券を発売することになっているため、やむを得ません。そういった事情もあってか、「シャトルきっぷ」は名古屋や岐阜方面から京都・新大阪まで乗車する際の“定番商品”とはなっておらず、JR時刻表のトクトクきっぷのコーナーでも紹介されていません。
4 ねだん
各駅からの価格は、次のとおりです。
発着駅 |
シャトルきっぷ |
正規運賃+自由席特急料金 |
京都 |
新大阪 |
京都 |
新大阪 |
穂積 |
4,700円 (20.9%) |
6,340円 (38.7%) |
5,940円 |
10,340円 |
大垣 |
4,700円 (20.9%) |
6,340円 (38.7%) |
5,940円 |
10,340円 |
垂井 |
4,140円 (22.8%) |
5,680円 (41.3%) |
5,360円 |
9,680円 |
関ケ原 |
3,760円 (25.1%) |
5,680円 (41.3%) |
5,020円 |
9,680円 |
柏原 |
3,760円 (25.1%) |
5,680円 (41.3%) |
5,020円 |
9,680円 |
近江長岡 |
3,440円 (26.2%) |
5,040円 (44.1%) |
4,660円 |
9,020円 |
醒ケ井 |
3,440円 (26.2%) |
5,040円 (44.1%) |
4,660円 |
9,020円 |
※ シャトルきっぷ欄にある(%)は、正規運賃+自由席特急料金に対する割引率を示す。
全体的に、京都までのきっぷよりも新大阪までの方が割引率が高くなっています。これは、米原-京都間で新幹線の普通車自由席を利用する際に特定特急料金が適用されるため、元々の特急料金が安価に設定されていることによるものだと思います。京都までのきっぷでは往復の正規運賃に720円~760円を、新大阪までのきっぷでは往復の正規運賃に1,060円~1,080円を追加することで、往復とも新幹線に乗車できる訳ですから、特に新大阪を往復する際には、かなりおトクに利用できると思います。
今回使用した、金山-穂積間の往復きっぷと「シャトルきっぷ」の実物です。穂積駅では、近距離券売機にも「シャトルきっぷ」口座が設定されており、券売機と窓口のどちらでも購入することができますが、僕はマルス券で発券してもらいたかったため、あえて窓口で購入しました(僕の次に窓口を利用している方も「シャトルきっぷ」を購入していました)。
京都までの道中は、東海道本線の区間では313系に乗車し、新幹線も安定のN700Aでした。上の写真はともに米原で撮影したものです。これまでにも何度か撮影したことのある車両ですが、少し時間に余裕があったので、数枚撮影してみました。そういえば、313系乗車中に車窓を眺めていると、大垣車両区にJR東海の新たな通勤型車両である315系が何編成か留置されていました。3月12日のダイヤ改正までの間、神領車両区から一時的に疎開しているのでしょうか?
米原-京都間は新幹線でわずか20分弱で、あっという間に京都に到着しました。言い忘れていましたが、今回はいつものような乗り鉄旅と違い、さらに別の路線に乗り継いで先を目指すことはなく、京都市内でちょっとした観光を楽しみたいと思って計画したものです。といっても事前に決めていたのは、昼食に平野屋本店で「いもぼう」を食べることと、祇園辻利の本店にある茶寮都路里でパフェを食べることくらいで、あとは駅でお土産を買う程度です。
駅前から市バスに乗車して祇園に向かいました。京都の市バスに乗車するのは久しぶりです。バス停から八坂神社の境内を通り抜けて、平野屋本店を目指します。僕が初めて平野屋本店を知ったのは大学生の頃です。どういったいきさつだったのか詳しくは覚えていませんが、家族全員で平野屋本店を訪れて「いもぼう」を食べさせてもらったことを覚えています。いかにも老舗らしい佇まいで風情があり、京都に来たら是非とも立ち寄りたいお店のひとつです。
辻利本店を訪れるのは初めてです。以前、入店を待つ長い行列が続いているのを目撃したことがあり、すぐに入店できるかどうか心配しましたが、今回はとどんど待ち時間はなく10分程度ですぐに案内してもらえました。注文したパフェは期待どおりの味で、濃い目の抹茶と甘い苺が見事に調和し、京都らしい上品で奥深い味わいです。また、見た目にも美しく、すぐに食べてしまうのがもったいないくらいでした。
この他にもちょっと寄り道をしながら、予定どおりに京都旅行を楽しむことができ、僕としては十分に満足です。今回は久しぶりに京都市内を巡りましたが、やはり京都旅行はいいものです。僕は京都の歴史や文化に対する知識も見識もなく、単なるミーハー旅行者にすぎませんが、京都という街全体に人を惹きつけるような不思議な魅力を感じます。日常の中に非日常があるというか、普段は自分の心の隅っこで小さく眠っている感性が呼び起こされるといったイメージでしょうかね。京都は、今の自分に何かの気付きを与えてくれるような気がします。
そして気付けば、もう2月もほぼ終わり、すぐに3月となります。少しずつ暖かな日も増えてくると思いますので、体調にも気を付けながら、春に向けて乗り鉄旅を楽しんでいきたいと思っています。