省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

飯田線のクモハ42008 (蔵出し画像)

 クモハ42というと、宇部小野田線で2003年まで、70年間活躍し、どうやら現在も車籍があるらしい42001があまりにも有名ですが、実は飯田線の方にもっとたくさんいました。飯田線にはクモハ42008, 009, 010, 013 の4両が在籍していました。クモハ42は43とともに、1950年に関東にいた51系と交換で横須賀線用として上京しましたが、42は、多くは横須賀線で長く使われることはなく、間もなく伊東線に転じました。さらに、若番グループが宇部線の快速ときわ用として転じ、後半グループが飯田線に集結しました。

 飯田線では、最晩年は主にクハユニ56をつないだMcMcTpgcの40番台運用、およびMcTTMcの30番台運用に使われていました。しかし、下り側もしくは、幌をしっかり備えていたため40番台運用の中間に入ることが多く、パンタグラフを前に掲げた姿を撮影する機会がほとんどありませんでした。本車も残念ながらパンタグラフを前に掲げる写真が撮れなかった車輛の1両です。飯田線のクモハ42は011を除いてはかなり原型に近い姿をとどめていたので、パンタグラフを前にした写真が撮れなかったのは返す返すも残念でした。

 なお以下の写真の一部は、露出面で問題があって (露光不足) 掲載する気になれなかった写真ですが、今回 ART を使って露出の大幅な補正を図りました。主に対数トーンマッピングトーンカーブを使って補正し、さらにノイズ低減も使っています。明暗差のある画像の補正にはARTの対数トーンマッピングはかなり使いやすいと思います。

 

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クモハ42008 豊橋駅 (1978.1)

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クモハ42008 豊橋駅 (1978.5)

 

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クモハ42008 豊橋駅 (1978.1)

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クモハ42008 豊橋機関区 (1976.5)

 こちらの写真と、下の写真は40番台運用の中間に入ったクモハ42008です。

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クモハ42008 豊橋機関区 (1976.5)

 最後に本車の車歴です。

1934.2.5 川崎車両製造 → (1934. 6-7頃? 使用開始) 大ミハ → 1937.11.6 大アカ → 1948.12.7 座席整備 → 1950.3.28 更新修繕I 吹田工 → 1950.9.26 東チタ → (1951.3頃?) 東イト → 1956.7.11 更新修繕II 豊川分工場 → 1956.12 静フシ → 1957.1 静トヨ → 1978.11.28 廃車 (静トヨ)
 田町から伊東支区に移った日付が分かりませんでしたが、クモハ42001は、1951.3.6に移っていますので、同時期と推定しました。最初は、関西の名門、宮原に配置されますが、1937年には明石に移ります。おそらくクモハ52や合いの子が配置されたため、玉突きではないかと思います。その後宮原に復帰することなく上京しますが、間もなく伊東線に転属します。しかし、1956年に身延線に転じます。これは横須賀線のクモハ43を偶数車、下り寄りに集中させる運用方針になったため、奇数(上り寄り)のクモハ43が伊東にやってきて42は地方に追われたためです。おそらく横須賀線は、横須賀-久里浜間の日中区間運転用2両運用のため、クモハ43を70系に全面的に置き換えきれなかったのと、この区間運転は下り側クモハ43上り側クハ76で運転されていたため、偶数車のみ残されたのでしょう。

 一旦は身延線に移ったものの、身延線はトンネル内での電車焼損事故対策によって、電車の低屋根改造の方針が決まったため (1955-6年度にかけてモハ14に対して更新修繕IIで低屋根化改造を実施)、両運だった本車は飯田線に移動させられたのではないかと思います。あるいはモハ14が更新修繕を受けている間の一時的な電動車不足を補うため、助っ人として富士電車区に入った後、本来の行き場である飯田線に移ったのかもしれません。その後21年間飯田線で、一時快速運転運用のため湘南色にも塗られて活躍しましたが、1978年の豊橋機関区80系導入を受けて廃車となりました。