「上瀬谷ライン」計画は維持へ。2027年花博までの開業は断念

撤回はせず

旧上瀬谷通信施設跡地に建設を計画している新交通システム「上瀬谷ライン」について、横浜市が花博までの開業を断念しました。一方で、計画そのものは維持し、検討を続けます。

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花博の輸送機関

「上瀬谷ライン」(仮称)は、旧上瀬谷通信施設跡地に横浜市が計画している新交通システムで、相鉄線瀬谷駅~上瀬谷(仮称)間2.2kmの整備案が公表されています。

同跡地では、2027年に国際園芸博覧会(花博)が予定されていて、閉幕後に大型テーマパークなどの集客施設を建設する構想もあります。上瀬谷ラインは、その主要輸送機関という位置づけです。

横浜市は、上瀬谷ラインの運営事業者として、市の第三セクターの横浜シーサイドラインに参画を依頼。しかし、同社は花博閉幕後のテーマパークの事業内容などが未定であることなどを理由に、2021年11月25日に事業への不参画を市に通知しました。

この不参画表明により、2027年の花博開催までの上瀬谷ライン開業はきわめて困難になりました。

横浜シーサイドライン

山中市長が断念

これを受け、山中竹春市長は12月10日の横浜市議会本会議で、「花博開催時の新交通システムの活用は難しくなった」と答弁。花博開催までの上瀬谷ライン整備について、事実上断念したことを明らかにしました。

山中市長は花博開催時の輸送手段として「シャトルバス中心の輸送体制や周辺道路の拡幅、駐車場の整備を進める」と述べ、「バスの定時制や速達性を確保できる輸送システムを早急に検討する」とも付け加えました。

市長の新方針表明により、花博輸送はシャトルバスを基軸として行われることとなり、上瀬谷ライン計画は棚上げにされることが明確になりました。「バスの定時制や速達性を確保できる輸送システム」という答弁から、いわゆるBRTが検討されそうです。

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撤回せず

上瀬谷ラインは、最大8両編成に対応する大規模な新交通システムです。沿線の再開発を前提とした輸送力を備える交通機関であり、再開発の中身が決まらないうちに建設を強行すれば拙速の批判を免れません。そのため、計画棚上げの判断は妥当でしょう。

ただ、山中市長は上瀬谷ライン計画そのものの撤回表明は避け、計画を維持する姿勢を示しました。

横浜シーサイドラインも、経営不参画について「現時点では参画しない」という表現にとどめています。将来的な参画については含みを残し、「採算性や継続性について抜本的な見直し提案がされた場合は、当社は本事業への参画を再検討する」との社長コメントを公表しました。

延伸計画は決まるのか

上瀬谷ラインで計画が決定している区間は瀬谷~上瀬谷間の約2.2kmのみですが、実際には延伸を想定した設計になっています。延伸先は決まっていませんが、若葉台を経て十日市場駅や長津田駅までの延伸が有力視されています。

横浜シーサイドラインは、経営不参画の理由の一つとして、テーマパーク計画が未定なことに加え、「具体的な延伸計画が示されていないこと」も挙げています。したがって、今後、テーマパーク計画の事業計画がまとまり、延伸計画が明確になった段階で、採算性を考慮したうえで経営参画を受諾することはあり得るでしょう。

ただ、そうした新たな計画がいつ固まるのかは定かではありません。そもそも、跡地に大型テーマパークが決まらなければ、新交通システムを作るという話に進みませんが、その誘致に成功するという保証はどこにもありません。

となると、最終的には「棚上げ」から「凍結」に至る可能性も少なくなさそうです。(鎌倉淳)

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