20年 ETCで 快走や


令和2年2月11日に逝去された野村克也氏をしのぶ会が今日、明治神宮野球場で執り行われました。ノムさんが阪神タイガースで監督を務められたのは平成13年(2001年)のシーズンまでだったので、もう20年経ちました。ノムさんが命名した「F1セブン」が実を結び、今季は12球団最多の盗塁数を誇る走れるチームに育ちました。

ふと20年前の出来事を思い返すと、全国の主要な高速道路でETCが供用開始されたのが平成13年だったのです。そこで今回は20年前に書いたETCに関する記事を復刻しました。こんな苦悩の時代もあったんやなと思っていただければ幸いです。


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今では殆どの自動車がETCレーンをノンストップ通過するようになりました(神戸淡路鳴門自動車道北淡ICにて)


高速道路の料金所を強行突破してみたいという思いは全てのドライバーに共通の願望であろう。21世紀になった平成13年、全てのドライバーの夢を合法的に実現できる日がやってきたのである。

Electronic Toll Collection System、通称ETCと呼ばれるこの「自動料金収受システム」は、専用の車載器を搭載した車が料金所のゲートを通過すると、路車間を無線で交信して運転手の口座から通行料金を引き落とす仕組みになっている。もちろんこのような夢の装置に世間の関心は非常に高く、インターネットで「ETC」を検索してみるとなんと31,400,000件も引っかかったのである。国民的アイドルの「モーニング娘。」でさえ138,000件、世界を敵に回した憎っくき「タリバン」でも75,300件であることを考えれば、世間のETCに対する期待の大きさたるや異常なまで盛り上がっているのである(平成13年10月29日Googleで検索)。平成13年の流行語大賞にノミネートされること間違い無しだ。


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当時の愛車、スバルレガシィツーリングワゴンです。撮影場所不明


僕の住む兵庫県では平成13年7月23日より阪神高速や第二神明の一部料金所で供用開始された。だがETCへの道は険しい。自動車用品店に行って「ETCください」とか言って即取り付けという訳にはいかないのだ。
まずETCカードというクレジットカードを作ることから始めなければならない。これは普通のクレジットカードではダメで、ETC専用のカードが要るのだ。ETCカードはカード会社10社ほどが発行しており、すでに個人で持っているカードと同じ会社のものを選択するのが好ましい。そこでJ社にするかO社にするかあれこれ悩んだあげくO社のカードを申請することにした。(CMで「使えるね」と言ってたはずだが)

ここからが長い。まずO社のホームページから申請用紙を自宅に送ってもらうために必要事項を書きこんで送信。このとき7月の上旬。約1週間後に申請用紙が来るはずなのだが、その頃には海外出張に出かけてしまい自宅のポストに申請用紙が眠ってしまうことになる。出張予定が予定より1週間も延びてしまい、結局申請用紙をポストに投函したのが7月23日、ちょうどこの日関西地区でETC供用開始となった。クレジットカードの発行には通常3週間かかるのだが、8月中旬を過ぎたというのに待てどくらせど来ない。もしや審査ではねられたかと思いカード会社に問い合わせたところ、8月23日に印刷所を出るとの回答。お盆休みを挟んでしまったのが敗因か。8月23日に出るということで8月25日(土)に到着してほしかったが、結局ETCカードは来ず。日曜日仕方なく自動車用品店へ行ってみるもののETCカードがなければ登録できないとの事で、車載器の予約だけして帰った。


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平成31年(2019年)2月の四国旅行からの帰路で高知から利用した神姫バスが高知ICのETCレーンから高知自動車道に入るところです


翌8月27日の夜待望のETCカード到着。しかし翌日からまたも海外出張のため、結局2週間無駄にすることになった。帰国してすぐETCカードを手に自動車用品店(自動後退)へ。予約していた車載器を買いに行く。アンテナ分離型の機種。だが購入したからといってすぐには取り付けできない。「セットアップ」という登録が必要となるのだ。このセットアップに通常1~2週間かかるらしい。だが2週間たったらまたもや海外出張だ。ここまでくると展開は予想できる。やはり出張前に登録は完了しなかった。よってここでも無駄な時間を費やすことになる。出張のたび関空までのリムジンバスが阪神高速湾岸線の本線料金所に並ぶとETC専用レーンを通過する車の有無を観察するためにキョロキョロするのが定着してしまった。観察中の心理状態は自分より先にETC専用レーンを走り抜ける車を見たくないような、かといって誰も通らないと淋しいというどちらに転んでも鬱な状況だった。って言うか車載器つけようよリムジンバス! ちなみに観察結果だが、ETC専用レーンを颯爽と通過して行く車を見ることは一度も無かった。


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関西国際空港と神戸三宮を結ぶ大阪空港交通のリムジンバスも現在ではETCを装着しています。平成28年(2016年)9月、六甲アイランドで撮影


予定より1週間も延びて3週間ぶりに帰国した翌日、オトバへ直行。ようやく我が愛車最速レガピィに車載器搭載。このときすでに10月13日。動き出して3ヶ月もかかってしまった。車載器取付まで日本一時間のかかった記録であろうし、今後破られることは無いと思われる。

コンパネ下に取付けた車載器へETCカードを挿し込む。コンという電子音と「ETCが利用可能です」と女性の事務的な声がする。第二神明道路大久保インター(東行)。ここには3つのレーンがあり、1番右が「ETC専用」レーンである。ここのインターには右折して入るのだが、僕の前に5台ほど車がいた。この5台が一般レーンで停止するあいだに右側の「ETC専用」レーンに入る。時速40キロで進入、おっ車載器が反応した。「料金は100円です」とまたもや事務的な女性の声。レーンを塞いでいるバー(踏切の遮断棒のようなもの)が自動的に上がり時速40キロを維持したまま通過。バーが上がるまでの間が不安だったが、無事通過できたことで「買ってよかったETC」を実感した。速い車をさらに速くする装置であることを改めて思い知る。


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今では当たり前となった「ETC専用」レーン(阪神高速道路3号神戸線摩耶東行料金所にて)


車は東へ進んで本線上にある須磨料金所へ。ここは渋滞の名所であり、ETCの効果が最もありそうな料金所だが、「ETC/一般」という共用レーンしかないのだ。これはまだETCが普及していないのでETCレーンをETC非搭載の一般庶民にも使わせていることを意味する。つまり料金所で一旦停止して通行料を支払う一般庶民の列に並ばされてしまうのだ。もちろん前の車が料金を支払って行ってしまえばノンストップで通過できる。料金所の方でもETC車であることが分かるらしく、料金所のオジサンは軽く右手を挙げてくれたので、こちらも軽く会釈する。もちろん窓は閉まったままである。共用レーンの場合バーはあがったままであるが、通り抜けると「料金は700円です」と車載器が教えてくれる。第二神明東区間200円+阪神高速西区間500円の合計700円なので間違い無い。


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ETC供用開始時点では「ETC/一般」レーンが多く、速達性が阻害されました(阪神高速摩耶東行料金所にて)


初日のETC体験はとりあえずここまで。やはり「ETC専用」レーンでないとダメね。第二神明高丸のように1レーンしか無いような料金所では物理的にやむを得ないが、複数のレーンがあれば最低でも1レーンは専用レーンにしてほしい。

ここでETCのいいところを10個挙げてみよう。
1)何といっても最大のウリは料金所でいちいち停まらなくてもいいこと。
2)専用レーンの場合、料金所で並ぶ一般車をゴボウ抜きできるので速く目的地に着けること。
3)また一般車を横目に颯爽と通り抜けて気分爽快になれること。
4)バーが無事上がるまでの間、スリルを味わえるという密かな楽しみが持てること。
5)車の加速時に多く排出される排気ガスを削減できるので地球環境に優しいこと。
6)料金所渋滞を緩和(解消?)できること。渋滞の原因が料金所である例が多いようだ。
7)料金所が近づいたとき小銭を探しまわる必要の無いこと。
8)料金所でいちいち窓を開ける必要のないこと。雨の日でも問題無し。
9)料金所で受け取ったつり銭を座席の下に落っことしたりせずに済むこと。
10)料金支払い後にもらった領収書を片手に持ちながら窓を閉め、隣のレーンから出る車と加速競争をしなくても良いこと。心に余裕が持てる。

つまり「速い車をより速く」してドライバーが快感にひたるだけでなく、地球環境に優しかったり、交通渋滞を緩和したりで自分以外の見知らぬ人々に対しても大いに貢献してるってこと。

これらに加えて、11月30日からは登録(インターネットでも登録できる)さえすれば20%もの割引が適用されるのである。これは平成16年6月までの期間限定であるが、うまく使えば最大3万円もトクすることができるのだ。(日本道路公団(JH)、阪神高速、首都高速の3公団それぞれ最大1万円ずつ割引) つまりJHの場合、片道1万円の区間を5回乗れば1万円割引になる計算だ。阪神高速の西区間だけ乗った場合は100回で1万円割引だ。3万円割引になれば高いと思える車載器代がほとんど帰ってくるのも同然である。

ハイウェイカードにも割引があるではないかとの指摘もあろうが、5万円のカードに対して8千円のプレミアなので14%の割引に過ぎない。なおかつ料金所で停まって窓を開けなければならない。誰が見てもETCの勝ちであることは明らかだ。


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今では2レーンあれば1レーンを「ETC専用」、もう一つを共用レーンにしていることが多いようです(阪神高速摩耶東行料金所にて)


翌週は奈良まで遠征。第二神明→阪神高速神戸線→環状線→松原線を経由して西名阪自動車道を天理まで走った。途中、第二神明須磨本線(兼用レーン)、阪神高速神戸線尼崎本線(専用レーン)、西名阪自動車道2箇所(どちらも兼用)の料金所をノンストップで通過した。唯一の専用レーンだった尼崎本線はよく空いており残念。帰りは阪神高速松原線→環状線→大阪港線→湾岸線魚崎浜までのルートで、途中の料金所は松原線大和川本線(兼用)、湾岸線南芦屋浜本線(専用)の2箇所。専用レーンのある南芦屋浜本線はいつもの通りよく空いていた。

さて今のところ(平成13年10月時点)ごく一部の限られた料金所でしか使えないETCだが、11月30日からは全国の主要な高速道路で供用開始される予定である。つまり入口の料金所で通行券を受け取り、出口の料金所でさんざん並んだうえ高額の現金を授受する必要性がなくなるのだ。通行券を無くすというリスクを排除できるので安心感に満ちた快適ドライブが約束されるのである。いずれはカーナビのように普及するのだから、早めに買って優越感にひたるべし。

最後に一般車のドライバーへ告ぐ。「ETC/一般」と表示された兼用レーンは「本当はETC車だけに通ってほしいけど、一般車のレーンが減ったら文句を言われるから仕方なく使わせてやってる」という意味だから、なるべく遠慮するようにね。


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阪神高速摩耶西行料金所は通行量が多く、3レーン中2レーンがETC専用となっています


ここまで20年前の自慢話をお読みいただきましてありがとうございます。当時装着していたETC車載器はパナソニックの分離型で3万円台、さらにセットアップ費用などを合わせると5万円近く突っ込んだ記憶があります。割引拡充や助成制度で普及率が上がりましたが、長年使っている利用者への還元も欲しいところです。ETC20周年を記念した長期割引やポイント進呈など期待していますので、是非ともよろしくお願いします。

では、魚を捕まえに行ってきます!