西鉄「雑餉隈新駅」の駅名案を考える。難読地名を活かすのか

駅名大喜利西鉄版

西日本鉄道が福岡市内に建設中の「雑餉隈新駅」について、駅名案を募集しています。例によって、駅名候補を考えてみましょう。

広告

雑餉隈~春日原間

雑餉隈(ざっしょのくま)新駅は、西鉄天神大牟田線の雑餉隈~春日原駅間に建設予定の新駅です。雑餉隈駅南東約600mの場所で、県道49号大野城二丈線との交差部分付近。西鉄バス雑餉隈車庫に隣接しています。JR南福岡駅からは約700mの距離にあります。

開業予定は2023年度後半(2024年)です。開業を約2年後に控え、新駅のデザイン案を公表するとともに、駅名案を公募するものです。

駅名案の募集期間は2021年12月1日から12月31日までで、駅名発表時期は2022年夏ごろを予定しています。寄せられた駅名について、西鉄、福岡市、地元代表による選考会を実施し、西鉄が最終決定します。

なお、新駅は既存の「雑餉隈駅」とは別に設置します。現在の雑餉隈駅改札は天神寄りに数十メートル移動しますが、駅名に変わりはありません。

雑餉隈新駅名募集
画像:福岡市

竹岡町周辺

ということで、すでに募集期間に入っていますが、例によって駅名案を当サイトで勝手に考えてみましょう。

まず、オーソドックスに地名から考えると、新駅が設置されるのは博多区竹丘町周辺です。近くには春町や西春町、東雲町といった住所もあります。これらはいずれも新駅名の候補でしょう。すなわち、「竹丘」「竹丘町」「春町」「西春町」「東雲町」が新駅名の候補となります。

このなかで、駅が立地するのは主に竹丘町のようなので、「竹丘」もしくは「竹丘町」は有力候補でしょう。複数地名をあわせて「竹丘春町」「東雲竹丘」などもありそうです。「しののめ竹丘」と、ひらがなに開くとニュータウンぽくなります。

近くの名所としては、雑餉隈桜並木通りがあります。これに注目すれば、ズバリ「桜並木」や「桜並木通」、地名とあわせた「さくら春町」などもあり得るでしょうか。

広告

交通結節点に

ここで、なぜ雑餉隈駅からわずか600mの場所に駅を作ることになったかを考えてみます。現在の雑餉隈駅は大通りから奥まった位置にあり、駅前広場がありません。そのため、周辺のバス路線はJR南福岡駅を発着地としており、雑餉隈駅前には乗り入れていません。要は、現在の雑餉隈駅は、交通結節点としてあまり機能していないのです。

新駅は西鉄バスの雑餉隈車庫に隣接する位置に作られ、駅前広場も設けます。西鉄としては、新駅を路線バスが乗り入れる交通結節点として再開発しようと計画しているわけです。下図は現在の雑餉隈近辺のバス路線図ですが、雑餉隈車庫に駅ができれば、交通結節点として機能することがわかります。

雑餉隈バス路線図
画像:西鉄バス路線図

となると、新駅に知名度の低い地域名を付けるよりは、「雑餉隈の新交通結節点」という機能がはっきりわかる命名がよさそうです。となると、「新雑餉隈」は有力な選択肢でしょう。「新」の付く駅名は、新幹線駅に代表されるように、新たな交通結節点のイメージを併せ持つので、雑餉隈新駅の役割にも合致しそうです。

ちなみに、住居表示の雑餉隈町は、西鉄雑餉隈駅から南に離れた大野城市にあり、新駅のほうが近いです。新駅が雑餉隈駅の南にあることに着目すれば「南雑餉隈」もあり得ますが、その場合「雑餉隈町の北にあるのに南雑餉隈駅」というややこしい話になってしまうので、選択しづらそうです。

雑餉隈にまつわる命名としてもう少し考えてみますと、「本雑餉隈」「雑餉隈中央」「雑餉隈プラザ」「雑餉隈竹丘」「雑餉隈春町」「ざっしょ春町」「新ざっしょ」などなど。雑餉隈町への入口という立地に注目すれば、「雑餉隈ゲートウェイ」は……、ごめんなさい。

雑餉隈新駅
画像:西鉄プレスリリース

南福岡エリアと考えれば

JR南福岡駅から700mという位置に着目することもできます。「南福岡」はJR線の始発・終着駅であり、地域の交通ターミナルとして知名度が高く、「南福岡」がエリア名にもなっています。

そのため、新駅を「南福岡エリア」と捉えるなら「西鉄南福岡」という命名も悪くありません。「南福岡地区の西鉄駅」という意味で、利用者にはわかりやすいでしょう。

「南福岡」にちなんだ命名としては、「新南福岡」「南福岡プラザ」「南福岡中央」「南福岡新町」「南福岡春町」などなど……、いろいろ思いつきます。長すぎるというのであれば、「西鉄南福」はいかがでしょうか。

いっそ、二つのエリア名をあわせて「ざっしょ南福」は……、だめですかね。

広告

新駅名予想

ということで、いろいろ検討してみましたが、新駅名称候補として、誰もが本命と考えそうな決定的な名称はなさそうです。だからこそ、駅名公募に至ったのでしょう。

ということで、ここまでの案を基に、当サイトで雑餉隈新駅の駅名を予想してみます。

本命:新雑餉隈
対抗:西鉄南福岡
対抗:竹丘春町
穴馬:さくら春町
大穴:ざっしょ南福

「雑餉隈」は、周辺地域を包括している歴史ある地名なので活かしたいと考える人は多そうです。そのため、「新雑餉隈」を本命としてあげました。

雑餉隈駅周辺には昔ながらの繁華街がありますが、「新雑餉隈」は雑餉隈の知名度を活かしつつイメージを一新するエリア名になるでしょう。

ただ、「雑餉隈」は難読地名ですので、新駅名としては使いにくいという判断になる可能性もあります。地域住民だけが利用するような駅なら難読性はあまり問題になりませんが、広域の交通結節点を目指すなら、遠方からの旅客に配慮して読みやすい駅名を選びたくなります。

難読地名を活かすのかという点は、この新駅名選びの隠れた争点といえるかもしれません。

雑餉隈vs南福岡

「雑餉隈」に比べれば、もう一つのエリア名である「南福岡」は誰でも読める平易さが長所です。そもそも、JR南福岡駅はもともと雑餉隈駅だったところ、終着駅(列車の行き先)としてのわかりやすさに配慮して「南福岡」に変更したという経緯があります。

西鉄がJR利用客を奪いたいと考えているのであれば、現在JRが独占している「南福岡」という名称を取り込むのが合理的です。となると「西鉄南福岡」が対抗馬として有力と考えます。

今回は請願駅ではありませんが、行政が強い発言力を持つのなら、地名を足した「竹丘春町」が選びやすそうです。「桜並木」に注目するなら「さくら春町」あたりなら、新鮮さと安定感が両立しそうです。

なお、いつものことですが、筆者の予想はだいたい外れます。(鎌倉淳)

応募はこちらから。「新しい駅の名前を募集します」(西鉄サイト)

広告
前の記事【書評】『宮脇俊三の紀行文学を読む』 鉄道紀行文の第一人者の魅力を探求
次の記事JR東日本「ワンマン運転」の先にある課題。「無人運転」は実現するか