津市内を南北に貫く京阪電車石山坂本線(石坂線)は、市内電車と郊外電車の両方の性格を兼ね備えた不思議な存在だ。南側の旧市街地部分は半径80mという路面電車並みの急カーブが連続し、駅間距離も短く、スピードもあまり出ない。しかし、大津市役所前駅から北は、それまでの走りが嘘のように6km余にわたって長い直線区間が続き、電車もぐんとスピードを上げる。

 とはいえ、全線にわたって民家の裏を縫うように走る区間が多く、好撮影地は少ない。以前は北に行けば田園地帯が広がっていたが、今は宅地化が進み、〝緑〟と絡めたポイントを探すのはひと苦労だ。

アオダモと600形

まずは錦-京阪膳所間を走る「伝教大師1200年大遠忌記念」のラッピング車(2020年5月8日、クリックで画像拡大)。民家の庭にアオダモが咲いていたので、青空とともにねらってみたが、無理やりこじつけた感が否めない。

坂本の風情
 
 次は坂本比叡山口-松ノ馬場間を行く標準塗装車(同6月1日、クリックで画像拡大)。穴太衆積みを思わせる石垣と、マキの植え込み、白壁の民家…歴史的な門前町・坂本ならではの光景が広がるが、これもほんのわずかな区間のみだ。

イチョウ

2020年秋、これまでにないユニークな塗装車両が登場した。かつて大阪・天満橋と浜大津(現びわ湖浜大津)の間を直通運転していた「びわこ号」の塗色を復元したものだ。この化粧直し、2年限りといい、沿線には撮影者の姿が絶えない。左は大津市役所前付近を走る604号車(同1112日、クリックで画像拡大)。クリーム色の車体が、黄葉したイチョウとマッチして、なんともいえず美しい。