私鉄の乗車券類の地紋で、東北から信越地区の私鉄の古い券に、地紋が「JPR/してつ」となっている券が見られます。
過去のエントリから、「JPR/してつ地紋」の券の画像を幾つか再掲いたします。
◆十和田観光電鉄
◆秋田中央交通
◆庄内交通
◆羽後交通
◆蒲原鉄道
◆ 磐梯急行電鉄
◆ 上田丸子電鉄
◆千曲自動車(千曲バス)
◆松本電気鉄道
このように、「JPR/してつ地紋」の乗車券類は、東北地区から信越地区の私鉄の古い券に見られる地紋となっています。
前置きが長くなりましたが、この「JPR/してつ地紋」の券を調製した印刷会社は、長野県上田市に所在する「中澤印刷株式会社」となります。
これまでは知識としては知っておりましたが、同社が過去に乗車券類の調製を行なっていた事は一般には公表されていなかったため、具体的な会社名をブログに書くことは控えておりましたが、同社がウェブサイトを開設され、この中で過去の乗車券類の調製について触れられておりますので、情報が一般に公表されたものとして、今回具体的な会社名をご紹介する事といたしました。
同社のサイトの「Company profile」の記載からの引用です。
昭和2年 原町に平版部を新築し、移転統合する。 戦争中業界統制にて鉄道統制会新潟支部、日本鉄道会新潟支部の指定工場となり、旧新潟鉄道局、仙台鉄道局管内各私鉄乗車券を印刷する。
昭和22年 株式会社に改組、中澤印刷株式会社とする。同年新潟地方鉄道協会指定工場となり、又新潟地方索道協会協力工場となる。
この記載で注目いたしましたのは、「日本鉄道会新潟支部の指定工場となり、旧新潟鉄道局、仙台鉄道局管内各私鉄乗車券を印刷する。」の部分で、これによりますと同社が乗車券類を調製していた私鉄は、「旧新潟鉄道局、仙台鉄道局管内の各私鉄」となりますので、過去のエントリの画像の再掲でご紹介いたしました「JPR/してつ地紋」の乗車券類を発行していた私鉄各社と符合します。
「日本鉄道会新潟支部の指定工場」、「新潟地方鉄道協会指定工場」の記載から、かつては鉄道省~国鉄の指定を受けなければ、私鉄の乗車券類の調製が出来なかったものと考えられ、私鉄の古い乗車券類を見ますと、会社は異なっていても地紋や活字などに同じ特徴を持つ券に、地域的な偏りが見られますので、この記載で長年の疑問が氷解いたしました。
画像を再掲いたしました私鉄各線の他にも、弘南鉄道、同和鉱業小坂鉄道、佐渡汽船、新潟交通、長岡鉄道、栃尾電鉄、越後交通、頚城鉄道自動車などでも、「JPR/してつ地紋」の乗車券類が発行されているのを確認しており、地紋は異なりますが、活字の特徴から長野電鉄でも「中澤印刷株式会社」調製と見受けられる乗車券類が発行されております。
「ERC/ながの地紋」だが、料金の数字の活字のフォントから、「中澤印刷株式会社」調製と見受けられる長野電鉄湯田中駅発行の連絡普通急行券
「中澤印刷株式会社」調製と見受けられる乗車券類は昭和50年代に発行された券以降は見かけなくなりますので、「Company profile」に記載はありませんが、昭和50年代に乗車券類の印刷を終了したものと思われ、同社が乗車券類の印刷を終了した後、「JPR/してつ地紋」の乗車券類を発行していた会社は、廃止となった私鉄線を除いて他の印刷会社へ切り替わりますが、後継の印刷会社が「日本交通印刷」となる例が多く見られますので、これも何かしらの事由があるのでしょうか??