283系電車は、海と太陽が大好きな列車というキャッチフレーズで1996年3月31日に特急スーパーくろしお(オーシャンアロー)として登場し、1997年3月8日のダイヤ改正ではオーシャンアローとして、京都,新大阪~新宮間で運用されていました。2012年以降は287系の投入で列車名がくろしおになり、現在では主に新大阪~白浜間で運用されています。
非貫通型先頭車
非貫通型先頭車はイルカをイメージした外観で、鯨のイメージの強い南紀に合わせたデザインとなっています。流麗さと地域色を高いレベルで実現した非常に完成度の高いデザインだと思います。
貫通型先頭車
個人的にこのデザインも中々洗練されたデザインだと思います。(リニューアル前のタンゴディスカバリーにも似ているような気がします)
基本的に非貫通型先頭車は新宮方、貫通型先頭車は京都方ですが、283系は基本編成が2本、付属編成が2本の少数ですので、車両検査時等では付属編成2本を用いて、非貫通型先頭車が京都方、貫通型先頭車が新宮方の変則編成(この場合グリーン車の位置は通常のくろしおとは逆になります)が組成される事があります。
また、繁忙期には京都方に付属編成3両を繋いで9両編成になる事があります。また、両端の先頭車共に非貫通型となる場合があり、この時はグリーン車が2両になります。
ロゴマーク
ロゴマークは南紀の海とイルカをイメージしたようなものになっています。
デッキ
デッキは、白熱色のスポット照明という点は他のJR西日本の特急車と同じですが、こちらは化粧板が少し紫がかっていて、少し華やかな印象があります。
グリーン車
グリーン車照明
トンネルor夜間走行時
グリーン車の照明は、白熱色のスポット照明+ポイント間照明で構築された非常に独特なデザインになっています。
グリーン車車内
シートモケット,壁面,荷棚,カーペットの配色とデザインが完璧に調和され、車内に足を踏み入れた瞬間、グリーン車に乗車する緊張感と高揚感を一瞬で感じさせてくれる極めて完成度の高いデザインです。
また、この車内は明るい所を走行した時とトンネルや夜間等、暗い所を走行した時で印象が大きく異なるのも特徴です。明るい所を走行している時は、大きな窓の採光を車内にたくさん取り入れ、南国を彷彿させるような非常に爽やかな車内になりますが、暗い所を走行している時は、まるで南国の高級ナイトクラブのような非常に雰囲気のある車内へと変わります。
また、先頭部はパノラマ構造となっていますので迫力のある前面展望が可能となっています。また、グリーン車の室内と運転席が少し離れているため、運転士のノッチ操作音や呼称の声があまり入ってこないのも個人的には好ポイントでした(この辺は好みが分かれそう)。
ただ、前述の通り、283系は運用の関係上、グリーンの位置が逆転する場合がありますので、前面展望をしたい方は少し注意が必要です。
グリーン車座席
また、登場年次(1996年)を考えれば仕方の無い事かもしれませんが、コンセントが全く装備されていないのも欠点です。うp主はあまり気になりませんが人によってはこれが気になる人は少なくないかもしれないです…
良くも悪くも283系のグリーン車は昔のグリーン車といった感じがします。ただ、この非常に洗練された車内のデザインと優れた座席は、現代のグリーン車が見習う非常に優れた大切なポイントだと私は強く思います。
普通車
普通車照明
トンネル走行時
普通車の照明は、白熱色の間接照明が多いJR西日本の特急車の中で淡い模様+白熱色のスポット照明+白熱色の荷棚下の補助照明という、JR西日本の特急にしては異色な設計となっています。
またグリーン車と同様に日中時とトンネル走行時で印象が大きく変わるのは共通ですが、こちらは補助照明がありますのでトンネル走行時でも明るいです。
奇数号車車内
偶数号車車内
個人的には奇数号車が爽やかな印象、偶数号車が華やかな印象があります。
座席
リクライニング時
座り心地は、貧弱な見た目に反して良く、柔らかめですが、形状を工夫しホールド性も確保してあり、振り子を使用した時の車体の傾きにもしっかりと身体をホールドしてくれます。
テーブル
テーブルは軽量化?のためか、背面テーブルはなくインアームドテーブルのみとなっています。
また、JR西日本の特急では珍しく、ドリンクホルダーが搭載されています。
シートピッチは、JR西日本標準の970mmですが、座席の支持方式が片持ち式となっているので、足元はかなり広いです。
前述の通り振り子式の車両ですので、振り子を使用すると車体が傾きます。デッキを見るとその時の様子がよく分かります。
振り子使用時のデッキ(思い切り振り子エラーを起こしていますね(笑))
また、オーシャンアローには基本編成の3号車には、展望ラウンジコーナーが存在します。
展望ラウンジ1
展望ラウンジ2
ソファーとスツールは全て一方を向いていて、これは紀勢線に入ると海側を望める仕様となっています。
スツール側にはカウンターテーブルの下側にも窓ガラスがあり、展望性を高めています。
スツール側にはカウンターテーブルの下側にも窓ガラスがあり、展望性を高めています。
乗り心地に関してですが、振り子式車特有の徹底的な低重心化の恩恵か、安定感がありかなり良いです。
また、車体が普通鋼製なためかステンレス製車体の振り子車によくある剛性不足からの車体の嫌なビビり振動が少なく、振り子もコロよりも転がり抵抗が約半分のベアリングガイドを使用しているためか、コロ式の振り子車と比べて、振り子を使用している時の乗り心地が良いです。
静寂性は、個体差はあるかもしれませんが、私の乗車したオーシャンアローは非常に静かで、モーター音が全然聞こえなかったです。個人的に静寂性の良さなら今までの車両の中でTOP5には入ります。ただ、振り子車故なのか、JR西日本の他の車両には全く聞こえない特殊なゴロゴロとした走行音(車輪フラット音か?)がしました。
走りについてですが、パワー的に見れば681系と同じ定格出力220kwモーター+1M2T組成ですが意外にも加速が速いです。683系程高速域では鋭くありませんが、ギア比が681,683系に比べて低速向けになっており、低中速域の加速は681,683系に比べてかなり良いです。これはサンダーバードと違って、くろしおは130km走行出来る所がほとんどない上に、過密ダイヤで加減速を頻繁に行う阪和線や、カーブで加減速が多いきのくに線に合わせたセッティングだと思います。また、遅延時の回復運転では0-120kmを70秒位で加速したという話も耳にしました。
ここまで見ると良い事尽くめに見えるオーシャンアローですが、JR西日本での扱いはお世辞にも良いものとは言えず、近年故障が頻発し、失敗作の烙印が押されているのも事実です。
例を挙げますと、283系以外の全てのくろしおが非振り子車に変わったり、287系が投入された2012年では、オーシャンアローの列車名をくろしおに変えられたり、2016年3月のダイヤ改正では1本だけ残っていた京都行の運用を287系に置き換られたり、2017年では付属編成1本を除く全編成がほぼ同時故障したり、華形運用であった新宮にほとんど乗り入れなくなったり、車両検査時に見られた付属編成を2本繋いで3+3の6両編成とした変則変則が287系3+3連モノクラス編成に差し替えられたりする等、最近の扱いは正直かなり酷いです。
今はもう無くなった京都乗り入れ