国鉄民営化とは何だったのか? 石田礼助総裁VS大蔵省・国会 | 鉄道ジャーナリスト加藤好啓(blackcat)blog

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福祉と公共交通の視点から、鉄道のあり方を熱く語る?
blackcat こと加藤好啓です。
現在の公共交通の問題点などを過去の歴史などと比較しながら提言していきます。
随時更新予定です。

国鉄総裁、ご乱心

 

国鉄は、独立採算制の公社という形態にも関わらず、大蔵省の思惑から、賃金の決定まで予算で縛られている有様でした。

第二次長期計画が予算ベースでは残り2年という中でも中々進まないと言うことになりました。

その原因には、諸物価の上昇や、人件費の増加などもありました。

石田総裁は、昭和39年度の予算に関しては、昭和40年度最終年度までに完遂する為に必要な金額を請求せよとして、かなり強気な予算を提出したのでした。

 

昭和39年度は予算で 2,733億円(在来線のみ)の改良費を要求したそうですが、大蔵省主計局の査定は、前年並みの1330億円の査定でした。
独立採算制の公社という枠組みでありながら、人件費も実行予算も政府の承認がなければ1円も動かせないということになるわけです。
 
こうした、強気の予算要求に驚いた大蔵省は、「殿ご乱心」ならぬ、「総裁、ご乱心」として国鉄を非難したそうですが、石田総裁にしてみれば、国鉄は日本の経済を支えている国鉄ですから、予算を削られるような事があっては、安全な運行ができないと考えていたわけです。
 
石田総裁は、池田首相に直談判
 
例年通りと査定された、国鉄予算に対して石田総裁は、池田首相に直談判することとなります。
石田総裁は、就任の際
、池田首相から、「出来るだけの応援はする」という口約束を取り付けており、
「総理が約束を守らぬようなら、辞任する」と息巻いたと言われています。
そこで、折衝と言うこととなり、以下の条件で合意に達したわけですが、国鉄が必要とする予算には遠く及ばず、第三次長期計画が策定されることとなりました。
大蔵大臣との折衝で、決定したのは以下のような内容でした。
 
改良費 2,733億円の要求に対し979億円減の 1,754億円という政府案が次のような附帯条件のもとに決定した。
i) 38年度において新幹線工事に流用した 100 億円を38年度に補正する。
ii ) 39年度の不足分は差当り 400 億円の債務負担額をつける。
iii) 39年度においては優先補正措置を講ずる。
こうした対応に関しては、石田総裁はすこぶる不満であったようで、第46回国会 衆議院 運輸委員会 第5号 昭和39年2月7日では、今回の措置に関しては、「頭を撫でられた」だけであり、本質的な解決にはなっていないと不満を漏らしています。
少し長いですが、重要なことなので引用してみたいと思います。
私は国鉄総裁として総理大臣に対して第二次五ヵ年計画はあと三十九年と四十年の二年しかないのだから、その間に残りの六割をぜひ完成するようにしたいので、予算をぜひ考えてもらいたい、こういうことでお願いしたのでありますが、御承知のとおり財政投融資その他において千億ばかり打ち切られた。三拝九拝の後、ようやく債務負担というような、ことしには金の使えない、来年になってようやく金の使えるようなもので四百億円、そのほかに百億円というようなことで、頭をなでられたわけです。とてもこんなことでは国鉄としての使命を尽くすことはできぬ。この改善策を一体どこにわれわれは求めるか、こういう問題であります。 
国鉄としての問題ではなく、政府の計画として国鉄の輸送力増強を考えて欲しいと明言
国鉄の五カ年計画は、国鉄自らの予算で行ってきたわけですが、こうした計画は所得倍増計画とも関連する問題であるから、政府として国鉄の輸送力を含め総合的な計画を立てるべきではないかと提案していますが、しがらみがない、官僚出身でない石田礼助総裁故に、このように歯切れの良い発言が出来ていると言えます。
ただ、こうした発言がなされています。
反面、大蔵省にしてみれば、国鉄が独自の動くのを極度に警戒していたわけで、あくまでも政府のコントロールが出来る中においておきたいという思惑がありました。
大蔵省(主計)にしてみれば、全ての金の出入りは、大蔵が抑えたいという思いがありますからいたずらに、国鉄が力を持つのは避けたいという思いがあったかと思いますが、実際石田総裁が発言しているように、所得倍増計画などは経済発展を伴うものであり、経済発展を更に進めようと思えば、交通網の整備は喫緊の課題であり、そうした意味で国鉄の輸送力増強も政府の全体の経済成長の中で考慮していくのは当然と言えば当然のことであると言えました。
そこで、私の考えついたことは、これまでの国鉄の五ヵ年計画といい、何といい、すべてこれは国鉄だけの計画なんです。そうしてその計画の内容は予算を要求するときに至って初めてわかるのです。ほんとうに一般の人に了解されておらぬ。ここにわれわれのやり方についての過失がある。だから国鉄の輸送の状況というものは所得倍増計画にも関連する重大問題であるがゆえに、国鉄のいまの計画でなくて、政府の計画ということにしてもらいたいという意味におきまして、これに対しては、国鉄ばかりでなくて、特別の、大蔵省、通産省、それから国会議員その他の方々に入っていただいて、政府の案として計画を立てるように、そういう意味からして委員会をひとつ設置していただきたい、こういうことで、これはずっと前に申し入れたのであります。

 

続く

 

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日本国有鉄道研究家・国鉄があった時代

 

 

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