今回は好評だった鉄道コラムを久しぶりにお送りいたします。いつも通りボリューム満点です。
今回は東海地方(静岡県・愛知県・岐阜県・三重県)4県の私鉄事業者13社局の車両にスポットを当て、私が厳選した3形式を紹介させていただきます。
と、その前に・・・週末の首都圏では様々な鉄道に関する出来事がありましたね。
10月23日初電から24日終電にかけてJR山手線内回りを運休させて渋谷駅改良工事を実施、拡幅された内回りホームを早く見てみたいですね。
そしてJR常磐線・成田線E231系マト139編成のスカ色ラッピングが、10月23日に剥がされました。
前置き長くなりましたが、これより本題に入ります。
【名鉄7000系】
真っ先に名車だと思うこの車両を選びました。
1961年6月1日にデビューした名鉄7000系は、「パノラマカー」の愛称で長年親しまれた名古屋鉄道を代表する特急車両で、日本で初めて運転台を2階に上げて前面展望席を設置したほか、細かいピラーで区切られただけの連続窓、ミュージックホーン、デジタル式速度計、スカーレット一色の外部色など当時としては異例尽くめの特急車両となりました。
パノラマカー登場前の1959年に一般車両初の冷房車「名鉄5500系」(上写真)が登場し、一般家庭や乗用車に冷房がない当時の利用者や沿線住民を驚かせましたが、「独創的なところが何もない」と感じていた白井氏に対し、副社長だった土川氏が5500系をどう思うか質問すると「夢も希望もない」と即答したそうです。
そのやりとりの後、白井氏は「あるべき車両」について土川氏に長い手紙を書くと、すぐに土川氏に呼ばれ「今までにない展望車の計画の創造に全面的に努力せよ」という特命が下り、車両部が総力を上げてパノラマカーの開発に挑みます。
踏切事故が激増していた当時の名鉄、列車の運転を統括する運転部の部長が「乗客を危険にさらすわけにはいかない」と車両部に対して抗議、衝突しても安全な電車を作らなければならなくなり、沿線企業の萱場工業(カヤバ)からダンパーを先頭部分に設置するという提案があり、「ダンプキラー」の異名を持つパノラマカーが誕生したのです。
小田急ロマンスカー「NSE」3100形(1963年~2000年)にも採用された「オイルダンパー」(ヘッドライト部に内蔵)は、パノラマカーが時速約85Km/hで衝突したダンプカーを跳ね飛ばし、先頭車のガラスが一部割れた程度で無傷に近く、乗客数名がガラスの破片に当たるケガで済んだという伝説があるほど安全性に優れたものです。安全性が立証された反面、名鉄は旧型の木造車両との衝突を恐れていたそうな・・・
2008年12月ダイヤ改正をもって定期運用を離脱し、2009年8月にさよなら運転を行い全廃、中京競馬場内に3両が保存されているほか、トップナンバー先頭車2両が舞木検査場で保存されました。
パノラマカーは何度か乗りましたが、小田急ロマンスカーとは一味違う快適さを体感し、衝撃を受けた記憶があります。いつか保存車両を見に行ってみたいですね。
【静岡鉄道A3000形】
2つ目は43年振りの自社発注で度肝を抜いたあの車両です。選んだ理由は静岡鉄道が気合いを入れて投入した意気込みを感じ、鉄道友の会「ブルーリボン賞・ローレル賞」選定の際に投票した経緯があります。
2016年3月24日にデビューした静岡鉄道A3000形は、1000形置き換えのために投入している車両で、総合車両製作所のステンレス車両ブランド「sustina」を採用し、アルミ車体と同様の軽量化を実現しました。
性能面では、VVVF制御・回生ブレーキ・交流誘導電動機を採用、車内はオールロングシートで、ドア上には32インチハーフサイズの液晶ディスプレイを千鳥配置で3箇所に配置し、広告表示や停車駅案内等を表示しています。
2017年の鉄道友の会ローレル賞を受賞、選定理由として、
①現在の鉄道車両において確立・熟成された高い信頼性を持つ技術をバランスよく選択している。
②当社の路線規模・運行形態・保守性等を十二分に考慮し、コンパクト且つオーソドックスにまとめられた車両である。
の2点が評価され、静岡鉄道で初めて受賞しました。くどいですが私の一票も入ってますよ
2両編成×12本が約8年かけて投入される予定で、7本は「shizuoka rainbow trains」と称し、パッションレッド〈情熱的 活動的、いちご〉、プリティピンク〈かわいい ロマンティック、桜エビ〉、ブリリアントオレンジイエロー〈暖かさ 幸福感、みかん〉、フレッシュグリーン〈新しさ 優しさ、山葵〉、ナチュラルグリーン〈安全 自然、お茶〉、クリアブルー〈安心 誠実、富士山〉、エレガントブルー〈上品 信頼、駿河湾〉)と静岡市の様々な要素をイメージしたカラフルな塗装となり、その他編成については、全面広告対応車両となる予定です。
【伊豆急行2100系】
最後は普通列車とは思えぬ快適な車両、伊豆急行の「リゾート21」2100系です。
2100系は、伊豆急行が誇る観光用車両で、8両編成5本(R-1~R-5)製造され、1986年ブルーリボン賞を受賞しました。
先頭車には展望席、海側には窓向きバケット型ロングシート、山側には2人がけ固定式クロスシートが設置されるなど伊豆半島観光の足として特別な内装になっているのが特徴で、土休日を中心に運転される特急「リゾート踊り子」から伊豆急行線、JR伊東線の普通列車まで幅広く運用されています。
伊豆急2100系の登場によって触発されたJR東日本は251系の開発・製造に踏み切りました(2020年3月引退)
運転席まわり先頭車展望席
両先頭車には階段状になった展望席があり、運転士の頭越しに前面展望を楽しむことができます。
海沿いに向けられたシートからの眺めは最高ですフカフカしたシートがたまらん
R-3編成は、デビュー間もない1988年4月20日運転の快速「リゾートライナー21」で、私鉄車両として初めて東海道本線 東京駅まで入線を果たす偉業を成し遂げ、2011年には開業50周年記念として100系をイメージした塗装に変更され、「リゾートドルフィン号」となりましたが、2017年2月からは、伊豆の特産品である金目鯛をPRする「Izukyu KINME Train」へリニューアルされ、赤を基調とした外観に変更しました。
二代目「黒船電車」として活躍中のR-4編成は、前面窓を大きな1枚窓へ変更、愛称も「リゾート21EX」と呼ばれ、JRのグリーン車に相当する「ロイヤルボックス」を新製から設けたほか、トンネルに入ると天井に星空のイルミネーションが展開される特殊照明を採用しました。
黒船電車は渋いですね
フカフカした快適な座席にも関わらず、普通列車用の車両だからスゴいの一言に尽きます「黒船電車」車内
1993年に登場したR-5編成は、車体形状を丸みを帯びたものにし、塗装の配色パターンも赤と青が交互に入ったストライプに変更され、「アルファ・リゾート21」の愛称が与えられていました。
改造工事のため長津田工場へ(八王子駅にて)
DE10ディーゼル機関車に牽引されJR横浜線内を走るアルファ・リゾート21
2017年7月からR-5編成「アルファ・リゾート21」が、水戸岡鋭治デザインの観光列車「THE ROYAL EXPRESS」へ大幅にリニューアルされました(写真は改造が行われた東急長津田車両工場への輸送風景)
未だに撮影してない観光列車「THE ROYAL EXPRESS」(画像参照元:Wikipediaから)
海岸近くを走る路線の特性上、塩害の影響が強いため老朽化が早く進み、R-1編成とR-2編成が2006年と2009年にそれぞれ引退し、東急電鉄から譲り受けた8000系車両(上写真)に置き換えられました。
R-2編成の4号車2102
塩害の影響を受けやすい路線で活躍する3本の2100系には長く活躍して欲しいと願います。
私が厳選した3形式は以上です。
東海地方には関東や関西に無い個性的な車両が多く活躍しており選ぶのにかなり悩みました
上写真の伊豆箱根鉄道7000系もリゾート21と同じぐらい快適な車両でノミネートならず残念でしたこれも完成度の高い車両です
今回も最後までご覧下さり、ありがとうございました。