Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

3回目は、ヘルヴェティア(Helvetia)号です。TEE発足当初から運行されている歴史のある特急列車。ブログ筆者の貧相な発想力からすれば、ヨーロッパの列車名っぽいので好きな名前ですw。なお、ドイツのTEEの第一号がヘルヴェティア号であったことは、意外と知られていません。ちなみに、同時期の客車TEE列車であるラインゴルト号、ラインプファイル号、ブラウエル・エンツィアン号の運行開始は1965年5月30日でした。

 

列車名の由来は?

Wikipediaによると、アルプス山脈とジュラ山脈に囲まれた台地からなる古代ヨーロッパ中央地域のローマ名であり、位置的には現在のスイス西部に該当、その名前は現在でも詩的に使われているようです。

 


運行されていた国  西ドイツ、スイス

 

運転時期と区間

1952年にF-Zugとして運転開始

 

1957年6月2日〜1979年5月26日 ハンブルグ・アルトナ駅〜チューリヒ中央駅

 

【他列車の車両交換や併結】

※1967年5月28日〜1971年5月22日 TEEレンブレント号(アムステルダム〜ミュンヘン間)の車両(2両)をマンハイム〜チューリヒで併結(車両交換)

※1971年5月23日〜1979年5月26日 64列車 チューリヒ→バーゼル間(片道)で、TEE64列車アルバレート(Arbalète)号と併結運転

 

以降は、2等車連結のインターシティーに降格

 

使用された車両、編成

ディーゼル列車

【西ドイツ】

VT08型ディーゼル特急列車 

1957年6月2日〜 VT11.5型の納期遅延の影響で4ヶ月あまり「つなぎ」で運用されています。なお、VT.11.5が登場後も、8両以上の中間車増結が動力車性能上無理なVT.11.5の付属編成として活躍していた時期もあります(例えばハノーファーの国際見本市の時期などハンブルクからフランクフルト中央駅間で増結実績あり)。

※その際VT08とVT11.5の動力協調方法は不明

 

VT11.5型ディーゼル特急列車 

1957年10月14日∵〜1965年4月11日

∵納入開始は’57年8月18日にVT 115003にはじまり、それが完了したのが10月14日とのこと。

 

構成編成の一例ですが、編成両端に動力車(2両)と中間車7両の9連(ハンブルクから、Pw4ü+4üm+4üm+WR4y+AR4y+A4y+4üm+4üm+Pw4ü)

ちなみに1965年に「お役御免」となったVT11.5編成ですが、今度はTEEパリ・ルール号のフランス国鉄編成との入れ替えで運用に就いています。

 

 

客車列車

 

【西ドイツ】

ラインゴルト型客車 ※1 1965年4月12日〜 

1965年運転開始当初の編成:ハンブルク〜チューリッヒ間でコンパートメント車(Av)2両、オープン座席車(Ap)1両の座席車3両、食堂車1両、バー・コンパートメント合造車1両の5両編成と、付属編成としてハンブルク〜バーゼル間で最大3両(コンパートメント車2両、必要に応じてオープン座席車1両)で構成。

※1 Wikipedia(ドイツ語)によると、1965年客車切り替え当時は、ディーゼル列車VT11.5の中間車を、そのまま電気機関車牽引用に改造していたようです。

 

マンハイム駅で行われていた、北行きのヘルヴェチア号とレンブラント号との車両交換の様子が参考文献に明記されていました。読みやすさのため文献内容を一部再構成しています。

11時05分、チューリッヒ発TEE 77 ヘルヴェティア号がDB112形機関車とともに5番線に到着。そのうち、先頭に2両に連結されていたアムステルダム行1両とエメリッヒ行1両がDB112形機関車に伴われヘルヴェティア号本体から切り離される(ここでヘルヴェティア号には機関車はない)

11時06分、6番線にミュンヘン発TEE11 レンブラント号が入線。牽引機103形機関車が切り離し(ここでレンブラント号にも機関車はない)

5番線のヘルヴェティア号に、マンハイム・ハンブルグ間の客車を伴った103形機関車が連結され、11時11分にハンブルクに向けて発車

※マンハイム発フランクフルト方面の列車は、進行方向が変わり、これまでの最後尾にハンブルク行を併結し、出発したと思われる(文献とマンハイム周辺の路線図から判断)

6番線のレンブラント号に、ヘルヴェチア号からの2両の客車を伴った112形機関車が連結され、11時14分にアムステルダムに向けて発車

※ミュンヘンからやってきた103形機関車はそのままマンハイムで留置。

 

 

牽引機

【西ドイツ】

112(旧E10)型交流電気機関車

ハノーバーからハンブルク間の電化完成をうけて、1965年5月以降の牽引担当しています。

 

103(旧E03)型交流電気機関車

1970年以降、前述の112型に加えてこの機関車と2種混合で運用に入っているようです(時期や区間の詳細は不明)。写真は103型交流電気機関車。ちなみに西ドイツとスイスの機関車交換はバーゼルを行っていました。

 

 

【スイス】 

Re410(4/4Ⅱ)型、Re420(4/4Ⅱ)型交流電気機関車

写真はRe420型電気機関車。ある文献ではRe430型の使用にも言及されているようですが、そもそもれ430に関するデータが少ないので牽引実績の明言がしづらい状況です。

 

実際の時刻表紙面

1969年夏ダイヤ

この当時はすで客車列車と変わっていた時代。ハンブルク発76列車、チューリヒ発77列車という番号がつけられていました。

77列車 チューリヒ中央駅発7:35→ハンブルク・アルトナ駅着16:56

76列車 ハンブルク・アルトナ駅13:14→チューリヒ中央駅着22:35

 

また、この紙面にはかかれていませんが、1971年5月まで同じTEE列車である「レンブラント」号とマンハイム駅で接続し、マンハイム〜チューリヒ間でレンブラント号の一部編成を併結していました。なお、レンブラント号はアムステルダム中央駅〜ミュンヘン・チューリヒ間の運行として運転されていました。

CooksContinental TImetable August 1969 より

 

 

1975年夏ダイヤから

それまでの出来事として、

・1971年5月のダイヤ改正でのTEE列車番号の付け方ルールの変更で、南行き=奇数、北行=偶数 に変更し、チューリヒ→バーゼル間(片道)で、TEE64列車アルバレート(Arbalète)号と併結運転を開始。

・1973年6月3日から、チューリヒ行きの出発時刻が2時間程度繰り上げと、停車駅にオッフェンブルク(Offenburg)が追加(北行72列車のみ)

72列車 チューリヒ中央駅発6:58→ハンブルク・アルトナ駅着16:33

73列車 ハンブルク・アルトナ駅11:27→チューリヒ中央駅着20:55

 

ちなみにアルバレート号との併結ですが、フランスとドイツのTEE用車両が併結運行されるレアなケースだったようです。

CooksContinental TImetable May 1975より

 

 

1977〜78年冬ダイヤ

2等車連結のインターシティーへ格下げされる前年。以前のダイヤと比較すると、フルダ(Fulda)、バーデン・バーデン(Baden-Baden)と途中停車駅が追加されています。

CooksInternational TImetable January 1978 より

 

 

2004年夏ダイヤ

その後のヘルヴェティア号ですが、インターシティ(IC)、ユーロシティ(EC)、ICE(ドイツ高速列車)に命名され、2004年冬のダイヤ改正をもって名称消滅しているようです。

下記は消滅直前期のICE 74ヘルヴェティア号。チューリヒ→ハンブルク→キールという片道のみ。対となる列車はICE 73 トゥーンゼー(Thunesee)号でした。

トーマス・クック ヨーロッパ時刻表 日本語解説版 2004年夏号より

 

本日は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

使用されたVT11.5形の詳細情報がまとまっているドイツ語書籍です。

 

 

参考資料:

・CooksContinental TImetable August 1969、May 1975、CooksInternational TImetable January 1978、トーマス・クック ヨーロッパ時刻表 日本語解説版 2004年夏号

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・TEE, la légende des Trans-Europ-Express : entre luxe et grande vitesse/Maurice Mertens、 Jean-Pierre Malaspina/LR PRESSE 2007

・TEE Zuge in Deutschland/Peter Goette/EK-VERLAG 2008

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

・写真で楽しむ世界の鉄道 ヨーロッパ 3 交友社

参考サイト:TEE、へルヴェティア(列車名)、IC-Wagen_(DB)(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickrのリンクより

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons