一畑電車10月1日ダイヤ改正!平日夕方増発、休日は出雲市⇔大社便大増発へ!

電鉄出雲市駅2番線に停車中の7003+7004編成・特急出雲大社前行き

電鉄出雲市駅2番線に停車中の7003+7004編成・特急出雲大社前行き
今回のダイヤ改正では、土休日の電鉄出雲市出雲大社前間の特急が大増発となる

先日(2021年9月8日)、島根県を走る私鉄・一畑電車ダイヤ改正実施が発表された。

時勢の影響を反映し終電時刻の繰り上げなどが行われる一方、平日夕方の運転間隔短縮(1本増発)、土休日の電鉄出雲市出雲大社前間の特急大増発(1往復→4.5往復)など、今後の需要復活などに備える形の増発も行われる。

本記事では、発表された新時刻表を現ダイヤと比較しつつ、簡単に考察してみたい。

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1. 平日

(1)夕方の運転間隔短縮・増発(終電20分早発の一方で増発+1本)

平日夕方以降の時間帯に、運転間隔の短縮、事実上の増発が行われる。公式HPにも表記されている通り、夕方以降の「改正前最大55分間隔→改正後最大43分間隔」をほぼ*1達成するとともに、結果的に運転本数も1本増発となっている。

具体的に、松江しんじ湖温泉電鉄出雲市駅の発車時刻を新旧で比較してみると次の通り。

 

平日・松江しんじ湖温泉電鉄出雲市行き(15:43発の次の便以降)

現ダイヤ(~21/9/30) 新ダイヤ(21/10/1~)
16:38発 16:26発
17:23発 17:09発
17:50発(急行)  
18:06発 17:51発
  18:19発(急行)
18:50発 18:35発
  19:18発
19:45発 20:01発
20:40発 20:44発
21:35発 21:27発
22:30発 22:10発

松江しんじ湖温泉発で比較すると、確かに運転間隔が縮まり、また終電も20分繰り上がる一方で、1本増発もされているのが分かる。

なお、急行が運転されるタイミングが30分後ろ倒しになり、普通列車と運転順序が変更になっている。後ほど、もう少しだけ詳しくみてみたい。

 

平日・電鉄出雲市松江しんじ湖温泉行き(16:22発の次の便以降)

現ダイヤ(~21/9/30) 新ダイヤ(21/10/1~)
16:38発 16:22発
17:17発 17:05発
18:02発 17:48発
18:45発 18:30発
  19:14発
19:39発 19:57発
20:24発 20:40発
21:19発 21:23発(平田止)
22:14発 22:06発
23:09発(平田止) 22:49発(平田止)

電鉄出雲市発で見ても、同様に運転間隔短縮、終電20分前倒しの上で1本増発されているのが分かる。ちなみにあえて掲載はしていないが、出雲大社前駅発川跡行きのタイミングもほぼ同様である(電鉄出雲市駅発の概ね4分前に出雲大社前を発車、川跡駅電鉄出雲市始発松江しんじ湖温泉行きに接続)。

ただし気をつけるべき点として、その増発分に相当する1本、電鉄出雲市21:23発の列車は、雲州平田止まりとなっている。雲州平田-松江しんじ湖温泉間の終電は概ね8分しか繰り上がらない一方で、その前の列車との間隔は1時間26分ほど開くことになるので、(おそらくその時間帯の利用客は少ないものとは思われるが)若干注意が必要な点かもしれない。

(2)夕方の下り急行の時刻変更(後)

昔から松江しんじ湖温泉を夕方に発車する「急行」が平日には運転されて来たが、その運転時刻が30分ほど後ろ倒しで設定されることになった。運転間隔を縮めた際の普通列車の新しい運転時刻と既存の急行設定時刻が重複するため、移動させたものと考えられる。

この点はプレスリリースには明記されていなかったが、夕方全体でそもそも運転時刻が大幅に動いていることや、急行の設定時刻としては後ろ倒しであること、(松江側は)ほぼ同時刻で普通列車が設定されているから、かもしれない。

なお、松江しんじ湖温泉発の急行の停車駅に変更は無いが、松江しんじ湖温泉電鉄出雲市の所要時間は一応1分短縮(計45分)となっている。また、川跡で接続する急行出雲大社前行きは浜山公園北口駅が追加停車となっており(朝の大社行き急行と停車駅が揃う形)、松江しんじ湖温泉出雲大社前の所要時間は逆に1分増加(計48分)となる。

(3)朝の上りスーパーライナーの早発

一方こちらは変更幅こそ小さいものの早発かつ重要な列車のためプレスリリースに明記されていたと思われるのが、7時台に運転される特急スーパーライナーについてである。電鉄出雲市駅7:17発から7:15発に2分早発となる。

なお、途中秋鹿町駅までは2分早発を維持しているが、終点手前の松江イングリッシュガーデン前駅の発車時刻7:55、そして終点松江しんじ湖駅到着時刻8:00は変化がなく、全体では所要時間が2分増となっている。付近の列車に大幅な運転時刻の変更がなく、強いていえば松江イングリッシュガーデン前駅で特急と行き違いになる松江しんじ湖温泉発の普通列車が1分早発で7:50→7:49発となっていることから、少なくとも結果的に「到着時間を変えない前提で余裕時分を持たせた」という形になっている。

こちらも停車駅は従来通りとなっている。また、スーパーライナーに接続する出雲大社前発川跡行きの設定時刻には変更がなく、川跡駅での接続時間が2分短縮となっている。

2. 土休日

(1)電鉄出雲市出雲大社前間の特急が4.5往復に大幅増発!

本改正である意味一番攻めた内容が、土休日に電鉄出雲市出雲大社前間で運転される「特急」が1往復から4.5往復に大幅増発となる点である。2017年4月改正以前は3往復設定されていた列車が、さらに増強して帰って来た形となる。

電鉄出雲市8:45、10:50、12:50、14:50発の4本、出雲大社前発は9:36、11:45、13:45、15:45、17:35発の5本。いずれも概ね2時間間隔(特急1本:普通2本の割合)で設定され、途中停車駅は従来通り大津町・川跡のみ、所要時間はいずれも16〜17分程度である。(なお、いずれも現在の設定時刻:電鉄出雲市11:50発・出雲大社前14:35発とは離れた時間帯での運転となっている。)

午前中から夕方まで幅広い時間帯に設定されたのが特徴的で、JR出雲市駅付近から出雲大社への観光需要喚起を意識したものと思われる。

(2)出雲大社前→松江しんじ湖温泉の急行列車は廃止に

その一方で、実質的に廃止となった列車がある。それが、現在は土休日出雲大社前駅15:35発・松江しんじ湖温泉行きで設定されていた「急行 出雲大社号」である。午前中の松江発大社行きの急行は2017年の段階で廃止されていたが、逆方向の列車も今回ついに廃止となる。代替は、若干時刻変更はあるが前後の普通列車、及び電鉄出雲市行きの特急というところだろうか。

このことからも、対出雲大社の需要喚起を松江発から出雲発に切り替える方向性が鮮明である。JRの駅と遠く、また所要時間も多めにかかる松江しんじ湖温泉発よりは、JRの駅隣接で(米子方面からの)総所要時間が結果的に短縮されやすい電鉄出雲市発に切り替わるというのはある意味自然なことかもしれない。

(3)終電1本繰り上げ(下り松江しんじ湖温泉発最終は20:59発に)

増発の一方、終電の時刻は約55分と大幅に繰り上がることになった。ちょうど、最終列車が1本減便されるようなイメージで削減されている。隣接のJR山陰本線も終電や終電付近の列車がどんどん削減される傾向にあるが、一畑も同様のようだ。

これにより、例えば松江しんじ湖温泉発(電鉄出雲市行き)の最終列車は20:59発と、約1時間間隔で列車が設定されている路線の割には非常に早い時刻となっている。あくまで実際の需要も見てのこととは思われるが、こちらもなかなか大胆な施策に見えなくも無い。

まとめ

以上、一畑電車の新ダイヤにおける主な変更点を見てきた。全国的な終電繰り上げ・減便の流れにも沿う一方で、今後の需要増・需要喚起などに備えた大胆な増発・変更が行われる点が面白い。

一畑電車はこの夏2回の豪雨被害で数日間ずつ運休となり、また周辺ではJR山陰本線の江南-田儀間が現在も運休中・復旧の見込みが立っていない状況など、山陰方面の鉄道が災難続きという状況ではある。だからこそ、もうそろそろ来るであろう(来て欲しい)観光需要復活の流れに添い、沿線がより盛り上がっていくことを期待したい。

今後、一畑電車については別観点での考察も行ったり、また可能ならダイヤ改正後かつ訪れやすい時期に訪れて現地を楽しむことができればと思う。

*1:下り急行が挟まるタイミングでは、実は普通列車同士:急行通過駅においては44分間隔となっている。