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列車の定時運転には「車掌の腕・技量」も必要

最近、列車のエコ運転に関する記事を二つ見つけました。

東急のエコ運転
「操縦テクだけで省エネ」実践法 ゆっくり走っても「ダイヤに影響しない」ワザ

山手線のエコ運転
山手線の省エネ運転で10%の運転エネルギーを削減

エコ運転。スピードを抑えて消費電力を削減しつつ、定時運転をキープする。電車はアホみたいに電気を喰うので、エコ運転が普及すれば、経費削減効果は少なくありません。鉄道会社の経営が厳しい昨今、注目されて当然の施策ですね。

定時運転には運転士だけでなく車掌の腕も必要

ところで、これら定時運転やエコ運転、はたまた回復運転(=遅れを取り戻すための運転)が実現できるかどうかは、運転士の腕・技量次第だと思っている人が多いのではないでしょうか。

もちろん運転士の腕に頼る部分は大きいのですが、その他にも欠かせないものがあります。車掌の腕・技量です。

「列車を操縦するのは運転士じゃん。定時運転うんぬんに、なんで車掌が関係してくるの?」

そう疑問に思うのはもっともです。が、実は定時運転とは、運転士と車掌のコンビネーションプレーで実現するものなのです。

ドア捌きがうまい車掌が相棒だと運転士もやりやすい

列車が定時運転(やエコ運転・回復運転)するためには、運転士だけでなく、車掌にも技量が必要──具体的には、「ドアをスムーズに閉められるか?」が車掌側に求められる要素です。

駅発車時、車掌がドアを閉めるのにモタつくと、それだけ発車が遅れます。すなわち、運転士の“持ち時間”が削られてしまい、定時運転が難しくなります。

車掌は、適当にドアを閉めているわけではありません。ホームの安全確認、乗降の途切れたタイミング、発車時刻との兼ね合い。これらを総合的に見ながらドアを閉めます。このあたりの見切りというか要領に関しては、やはり上手い下手があります。

ドア捌きがうまい車掌が相棒だと、運転士としては“持ち時間”が確保され、定時運転やエコ運転がやりやすいですね。

車掌の気遣いを無にする運転士も……(笑)

もちろん、ドアを閉めた後は運転士の責任範囲。いくら車掌のドア捌きがうまくても、運転士の腕がお粗末だと、定時運転は難しいです。

列車が遅れ気味のときは、車掌は迅速にドア扱いをして、運転士の“持ち時間”を増やそうと配慮します。が、それを知ってか知らずかダラダラの運転をされて、遅延がほとんど回復しなかったり……。

「こっちがせっかくパッとドアを閉めたのに、なにチンタラ走っとんのじゃ」と言いたくなったことは、私にもあります(笑)

そんな感じで、運転士と車掌、お互いが「まったくコイツは……」と思ったりしているのですね(笑笑)

というわけで、運転士と車掌のコンビネーションプレーの話でした。

【野球の話】盗塁阻止はピッチャーとキャッチャーの共同責任

ちょっと脱線しますが、最後に野球の話をさせてください。

「運転士と車掌の関係」は、野球における「ピッチャーとキャッチャーの関係」に似ています。

ランナーが盗塁を試みた際、刺せる(アウトにできる)かどうかはキャッチャーの肩次第、というのが一般的な認識でしょう。福岡ソフトバンクホークス・甲斐拓也選手の「甲斐キャノン」なんかは有名ですね。

キャッチャーが強肩で素早い送球さえ行えば、ランナーを刺せる。すなわち、盗塁阻止はキャッチャーの責任だと。

しかし、それは誤りです。結論から言えば、盗塁阻止はピッチャーとキャッチャーの共同責任です。

たとえば、牽制の下手なピッチャーだと、ランナーはリードを大きく取ることができます。また、投球時のクイックが下手だと、キャッチャーの手元にボールが届くまでに時間がかかるので、それだけランナーは走る距離を稼げます。

いずれも、ピッチャーの技量不足のせいで、ランナーにアドバンテージを与えてしまっています。これは明らかにピッチャーの責任で、キャッチャーの立場では如何ともしがたい。

別の言い方をすると、ピッチャーが下手だと、キャッチャー側の“持ち時間”が減るのですね。

もちろん、キャッチャーに責任がないという意味ではありません。いくらピッチャーがランナーを釘付けにしても、キャッチャーの肩が弱いとかスローイングが下手とかだと、やはり盗塁を許してしまいます。

ようするに、盗塁阻止はピッチャーとキャッチャーの共同作業であって、双方に責任があるわけです。なお、元WBC日本代表のキャッチャー・里崎智也氏に言わせると、「盗塁阻止は半分以上がピッチャーの責任」だそうです。

まあとにかく、「盗塁阻止はピッチャーとキャッチャーの共同責任」であるのと同様、「定時運転は運転士と車掌の共同責任」だとわかっていただければOKです。

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