小田急の代名詞的な存在として、利用者にもすっかり定着しているロマンスカー。
現在までに沢山の個性的な車両が登場し、子供から大人まで親しまれてきました。

外見的な特徴が目立つロマンスカーですが、通過する際のジョイント音が独特であることも、かつては当たり前の特徴として認知されていました。
現在は50000形(VSE)でしか聞くことができなくなった音は、どのような理由で生じているのでしょうか。

線路の継ぎ目で発生するジョイント音

線路の上を車両が通過すると、一般的にはガタンコトンいう音が鳴ります。
鉄道が好きな方であれば、常識として備える知識の範囲となってしまいますが、これはレールの継ぎ目を通過する際に発生するもので、車輪が継ぎ目の上を通るタイミングで生じています。

都市部を走る鉄道を中心に、近年はロングレール化によって継ぎ目が少なくなっており、このような音を頻繁に聞けない路線も増えてきました。
一部には継ぎ目が残っているため、そういった場所で局地的に聞くことができる音となりつつあるのかもしれません。

車両が継ぎ目を通過する際には、一般的に4回のジョイント音が一定間隔で繰り返されます。
これは車両の両端に二つずつ車輪があり、隣接する車両の車輪を合わせて四つが連続して通過するためです。
例えば、4両編成の車両が通過する際には、2回、4回、4回、4回、2回の連続したジョイント音が鳴り響きます。

小田急を走ってきた歴代のロマンスカーの多くは、このジョイント音が一般的なものと異なっていました。
具体的には、列車が通過する際に、2回、2回、2回、2回、2回と、規則的なジョイント音を奏でるのです。

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これはロマンスカーが連接台車というものを採用したことで、車両と車両との間に台車があるためで、一般的な車輪の配置とはなっていないことが理由です。
現在走っている車両では、50000形(VSE)のみが連接車となっていますが、同様に展望席を備える70000形(GSE)は連接車ではないため、普通の車両と同じジョイント音を奏でます。

かつては多くのロマンスカーが連接車でしたが、徐々に数が減ってしまい、現在は50000形の2編成でしか聞くことができなくなりました。
ロマンスカーといえば独特なジョイント音という時代もありましたが、いつの間にかその常識は過去のものとなりつつあります。

なぜ連接車は減少しているのか

連接車には様々なメリットがあるため、ロマンスカーでは総合的に判断して3000形(SE)で初めて採用されました。
昔のロマンスカーは高速性能を重視しており、連接車には軽量化や乗り心地の向上といったメリットが多数あったことから、伝統的に採用が続けれられたのです。

しかし、メリットがあれば、当然デメリットも連接車にはあります。
目立つものとしては、車両を簡単に切り離すことができないことによる保守性の悪さがあるほか、1両の長さが通常の車両よりも短くなってしまうといった点です。

これらのデメリットを受け入れつつ、ロマンスカーでは連接車の採用が続けられましたが、JR東海の御殿場線に乗り入れる20000形(RSE)や、30000形(EXE)では連接車の採用が見送られました。
前者はJR東海が用意する371系と仕様を合わせる必要があったこと、後者は輸送力を最大化すること等が背景にありました。

しかし、一転して50000形では連接車を復活させ、昔ながらのジョイント音を聞けるようになりました。
残念ながらこの流れは続かず、次の60000形(MSE)以降は再び連接車の採用が見送られています。

連接車の採用が見送られるようになった背景には、近年整備が進められているホームドアが関係しているといわれています。
車両の長さが通常と異なってしまう連接車は、ホームドアと扉の位置を合わせることが難しいため、採用自体が困難になりつつあるのです。
50000形にもホームドアの問題が徐々に顕在化しつつあり、遅かれ早かれ何らかの対応が必要となることが想定されます。

ロマンスカーの象徴であったジョイント音は、いよいよ最終章に入りつつあるのかもしれません。

おわりに

独特なジョイント音を奏でることで、車両が見えなくてもロマンスカーが通過していることが昔は分かりました。
現在は他の車両と同じ走行音が基本となり、一つ特徴が消えつつあるのかもしれませんね。