70年代にはブルトレブームが起き、東京駅などではカメラを片手にした少年が集まるようになった。
簡単操作のコダックインスタマチックカメラを手に、まずはお手軽に阪急電車の駅に出向いてみた。お馴染みの阪急電車の顔に、丸い特急マークは魅力的であったから。
仕上がった写真は、こんな感じであった。「シャッターを押すだけ」で撮れるのはありがたいがシャッター速度は調整できない。したがって動く電車は流し撮りでないと無理である。もちろん、レンズは標準か広角気味に固定であるから望遠は使えない。
昨今のコンデジとは異なり、鉄道写真には逆にかなりの技術が必要であることが痛感された。
もともとは、ビーチでのスナップ写真などを中心に「vacation camera」と幅広い層に宣伝、販売されたカメラ。鉄道写真には駅での停まり写真に向いていたようだ。

フィルムユニットはワンタッチで装着できる専用の物が用意されていた。従来のカメラはフィルムの装着でやらかすケースがあった。フィルムの巻き取りを忘れて裏蓋を開けて光線を引いてしまったり、フィルムを歯車に絡ませずに空回りさせてしまったり…。フィルムの着脱もそうした心配をなくして簡単にしたのである。
しかし、そうした特殊なフィルムであったから出先で切らしても売店などではなかなかゲットできなかった。

そんな事もあって、このカメラで記録された鉄道写真は少ないかもしれない。
その後はオートフォーカス機能がより充実してきた35ミリサイズのコンパクトカメラが広く使われるようになってきたようだ。
簡単操作はカメラを幅広く販売、浸透させてゆくための戦略、「vacation camera」の宣伝コピーはフィルム消費を促すためのビジネス戦略である。
その後、コダックインスタマチックカメラの事業展開は終了したようである。