【改造前に疎開?】伊豆急行譲渡の元209系6両が伊豆急下田へ回送

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2021年7月6日から7日にかけて伊豆急行伊豆高原車両区へ輸送され、ファンから大きな注目を集めている元JR東日本 209系2100番台マリC609編成。

7月25日終電後、伊豆高原から伊豆急下田まで回送されています。

事実上の“疎開回送”と言える動きですが、連結器の復元以外目立った変化もなく、今後が注目されます。

到着後に連結器のみを復元した元209系

連結器が異なる状態のまま運行された7月6日終電後の自力回送

伊豆急行の209系譲受は2021年7月6日から7日にかけて伊東駅まで甲種輸送(貨物列車としての輸送)で実施されており、伊東駅からは終電後の伊豆急行線を線路閉鎖の上で自走とされました。

到着後は伊豆急行により209系譲受の正式発表がされています。

その後は両端を密着連結器・電気連結器装備に復元する動きこそあったものの、その後は構内を転線する程度で、目立った動きはありませんでした。

深夜回送の様子を見る

伊豆高原車両区

今回の回送は、7月25日の終電後、伊豆高原→伊豆急下田駅間にて運転されました。

前回の甲種輸送後の搬入時同様に、線路閉鎖・低速での走行で運行されており、55分程度かけての運転となりました。

伊豆稲取駅

前回同様に信号や踏切が動作しています。

過去のJR特急形車両は事前の試験なく乗務員訓練が行われており、JRと同じATS-Pを採用している伊豆急行線は、保安装置や誘導障害試験などは無く走行出来ることが想像できます。

なぜ線路閉鎖・深夜回送とされているのかが疑問ですが、もし4両化(はたまた3両化)を前提として一部は部品取りとされた場合、車籍の無い車両は列車としての運行が不可能ですので辻褄が合いそうです。

伊豆急下田駅

伊豆急下田駅6番線(電留線)に直接入線しました。伊豆急行車両の疎開目的の留置としては、100系クモハ103号以来でしょうか。

前回の輸送時と比べて連結器も復元・回送表示も出されており、いよいよ千葉エリアとの差がJRマークの有無くらいになってしまいました。

下田駅では、乗務員扉を開けて誘導され、昇降台ぴったりまで最徐行で調整されて停車しました。

到着後は停泊の措置を済ませ、電源が落とされています。

明け方となり、新しい下田の風景が姿を見せました。

新系列電車としては初の国内他社譲渡ということもあり、ここが私鉄の終端駅とはとても思えません。

E257系2000番台は幕張車両センターへ疎開されていた時期があり、千葉のファンの方にとっては懐かしい光景かもしれません。

車両区内が手一杯……?

伊豆高原駅では終電到着後に“縦列駐車”へ入換

伊豆高原では、車両区の在籍車両が6両分増えたことで区内が手狭となったためか、夜間停泊の留置を変更する体制が6日ごろより実施されています。

伊豆高原駅には車両区が併設されているものの、上り・下りの伊豆高原止まりの最終列車は伊豆高原駅の停泊とされており、下り最終列車が翌日の上り1番列車(624レ)に・上り最終列車が翌日の上り2番列車(626レ)に充当される体制です。

これらは伊豆高原駅の2番線・3番線に停泊しますが、これを2番線に縦列停車(上り終電が1番線で降車後入換)とし、3番線には翌日の上り4本目(5630M)で使用されるリゾート21を予め据え付ける体制に変更していました。

これにより入庫する最大数を7両分減らしており、209系6両の置き場所を確保している格好でした。

一方で、2021年8月にTHR ROYAL EXPRESS 北海道クルーズが実施されるため、伊豆高原車両区内はマニ50 2186と2100系R-5編成のうち5両が搬出されています。そのため、最大数の問題は一旦解消しているようにも思えます。

秋にはもう1編成の到着が報じられており、これらの検査・改造、そして乗務員習熟などを考えるとダイヤ改正までの余裕は少なそうにも思えます。

伊豆急行の車両改造を振り返ると、大規模な改造は譲受前に実施している事例が多い印象です。

そのため、改造メニューはカラーリングの変更など、最小限に留まるかもしれません。

なぜこのタイミングで納入……?

渡道準備がされる“ロイヤル”と元209系

先述のように、伊豆高原車両区が手狭であること自体は想像に難くないですが、THR ROYAL EXPRESS 北海道クルーズの直前で編成組み替え・パンタグラフやスカートの撤去・ロゴマーク変更、そしてそれに伴う入れ換え作業が多く発生する7月にわざわざ納入を設定したことは少々不自然にも思えます。

伊豆高原車両区のスケジュールで考えると、2021年2月から5月まではリゾート21 R-3編成(キンメトレイン)の定期検査・リニューアル工事が施工されていました。こちらは中長期の離脱となるためそれ以前より計画がされていたことでしょう。

また、一般的にJRグループの四半期の臨時列車は半年前から計画され、季節の臨時列車発表の時点で確定しているものとなっています。

8月中旬〜9月のTHR ROYAL EXPRESS 北海道クルーズは2020年時点で発表されていたもので、こちらも半年前より調整が進んでいたはずです。

そして、209系2100番台の輸送についても、この時点で調整が進んでいた頃が想像できます。

伊豆高原車両区内の取り回しが非常に困難となることが容易に想像がつくなか、あえてこの7月6日というスケジュール選定をしたとは考えにくいところです。

また、もし輸送上の事情で考えれば、209系の納入とTHR ROYAL EXPRESSの輸送は同一行程とした方が合理的にも思えます。

今回のような疎開が前提で年間の作業スケジュールを組んでいたとすると、もう少し早く到着しているのが自然です(逆に構内に余裕がある夏の時期に疎開するメリットがありません)。

以上の背景を総合すると、何らかの事情により輸送日程が当初計画から変更されたのかもしれません。

もう1編成の導入が秋頃であることが報道されており、これまでに改造をするのか、それとも引き続き寝かせておくのか……今後にも注目したいところです。

伊豆方面へ訪れる観光客が多い夏休み期間。この車両にとっても房総転用改造以来ひさびさの“長期休暇”ですので、ひとまずは海水浴客で賑わう夏の下田をのんびり満喫して欲しいところです。

菜の花色×他線区の走行は他にも

余談となりますが、今回の一連の動きで懐かしく感じるのは、このカラーリングを一般車両で最初に纏った211系3000番台の存在です。

高崎線・宇都宮線へのグリーン車連結とともに一部の編成が幕張車両センターに転出しましたが、209系の本格的な投入とともにすぐに長野エリアへ全編成が転属。

こちらも長野エリアでは房総色のまま乗務員訓練が実施されて管内各地を走行したのちに現在の信州色帯へ変更されました。

また、209系2100番台の6両編成についても、武蔵野線の乗務員訓練で使用されるという変わった経歴を有しています。武蔵野線へ209系500番台が投入される直前の動きです。

初めてのワンハンドルマスコン装備車両となるほか、従来のむさしの号に加えてしもうさ号を運行するため武蔵野貨物線方面の乗務員訓練が実施されることとなったことが背景で、運用増加分で投入される209系500番台を待たずに房総エリアの209系2100番台が使用されることとなりました。

なおこの乗務員訓練には、このほかケヨ81編成と通称されていた京葉線の205系も使用されています(過去記事)。

転用改造でも東日本各地で改造され、幅広いエリアで転用改造を受けた209系を見ることが出来ました。

千葉エリアのカラーリングながら管内外の各地で見られることとなった房総色の電車。

千葉専属のイメージが強い255系についても初期に中央線特急ビューかいじ号の使用歴があるなど、このカラーリングの電車はなにかと活躍範囲が広い印象です。

しかしながら、2021年はE257系は波動用編成が塗色変更・209系譲渡車もデビューまでに帯色変更が推測される状態で、年度内にはようやく千葉の電車のカラーリングに落ち着きそうです。

それどころか、E131系では色合いが大きく異なるものとなりましたので、置き換え時期が近い現存の各車両の引退とともに見納めとなるかもしれませんね。

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