不定期に私の独断と偏見で厳選した鉄道車両を語る本シリーズ、今回はローカル線の旅には欠かせないディーゼルカー(気動車のひとつ)を取り上げたいと思います。※ボリューム満載な点はご了承下さい。
気動車のひとつである“ディーゼルカー”は、内燃機関の中でも熱効率と安全性に優れるディーゼルエンジンを動力源に走行する車両で、近年はディーゼルエンジンの動力で発電した電力でモーターを駆動する「電気式気動車」など環境に配慮した車両も登場しています。
気動車と言うとディーゼルカーを連想しますが、ガソリンカーや蒸気動車・ガスタービン車なども「気動車」に含まれているのです。
JR北海道とJR東日本で導入を進めている「電気式気動車」写真はJR東日本GV-E400系
EV-E801系(上写真)・EV-E301系・BEC819系は、蓄電池を搭載し架線から電力を蓄電池に充電し、架線のない非電化区間では蓄電池からの電力で走行します。
国鉄時代から受け継がれたレールを次世代車両が駆け抜ける(写真はJR東日本キハE130系列)
環境に優しい新型車両が増える一方、旅情を感じさせる国鉄時代の旧型ディーゼルカーが減るのは切なく感じますね。
JR北海道キハ130系のように軽量化や製造コスト削減を重視するあまり短命(1988年~2002年)に終わった車両も・・・
本題に入る前に全国各地を走るディーゼルカーを軽く紹介させていただきます。
JR北海道キハ141形(写真右側)は、1990年から余剰となった50系客車を改造して44両製作された車両で、廃車された一部がミャンマー国鉄とJR東日本に譲渡、残留している苫小牧の10両も3運用まで減り引退が迫っていると言われています。
客車をディーゼルカーに改造する発想にビックリです
1957年から1966年に1,126両製造された国鉄キハ20系列は、キハ17系の後継として車体を軽量化のうえ大型化した車両で、1958年に出力アップされたキハ52形が登場、2009年3月にJR東日本で引退、2010年3月にJR西日本で引退しました。
JR西日本で引退したキハ52は千葉県の「いすみ鉄道」で活躍中です。
JR東日本がローカル線のサービス改善を図るため、東北・関東甲信越に投入したキハ110系列は、車体と台車の軽量化を図り、高出力直噴式エンジンと効率の高い液体変速機との組み合わせにより電車並みの加速性能を発揮します。
JR西日本キハ120系は、新潟鐵工所の地方鉄道向け車両「NDCシリーズ」の第一世代モデルによる16m級軽快気動車で、ワンマン運転に対応しています。三セクなどに兄弟車が多く存在。
JR西日本キハ122形・キハ127形は姫新線(きしんせん)のみに、地元自治体の負担で19両投入された車両です。
JR四国1500形は「環境にやさしい車両」をコンセプトに、乗降扉のステップを廃止するなどバリアフリーに配慮した車両として開発、JRグループ初の採用となる「コモンレール方式」の燃料噴射装置を搭載するエンジンを搭載しており、窒素酸化物 (NOx) の排出量を約60%削減(1000形と比較)しました。
JR九州キハ200形(写真左側)は、地方路線用大型ディーゼルカーとして九州各地の非電化路線に投入されました。旧来の気動車のイメージを一新する斬新なスタイルは当時話題を呼び、その外観から「赤い快速」の愛称で親しまれていました。
紹介しきれないぐらい種類がある国鉄・JRのディーゼルカーから、私が厳選した車両は果たして・・・前置き長くなりましたが、これより本題に入ります。
【キハ58系列】
ひとつ目に選んだ車両は、国鉄急行車両の代表格「キハ28形・キハ58形」です。
ローカル線のイメージが強い形式ですが、羊の皮を被った狼のごとく俊敏な走りをする国鉄時代の高性能車両で、そのギャップがエントリーした理由です。
国鉄の急行型ディーゼルカー「キハ58系列」は、DMH17H機関を搭載したエンジン車がキハ28(北海道向けはキハ27)、2エンジン車がキハ58(北海道向けキハ56・信越本線向けキハ57)と区分されており、1,818両が製造されました。
全国の非電化線区で急行からローカルまで広く使用され、ジョイフルトレインの種車になった車両も多く存在します。
※写真はJR九州「アクアエクスプレス」
JR西日本の高山本線で最後まで活躍を続けていた4両が、2011年3月12日ダイヤ改正で定期運用を離脱、JRグループから引退しました。
引退したうちの1両、キハ28-2346が千葉県の第三セクター「いすみ鉄道」に譲渡され土休日を中心に活躍中です。
1969年にはキハ58形と比べて大出力のエンジンを搭載したキハ65形が登場、102両が製造され、主に中京・四国・山陰で活躍、2021年6月に引退しました。
JR東海に継承されたキハ65
引退したキハ58形は、JR東日本からロシア国鉄(サハリン)へ譲渡、JR西日本からはタイ国鉄、ミャンマー国鉄に譲渡され、異国の地で活躍する車両が多数存在します。
【キハ40系列】
2つ目に選んだ車両は、旅行で乗る機会が一番多いキハ40系列がエントリー、私にとって思い出深い車両ナンバーワンです。
全国各地を走るキハ40の車窓から見た綺麗な景色の数々、若き日に友人と旅した思い出など、キハ40に纏わるエピソードは計り知れません。
キハ40系列は、北海道から九州まで全国各地に投入されましたが、老朽化と新型車両の導入で徐々に数を減らしており、JR東日本の普通列車からはキハ40系が撤退しました。
老朽化したキハ17系などの旧型を置き換えるために登場した車両で、国鉄が1977年から1982年まで計888両を製造しました。
キハ40系列は、運転台が両側にありドアが片開きの「キハ40形」、運転台が片側のみありドアが両開きの「キハ47形」、運転台が片側のみでドアが片開きの「キハ48形」の3形式からなるグループです。
JR九州色のキハ40、最近はBEC819系電車「DENCHA」やYC1系電気式ディーゼルカーによる置き換えが進行中です
1987年の国鉄分割民営化時は、JR6社に887両が継承されましたが、老朽化とともにJR旅客会社各社は新型ディーゼルカーを投入します。
JR東海はキハ25形ディーゼルカーを大量投入し、2016年までにキハ40系を置き換えました。
JR東日本は2021年3月のダイヤ改正で男鹿線の列車をすべてEV-E801系に統一、五能線と津軽線ではGV-E400系の運転を開始し、JR東日本のキハ40系は普通列車としての運行を全て終了しました。
JR東日本では、観光列車に改造された「リゾートしらかみ(くまげら編成)」「びゅうコースター風っこ」などが運行されるのみとなりました。
「びゅうコースター風っこ」は2000年に登場したトロッコ車両です
風っこ(写真左側)は2年前にJR北海道に貸し出され宗谷本線の観光列車として道内で運行(サンドイッチ状態でしたが)
小湊鐵道でJR東日本からキハ40系を順次導入、キハ200などの従来車両を置き換える予定です。東北を駆け抜けたキハ40系に第二の活躍の場ができて安心しました。
北条鉄道では車両不足を補うため、JR東日本からキハ40系1両を250万円で購入すると発表、年末に搬入し1,300万円かけて改造した上で2022年度前半にデビューさせる予定です。
【キハ121系・キハ126系】
最後に選んだのはディーゼルカーらしからぬデザインのJR西日本キハ121系・キハ126系です。
エントリーした理由として、軽快な走りと快適な車内空間が挙げられます。
キハ121系・キハ126系は、JR西日本がローカル線の地方都市間輸送用としては初めて新製した車両で、2000年から2003年にかけて29両が製造されました。
2001年の山陰本線 安来駅~益田駅間の高速化事業として0番台を投入、その後は2003年の山陰本線 鳥取駅~米子駅間、因美線の鳥取駅~智頭駅間、境線の米子駅 ~境港駅間の高速化事業によって10番台と両運転台付きのキハ121系が投入されました。
両運転台付単行車はキハ121系
2両編成はキハ126系
現状の輸送力を確保しながらも高速化と効率化を両立し、今後の取り扱いや保守なども考慮して、以下のコンセプトをもとに設計が行われました。
・JR西日本の標準型車両の確立
・省力化への取り組み
・シンプルデザインと暖かみの感じられる車両
車両の標準化を目指して電車との機器共通化、省力化のため部品点数の削減、JR西日本の新製車両の共通コンセプトである「長く親しまれる落ち着いたデザイン」を継承しながらも「シンプルデザイン」と「暖かみの感じられる車両」を基本コンセプトとして外装・内装のデザインを行いました。
同時期に製造されたキハ187系とは保守軽減のため機器を極力共通化しています。
今回は以上です。
※写真は和田岬線キハ35系
快適性ではJR東海キハ75やキハ25がお気に入り
全国各地でディーゼルカーの世代交代が進んでいます。コロナ禍で厳しい状況ですが、タイミングを見ながら撮影や惜別乗車を済ませておきましょうね。
ボリューム満載となりましたが、今回も最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。