阪急の創業者である小林一三氏。小林一三氏の有名なエピソードのひとつに「ソーライス」の逸話があります。阪急ファンだけでなく、鉄道ファンであれば、ほとんどの方がご存知の話だと思います。
テレビやネットメディアで、経営の美談として「ソーライス」の逸話が語られることが多いのですが、この「ソーライス」の逸話、本当にあった話なのでしょうか?
ソーライスとは?
ソーライスと言うのは、ご飯にソースかけた食べ物です。
ソーライスという食べ物そのものの話はいったん置いておいて、ソーライスというのは阪急の創業者である小林一三氏の逸話(トリビア)でもしばしば取り上げられています。
その逸話というのを、簡単に説明すると、
- 昭和初期の不況で、人気メニューのライスカレー(25銭)を払う余裕もなく、ライス(5銭)だけ注文し、テーブルに備え付けられているソースをかけて食べるのが阪急百貨店で流行った。
- 店側は利益が上がらないので、「ライスのみのご注文お断り」の貼り紙を出す。
- しかし、小林一三氏は「ライスだけのお客様も歓迎します」と貼り紙を出す。
- それに反対する社員もいたが、「彼らは今、貧乏であるが、それでもここ(阪急百貨店)に来てくれている。やがて、彼らが結婚し、子どもが出来たとき、きっとまた、家族でここに来てくれるだろう」と諭す。
…という心温まるエピソードです。
ところで、このソーライスの話、大抵は経営哲学や美談として取り上げられていますが、実はこの話、真偽不明なのです。
そもそもソーライスは本当にあったのか?
ソーライスの話で実名登場するのは小林一三氏。
というわけで、有名な『逸翁自叙伝』を拝見しましたが、ソーライスの話は一切出てきていません。
また、阪急百貨店の社史である『株式会社阪急百貨店二十五年史』、『株式会社阪急百貨店50年史』の中にも、ソーライスの話は一切出てきていません。
もちろん、阪急電鉄の社史、『京阪神急行電鉄五十年史』、『株式会社阪急百貨店二十五年史』、『株式会社阪急百貨店50年史』にも、ソーライスの話は一切出てきていません。