【検査は約6年毎】隠れた“ニートレイン”?東西線直通用E231系800番台K3編成が入場

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E231系800番台K3編成が12日に東京総合車両センターへ入場しましたが、前回の同区分の定期検査から5年半もの歳月が経過しており、話題となりました。

かつてはE331系や215系を稼働しない車両“ニートレイン”と呼ぶファンの風潮がありましたが、彼らが亡き今、E231系800番台が次の候補と言えるかもしれません。

今後は残りの6編成も順番に検査が進められるものと見られますが、“その次”は更に期間が開きそうです。E231系800番台が平日朝夕中心の稼働に留まる背景とともに、今後の動向を考えます。

103系1000番台・301系の代替として登場

E231系800番台は、1966年の営団地下鉄東西線との直通運転開始以来使用されていた301系・コストと保守の都合から製造された103系1200番台などの代替車両として2003年に製造された車両です。10両7編成が三鷹車両センターを拠点に活躍しています。

209系1000番台と同様に拡幅ではないストレートの車体・前面貫通扉を設けた前面形状などを踏襲しつつ、走行機器類など“下半身”についてはE231系各番台の設計思想となっています。

落成から現在まで一貫して中央線各駅停車〜東西線〜朝夕の総武線各駅停車の直通運転に使用されており、東葉高速鉄道への乗り入れには使用されていません。

現在はE231系の機器更新工事が進められていますが、現時点で800番台を巡るこれらの動きは発生していません。少しずつ聞く機会が少なくなってきた“前世代”のIGBT素子VVVFインバータの音色が健在となっています。

同じく地下鉄直通用として常磐線各駅停車にも103系1000番台が投入されたものの、こちらは早急に203系に代替。207系900番台・209系1000番台の増備ののち、現在のE233系2000番台に代替されるに至ります。このため、ともに少数派の地下鉄直通用形式は103系以降の全ての形式がその都度開発されています。

新保全体系では走行距離に応じて検査を実施

5年半ぶりに山手貨物線を走行するE231系800番台

2021年7月12日にK3編成が東京総合車両センターに入場しました。前回のE231系800番台の検査入出場から5年半もの歳月が経過しており、期間が大きく開いたこと・久しぶりの山手貨物線走行が見られたことなどでファンから注目されました。

JR東日本では、209系以降の世代の車両を「新系列電車」と呼称しており、これらの世代の車両は「新保全体系」と呼ばれる走行距離を基とした検査体制とされています。

従来は重要部検査と全般検査の二種類でしたが、この新保全体系では指定保全(60万km毎)・装置保全(120万km毎)・車体保全(240万km毎)と部品ごとに検査周期を再構成することでメンテナンス効率の向上をしています。

走行距離が基準となっているため、路線ごとに検査周期は大きなバラつきがあります。

長距離運転・稼働率が高い路線は頻繁に検査が行われる一方で、短距離運転・稼働率が低い路線であれば検査期限は長い周期で変動します。

E231系800番台は7編成配置・6編成運用とされており、配置数が少ないことから予備車が1編成のみであっても、他路線と比較すると非常に高いこととなります。

平日は2運用(03K,11K)が終日運用・1運用(01K)が朝の一往復・3運用(05K,07K,09K)は朝夕のみの運用とされているほか、土休日に至っては2運用(03K,11K)の終日運用と1運用(07K)の朝夕運用のみとなっており、7編成中3編成しか稼働しない体制です。

更に平日は20時〜22時過ぎ、土休日は18時〜19時台に入庫となっており、深夜帯の稼働や夜間停泊も設定されていません。

これらの運用体系から、JR東日本の他路線の車両と比べて1日あたりの走行距離が短いため、次回検査までの期間が他路線と比較してもゆっくりした周期で進行しています。

更に2019年より保全体系の見直し対象とされており、E231系は同年以降の検査を通過した車両について、指定保全(80万km毎)、全般検査が装置保全(160万km毎)・車体保全(320万km毎)と延長されます。

E231系800番台が60万キロを走行するのに概ね6年経過していることを考えると、単純計算であれば次回は8年後とはるか未来の出来事となりそうです。

今回の検査時期が全7編成実施された次は更に期間が開くことが想像できること・車両自体の少なさから、検査入出場の臨時回送も他形式と比較して注目される動きとなりました。

一方で、これらの新保全体系についても年数経過による目安時期も設定されており、E231系800番台が必ずしも8年間入場が行われないとは断定できません。必要に応じて前倒し・従来同様の60万キロを目安とした保全も考えられます。

平日朝夕しか仕事がない歪な運用の背景

一般に相互直通運転では、互いに車両の貸し借りをしているという前提で車両の使用料を調整しています。この貸し借りについても走行距離に応じて算出されており、日中で見ればJR中央線は中野駅〜三鷹駅間が9.4kmに対し、東西線は全区間で30.8kmとこれだけでも単純に東京メトロ(と東葉高速鉄道)の担当比率が高くなります。単純計算であればJR車がやってくる確率は1/4程度となるはずです。

そして、JR中央線直通は15分おきに直通する列車がある一方で、東西線は5分ごとに運行されています。これにより、更にJR車両の担当比率は下り、先ほどの1/4に運行本数の差である1/3を掛けた1/12程度となる計算です。東西線の日中ダイヤで見れば1時間に1本程度走っていれば走行距離精算ができる計算です。

これで東西線でE231系800番台が滅多にやって来ないことも肯けるものの、JR車両の運用が朝夕中心とされている点について疑問が残ります。

それぞれの事業者が車両の走行距離の偏りが極端にならないよう、多くの直通系統ではどの会社の車両にも朝のみ・夕のみ・終日運用が満遍なく割り振られることが多いですが、いくつか例外も存在します。

有名な事例の1つが半蔵門線直通系統で、東武鉄道車両の運用は17運用全てが終日運用とされている一方で、東急電鉄・東京メトロ車両には朝のみ・朝夕の運用が多く割り振られています。

これらの背景も各社から示されているものではありませんが、各路線のダイヤ構成を眺めていると背景が読み取れます。

東武スカイツリーラインは朝ラッシュの本数増加分を自社線内完結の区間急行・区間準急で多くを賄っている一方で、朝ラッシュの混雑が激しい田園都市線は(大井町線直通を除いて)折り返し駅の構造を背景に全ての列車が半蔵門線に乗り入れするダイヤ構成となっています。

この関係性から、田園都市線・半蔵門線の朝ラッシュ本数増加分の車両保有は両社が担っており、東武鉄道にはその分の車両保有の負担をさせない……といった背景が想像できます。

これ自体は一見すると東武鉄道への配慮にも思えますが、特定の時間帯に直通運転を見合わせといった事象でも差額をなるべく発生させない・終日直通運転を見合わせた場合に同等の輸送力を各社が持ち合わせる……といった、直通運転の基本に則った合理的な調整と言えるでしょう。

この調整方法を考えると、東西線系統についても納得ができます。

東西線系統では、平日朝夕のみ西船橋から総武線側にも直通列車を走らせるという特異な直通体系を採用しているうえ、中央線側も日中(毎時4本)に比べて倍以上の本数となっているダイヤとなっています。

朝夕と日中で運行本数が大きく異なるJRのE231系使用列車が平日朝夕中心とされている点は理に適っていると言えるのではないでしょうか。

当面は安泰?

現状としてE231系800番台は車両の経年や輸送体系の変化などの目立つ動きがなく、今後は機器更新工事を施工した上で引き続き使用される可能性が極めて高いと言えそうです。

2003年の導入から2009年頃に1回目(指定保全)・2015年ごろに2回目(装置保全)と推移しており、そもそも今回の入場は指定保全と見られます。機器の寿命で考えれば更新時期はその次の検査ですが、機器更新は必ずしも一番大規模な車体保全と同時施工ではないため、前倒しで施工されることも考えられます。

将来的な展望に視野を広げると、三鷹車両センターE231系800番台の車両代替時期として考慮されるタイミングは2回考えられます。

まずは三鷹車両センターの主力車両となっているE231系0番台・500番台の代替時期です。

現在の三鷹車両センターでは、E231系500番台52編成と0番台6編成が運用されており、2020年に機器更新工事を終えて当面の活躍が約束されている格好です。

2024年度から始まるとされていたE235系京浜東北線・横浜線投入とそれによる転用の動きとも直接関わることはなく、これらを純粋に総合車両製作所(J-TREC)新津事業所で製造すると仮定した場合、年間250両程度のペースで推移することから、2028年度途上までかかる計算です。

その他の路線の経年を考えても、2028年度後半からE231系の直接代替が開始されることが想像できますが、車両の経年で考えれば初期に製造された車両が活躍する各路線が想像できる反面、中央線・総武線各駅停車ではホームドアの設置が優先して進行しており、先に代替することでワンマン化を実施する施策が取られる展開もありそうです。

これらの動きが発生した場合、東西線直通列車のみツーマンとすることが合理的には思えず、同時の置き換えがされても不思議ではありません。

次に考えられる時期として、松戸車両センターのE233系2000番台の代替時期です。

これは、純粋に地下鉄直通形式を1形式とすることの合理性を優先した判断がされるパターンです。

E233系2000番台のトップナンバーとの経年差は6年となっていますが、走行距離ベースで考えれば既に追いつかれている状況です。マト1〜3編成は既に3度目の検査(=E231系800番台と同様の距離での指定保全)を通過しています。

そのため、走行距離だけを理由に考えれば、常磐線各駅停車のE233系2000番台が先に置き換え時期に近づく格好です。

いずれにせよ、現状としてはまだまだ先のことで、代替される理由としては取るに足らない状態です。JR東日本の社内で議論がされる時期にすら到達していないと言っても差し支えがないでしょう。

むしろ想像しやすいのは、何らかの状勢の変化による東西線直通列車の運行体系の変化があります。

東西線直通系統では、2003年に実施された世代交代とともに直通列車の運用削減を実施しており、E231系800番台は旧来形式に比べて1編成の配置減・代替として0番台のB57編成が製造された動きがありました。

現状としては廃止される理由はなさそうですが、過去の日比谷線と東横線の直通運転のように、他の路線や直通先の輸送体系の変化により、E231系800番台の寿命より前に変化が加わる可能性自体は否定できません。

東西線を巻き込んだ大きな輸送体系の変化としては、長年に渡り議論されている西武新宿線の直通構想・中央線三鷹〜立川間の複々線化構想が挙げられます。

後者は鉄道需要自体も落ち込んだ昨今では現実的ではないものの、西武新宿線の直通運転構想については依然として西武ホールディングスが乗り気であり、東京メトロについても有楽町線の豊洲〜住吉駅・南北線の白金高輪〜品川駅間の建設に大きな動きが出ており、今後建設の余地がありそうです。

また、先述の中央線・総武線のワンマン化を機に、平日朝夕のみという総武線側の特異な直通運転体系についても議論がなされるかもしれません。

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記事内掲載写真は、フォロワーのヤス(特急あまぎ)様 (@6IBNleaHnyx0YYk)より掲載許諾を頂いています。

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コメント

  1. MTR73 より:

    E231系の廃車に伴う代替について、2028年の代替開始はあまりにも早すぎるのではないかと思います。この時点で製造から17~24年程の車両も多く存在する上、ホームドアが設置されているとはいえ都会路線で遅延も絶えない路線なので中央総武緩行線のワンマン化はかなり困難だと思います。
    また4月発表の決算報告書には、同一路線で長く使用し転用改造コストの抑制や機器更新後に延命工事を行い車両取替周期の長期化の方針が示されています。つまり今まで製造30年前後で廃車にする方針だったのが一転、延命工事を実施して更に長く使用する方針になったのです。これに乗っ取れば、直近で機器更新を受けた全てのE231系や209系500番台、E531系、E233系以降の車両は全てこの対象になるのではないでしょうか。E231系自体、余程のことがない限り2030年台中盤までは使われることになると思います。
    更に、2021~25年度にかけて車両投資額を300億円削減することも発表されています。E235系を京浜東北・横浜線に導入しE233系を多大な費用をかけてまで転用してしまってはこれを到底達成できず、前述の「同一路線で長く使用し転用改造コストを抑制」する方針と合致しません。
    そのためこの5年間で調達される車両数は相当減るでしょうし、J-TRECで2028年度までに1000両以上の高価な新造車両(=E235系)を作る金はもうないでしょう。同年?頃までに地方の車両をE131系?で一掃するので精一杯、私たちが思っている以上にJRの財政赤字は苦しい状況です。
    https://www.jreast.co.jp/investor/guide/pdf/202103guide1.pdf
    そして、近年ではE217系後期車よりもE231系小山初期編成の方が先に2回目の車体保全時期に差し掛かっており、走行距離と廃車時期はそこまで関係はしないのではないでしょうか。

  2. 東横線の日比直急行 より:

    遅くとも8年後に来る機器保全までには、走行機器の更新が行われると思います。すでに同型の制御装置は0番台の機器更新で姿を消しており、わずか7編成のために旧来の危機を整備するよりかは0番台と同様の機器更新を行った方がメンテナンス面でメリットが大きいと考えられます。

    しかし、予備が1編成しかいないと、機器更新による長期入場はリスクが大きいという面もあります。万が一、0番台ともども中央総武線各駅停車のE231系にワンマン改造するならなおさらです。

    その際には、どのようなことが考えられるでしょうか。
    ①そのころには05系や07系のB修工事が終わることを見越し、運用に余裕が出る東京メトロ車に1運用移管する。
    ②中央線快速電車のグリーン車組み込み工事完了後に209系1000番台を転用し、工事期間の予備車とする。
    ③総武線直通を減便してJR車の所要数自体を削減して対応する。

    様々な可能性が予測できますが、東した特殊用途の車両は扱いが難しいですね。

  3. より交 より:

    中央総武緩行線の朝ラッシュ時に、中央線三鷹~高円寺間から新宿方面に向かう際に、利用者が望まない東西線直通列車が混在しており、利用者は次の総武線か快速線を待たざるえない状況です。
    総武線乗客満載の電車を横目に、ガラ空きの東西線直通が連続で来ることもしばしば。
    中野駅は総武線と東西線が5番ホームを共用していて、入線待ちしている間に快速電車が追い抜く光景も日常茶飯事。
    俗に言う杉並三駅の緩急分離運用が出来ない要因の一つと言えますし、三鷹駅の中央総武線ホームが混雑悪化してる原因でもあります。

    現状を考えると、東西線直通運用の比率が更に削減される予想はたてられます。

    今回取り上げた車両も、運用減少した場合は余剰となるため、他線区への転用が濃厚かと思います。