「変電所キラー」と呼ばれた機関車がいた【電車の雑学研究所 #06】

「変電所キラー」と呼ばれた機関車がいた【電車の雑学研究所 #06】

6回目を迎えた「電車の雑学研究所」シリーズ。ここでは鉄道にまつわる様々な雑学・噂・都市伝説を検証して、皆さんに楽しんで頂くカテゴリーです。

今回は「発電所を壊しかけた機関車がある」です。

そう、この題名を見てピンと来られた方…いらっしゃいますよね?

 

 

変電所…機関車…ウッ、頭が

そう、ヤツです。EF200形です。

当サイトでも以前ご紹介しましたが、EF200形のパワーはこれまでの機関車はもちろん、現在出ている機関車を含めてもケタ違いのパワー・性能を持っていました。

 

具体的には1,300馬力のモーターを6基も積み、スペック上は8,157馬力(6,000kw)もの出力があるのです。

他の機関車と比較してみましょうか。

 

車両名MT比率出力・馬力
EF66形機関車1M電動機定格出力:883馬力(650kw)
編成出力:5,302馬力(3,900kw)
EF200形機関車1M電動機定格出力:1,359馬力(1,000kw)
編成出力:8,157馬力(6,000kw)
EF210形機関車 桃太郎1M電動機定格出力:768馬力(565kw)
編成出力:4,609馬力(3,390kw)
EF510形機関車 レッドサンダー1M電動機定格出力:768馬力(565kw)
編成出力:4,609馬力(3,390kw)
M250形機関車 スーパーレールカーゴ4M12T電動機定格出力:299馬力(220kw)
編成出力:4,785馬力(3,520kw)

馬力面で見ると、EF210形「桃太郎」よりもEF66形の方がパワーがありますね。

そして、そのEF66を遥か彼方に置いていくEF200の無双ぶり。

 

 

 

し か し

EF200形はあまりにもパワーが強すぎることで、フルパワーを出そうとマスコンをフルノッチにすると変電所の電圧が降下し、その影響でEF200の前後区間にいる列車へ電気が回らなくなることが判明します

 

試運転の結果、フル出力で千六百トンを引っ張ると電圧が降下して、大都市圏以外の区間では前後の列車に影響を与えることが判明(中略)

どの程度の出力を出すかで、旅客各社との折衝が長引き、十両は半年以上も使われないまま。動いている七両は東海道・山陽線を二往復しているが、EF66型の出力水準に下げて運転中だ。少なくとも五年はフル出力の運転はできないという。

出典:朝日新聞夕刊 1993年3月8日「力持ちの新型電気機関車、力を出し切れず10両が休眠中 JR貨物」

 

好景気だったこともあって貨物需要が激増したJR貨物は、変電所をパワーアップするよう設備を保有するJR西日本などに協力を依頼します。

ところがバブル崩壊で貨物需要が減りはじめたことから、その要請を撤回。EF200はEF66と同等(マスコン15ノッチ相当)のパワー制限を受けて運用されることになりました。

 

 

結局EF200形の製造は21両に留まり、その代わりにパワーは控えめなれど使いやすい後輩のEF210形「桃太郎」が大量に増備されています。

この構図は同じような問題を抱えていた101系と103系の関係に似ていますね。

この変電所問題の他、1600t牽引だと合計コキ32両の長大編成になり、退避できる駅がなかったことも災いとなったようです。

 

EF200形は前述の通り全21両が製造されましたが、日立製作所が貨物列車製造から撤退したことで主要部品の確保が難しくなったことや、使い勝手の悪さが仇になったのか2019年をもって廃車に

結局、この平成初期に生まれたEF200形は十分な威力を発揮できぬまま、平成の終わりと共に全車が引退していった、平成を象徴するような機関車でした。

 

 

その他エピソード

初めてのシングルアーム

ちなみにEF200形にはシングルアームパンタグラフが採用されていますが、これはJRとしては初めてのことです。国内鉄道で初めて採用したのは大阪市営地下鉄の70系になります。

 

変電所を飛ばした車両はここにも…

パワーが強すぎて変電所アクシデントを起こすのはEF200だけでなく、近年にも新幹線のE7系が3列車同時加速をしたことで変電所を飛ばしたことがあるなど、結構メジャーな話のようです。

(2015年)3月20日夕方、北陸新幹線で停電が発生して運転が一時見合わせられるトラブルが発生したのだが、このトラブルは新幹線3本が同時に加速したため変電所に上限を超える大きさの電流が流れ、安全装置が働いて電流を遮断していたことが原因だったという

出典:https://www.zaikei.co.jp/article/20150325/242337.html

 

名鉄7500系も…

回生ブレーキを使用する7500系では変電所容量が小さい線区には入線できなかったためで[27]、実際にダイヤが乱れた際に7500系が誤って西尾線に入線し、回生ブレーキを使用したところ変電所のヒューズが飛び[39]、回転変流機が停止してしまい停電となってしまったこともあったのである[27]。こうした事情から、7500系は名古屋本線・犬山線・常滑線・河和線での限定運用となった

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/名鉄7500系電車

 

 

バックナンバー

「はかるくん」という電車がある【電車の雑学研究所 #04】

うどん屋が親会社の鉄道会社がある【電車の雑学研究所 #03】

「スーパービュー踊り子は訴えられたことがある」【電車の雑学研究所 #02】

「マグロ拾いのバイトはある?」【電車の雑学研究所 #01】

 

 

参考文献

朝日新聞夕刊 1993年3月8日「力持ちの新型電気機関車、力を出し切れず10両が休眠中 JR貨物」

朝日新聞夕刊 1993年6月8日「力持ち機関車役立たず 電気食いすぎ、訓練用に」

電気学会論文誌D(産業応用部門誌)「大出力電気機関車 出力適正化制御システムに関する研究」(杉本健、保川忍)

 

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