省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

蔵出し画像 福塩線 クモハ51053 (1977年3月)

 先日GIMPのスクリーンモードの活用法が分かりましたので、再び同様な条件(逆光による露光不足)の写真を補正してお出しします。福塩線のクモハ51053です。

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クモハ51053 (岡フチ)

 このような条件の写真の補正には、RawTherapeeの「CIE色の見えモデル2002」よりも明らかにGIMP (もしくはPhotoshop) 上でのマスク+スクリーンモードで補正をするのが良いようです。この写真はオリジナルは以下のようなものでした。

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オリジナル

 これに対し、拙作の汎用色チャンネルマスク作成ツールを使って、以下のような青透過マスク画像を作成しました。このマスクを掛けたレイヤーをスクリーンモードで重ねますが、その理由は、背景の明るい部分はこれ以上あまり明るくしたくないのと、前にも指摘したように、車体の青20号部分より道床部分が明るいので、そのままスクリーンモードで重ねると道床部分が車体より明るく浮き上がってしまい、車体の黒潰れがむしろ強調されてしまうからです。

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青透過マスク
マスクB Ch. 輝度範囲8-80 / B閾値+10

 さらに全体調整レイヤーも作成しましたが、これに対しては左端の黒い部分が隠れるマスクを作成してつけました。

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全体調整レイヤー用マスク

 そして各レイヤーを不透明度100%のスクリーンモードで下記のように重ねました。

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レイヤー

 青透過マスクをつけたレイヤーは明るさを増すために3枚重ねて調整しました。これを一旦TIFFに出力したものが、下記です。

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GIMP上での補正終了

 それをdarktableに読み込んで、フィルミックRGB等でコントラストなど再調整を掛けたのが上記の画像です。

 この方法が、逆光で暗くなってしまった失敗写真の粒子の荒れを抑えた定番補正方法として推奨できる方法かと思います。フィルム写真のみならず、デジタル写真でも活用できる方法だと思います。ですがフィルム写真の露光不足部分は、フィルム粒子が荒れがちですので、より有効性は高いでしょう。

 

 最後に例によって本車の車歴です。

1937.7.15 川崎車両製造 → 1937.8.18 大ミハ配置 → 1937.10 大アカ → 1944.9.11 座席撤去 → 1948.12.11 座席整備 → 1955.1.18 更新修繕I 吹田工 → 1961.9.11 岡オカ → 1976.7.10 岡フチ →  1977.9.5 廃車 (岡フチ)

 1937年に川崎車両で製造後、24年間京阪神間を走ったのち、1961年に岡山電化のため岡山地区に移り、宇野、赤穂線等を走りました。しかし、1976年に東北などから押し出されてきた115系に押され、1976年7月に福塩線に移動しましたが、1年足らずで阪和線から押し出された70系に押されて廃車となりました。しかし1年足らずの活躍とは言え、しっかり福塩線の青20号に塗り替えられていたことが、この写真から分かります(岡山から転属したクモハ51の中にはチョコレート色のまま活躍していた車もありました)。因みに岡山地区の旧型国電置き換えの際6両が府中電車区に移り、それまで府中区にいたクモハ41と牽引車代用だったクモニ13を置き換えますが、この車両の移動は鉄道雑誌に一切掲載されていません。以下の転属日付は府中電車区に当時直接取材して教えていただいたものです。

 探している方には貴重な情報だと思いますので、こちらに記しておきます。

1976年7月改正に伴う旧型国電の岡山運転区から府中電車区への車両の転属日付

クモハ32000 1976.7.10

クモハ51045 1976.6.22

クモハ51049 1976.7.2

クモハ51053 1976.7.10

クモハ51055 1976.7.2

クモハ51057 1976.7.1

 

これにより

クモハ41021, 028, 032, 035, 043 および クモニ13031が廃車となりました。

 

 なお、当初はクモハ32の代わりにクモハユニ64が来るような話もあったようですが、結局クモハ32の転属となったようです。クモハユニ64が府中に来ていたら、後のクモハユニ64の奇跡的な営業用復活劇もなかったことになります。