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京阪の「風流の今様」とは?

2008年の中之島線開業に合わせて登場した2代目京阪3000系。

コンフォート・サルーンの愛称が与えられた3000系のデザインは、従来の京阪車両から一線を画すものとなっており、2009年にはローレル賞とグッドデザイン賞を受賞しています。新しい京阪のブランドイメージを象徴していると言っても過言ではありません。

また、2021年1月にはプレミアムカーが導入され、エレガント・サルーンである8000系と双璧を成す、京阪の顔でもあります。

ところで、その3000系、デザインコンセプトが「風流の今様」とされていますが、いまいちピンと来ない人が多いのではないでしょうか。




風流の今様とは?

「風流の今様」の説明は、京阪電鉄と、3000系をデザインしたのはGKデザイン総研広島(GK-DSH)が言及しているので、この2つを確認してみます。

京阪電鉄の説明

京阪電鉄の公開資料(2021年6月時点)のうち、「風流の今様」の文言が記されている資料はいくつかありましたが、一番詳しく言及されている資料が、2016年9月1日に公開された、8000系プレミアムカー導入のプレスリリースです。

座席指定の特急車両「プレミアムカー」のデザインが決定!(京阪電鉄公式PDF)

3000系の話をしているに、いきなり8000系が出てきて困惑するかと思いますが、私も困惑しています。何故なら、京阪電鉄が公開している3000系の資料のうち、「風流の今様」について、(比較的)具体的に説明されている資料が無かったからです。

気を取り直して、8000系プレミアムカー導入のプレスリリースについて引用すると、

京阪電車では、鉄道車両は京阪ブランドを形づくる商品、サービスそのものであるという考えの下、「風流の今様※1」を基本コンセプトに「花鳥風月※2」といったモチーフを車両デザインに取り入れてきました。

※1 古都京都と水都大阪を結び、豊かな文化・風情に彩られた沿線イメージを守りつつ、新たなサービスに取り組む「進取(しんしゅ)」の精神と「現代的感覚」を融合
※2 「月(円弧)」の意匠をエクステリアやインテリアにダイナミックに展開し、「花鳥風月」の世界観を表現

座席指定の特急車両「プレミアムカー」のデザインが決定!より引用

と記載されています。

抽象的な表現のため、ピンと来ないと思いますが、「風流の今様」と言うのは概念・考え方であって、「風流の今様」を京阪の車両に表現したものが、花鳥風月の「月」である、と解釈出来ます。


GKデザイン総研広島の説明

3000系をデザインしたのはGKデザイン総研広島(GK-DSH)であり、京阪3000系の紹介ページがあります。

京阪電気鉄道・デザインワークス_KEIHAN Electric Railway Design Works | 株式会社GKデザイン総研広島
GKデザイン総研広島は、製品のデザイン(Product Design)、情報のデザイン(Communication Design)、空間のデザイン(Architecture/Environment Design)の3領域のデザイナーを有する続きを読む

その紹介ページには「風流の今様」について、少しだけ言及がありますので引用します。

京阪電鉄では、中之島線開業(2008年)、開業100周年(2010年)という節目を迎え、次の時代に向けた「新しい京阪」のブランドづくりを進めている。
その取組みのひとつとして、次世代新型車両3000系の内外観デザイン、および半世紀ぶりの全車両カラーリングの刷新を行った。これらのデザインコンセプトは「風流の今様」。大阪と京都を結ぶ地域文化醸成の役割を担う。
さらに駅舎のサイン(駅名、案内表時、時刻表、情報提供等)、ファニチャー(ベンチ、ゴミ箱、機器類等)など総合的な観点から一貫したデザインを試みている。

~中略~

風流の今様」コンセプトに則り、従来の伝統色・格調を残しながら新時代の軽快さを表現したものである。

京阪電気鉄道・デザインワークス(GK-DHS)より引用

GKデザイン総研広島の説明としては、「風流の今様」というのは、「従来の伝統色・格調を残しながら新時代の軽快さ」であることがわかります。それを表現したものが3000系なのですが、いまいちピンと来る様な説明かと言われると、ちょっと苦しいかなと思います。


その他の説明

2009年度のローレル賞とグッドデザイン賞のページにも「風流の今様」について説明がされています。

2009年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両 – 鉄道友の会

車内外のデザインは、沿線の風土である「文化・風情」の香りに「現代的感覚」を融合させた「風流の今様」を基本コンセプトとしています。それを具現化するモチーフとして「月」を取り入れ、よりダイナミックに見せるために、トリミングされた円弧形を先頭部や車内設備など随所に展開しています。

2009年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両より引用

ローレル賞の説明については、鉄道友の会が取材した先が京阪なので、当然と言えば当然ですが、先述した京阪電鉄の説明とほぼ同じです。「風流の今様」というのは概念・考え方であり、それを表現したのが「月」の円弧形であるということが記されています。

都市間通勤車両
大阪市中之島エリアの再開発事業の目玉のひとつが、京阪電鉄の中之島線である。昨年(平成20年)10月19日に開業に合わせて開発した新型車両が京阪3000系であり、主に大阪と京都を結ぶ快速急行として運用を開始した。また京阪電鉄は、2010年には続きを読む

京阪沿線のブランドイメージである『文化・風情』と、新しく変わる京阪の『現代的感覚』とを融合させる『風流の今様』を、車両デザインの基本コンセプトとした。

2009年度グッドデザイン賞 都市間通勤車両 [京阪電気鉄道 3000系車両]より引用

グッドデザイン賞の説明でも、「風流の今様」がコンセプトであることを述べていますが、京阪電鉄やローレル賞の説明と比べると省略されています。

実際に聞いてみた

「風流の今様」を調べるのに鉄道趣味雑誌をはじめ、色んな書籍を漁りましたが、非常に南海…いや、難解でゴールが見えなくなりました。説明がバラバラなので。

鉄道に全く興味の無い、日本史(古代~中世)・民俗史・国文学を専攻していた大学時代の友人たちにも協力してもらい、「風流の今様」が何なのか、ということを調べましたが、友人たちは口を揃えて「抽象的で解釈が難しい」とのこと。

…という訳で、ダメもとで京阪電鉄様に直接お訪ねしたところ、PDF資料を頂きました。

やったぜ!…と思ったのですが、PDFを公開して良いのか判断がつかないので、PDF内の文章だけ引用します。

京阪沿線のブランドイメージである「文化・風情」と、新しく変わる京阪の「現代的感覚」とを融合させる「風流の今様」を、車両デザインの基本コンセプトとしました。

風流の今様」という考え方を形に落とし込む造形モチーフとして、「花鳥風月」の「月(円弧)」を新たに取り入れ、エクステリアやインテリアにダイナミックに展開しています。

「月(円弧)」が生み出す個性的な表現が、新しい京阪電車のアイデンティティを創出します。

―京阪電鉄様から授受した3000系車両パンフレットから引用

上記引用に記されている通り、「風流の今様」というのは、概念・考え方の事を指しています。

そして、「風流の今様」を具現化したものが、「花鳥風月」の「月(円弧)」ということ。

ちなみに、京阪電鉄様から頂いたパンフレットには、花鳥風月についても記載があり、

…車両を彩る副標やラッピング
…京阪特急のシンボル
…疾走する車両そのものの姿
…新しい車両フェイス

と記されています。

花鳥風月の意味からアプローチすると、「月」が車両の顔に表現されており、それが風流の今様を具現化したもの、つまり、京阪のスラッシュ・ムーン(半月形)が、「風流の今様」の正体、ということになります。

つまりこれです。

この顔のスラッシュ・ムーンの部分が「風流の今様」ということでした。


編集後記

結果論ですが、最初から京阪電鉄様に伺いを立てれば良かったですね😿

3000系は車内にも円弧を採用したデザインになっていますが、あいにく、私は車内の写真を持っていないため、車内については、車内観察日記様の記事にて、ご堪能頂ければと思います。

『京阪3000系』
中之島線開業と同時に快速急行用車両として登場した3000系です。「3000」という系列は3005Fが最後の1編成として存在していましたが、これを8031Fとし…

とても詳細に紹介されていますので、是非ご覧ください。

参考資料

こころまち つくろう 活動レポート Vol.7(京阪ホールディングス))
京阪電気鉄道・デザインワークス(GK-DHS)
座席指定の特急車両「プレミアムカー」のデザインが決定!(京阪電鉄公式PDF)
徹底的にこだわった空間デザイン・付帯装備で車両に新たな価値を(京阪電鉄<座席指定>特別車両 PREMIUM CAR)

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