在籍する営業用車両の全てが、シングルアーム式パンタグラフを搭載している小田急。
後から交換した車両も多く、騒音の低減や降雪時のトラブル回避に寄与しています。

今では見慣れたものとなりましたが、このパンタグラフはどのような流れで採用されたのでしょうか。

30000形で初めて採用されたシングルアーム式パンタグラフ

小田急で初めてシングルアーム式パンタグラフを採用したのは、1996年に登場した30000形(EXE)でした。
それまでの小田急では菱形のパンタグラフが基本となっており、一部で下枠交差型の採用例がある程度となっていました。

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前年に登場した2000形も様々な部分で変化がありましたが、パンタグラフは従来と同様の菱形で登場しています。
30000形が登場した後に増備された2000形の編成は、その後も菱形のパンタグラフを搭載しており、しばらくは30000形が唯一の存在でした。
しかし、2000年代に多くの車両でパンタグラフの交換が行われ、菱形のパンタグラフは過去のものとなりました。



こうして小田急の車両はシングルアーム式パンタグラフに統一され、早々に菱形のパンタグラフは消えてしまったのです。
東京メトロの車両に菱形のパンタグラフを搭載した車両が残っていたため、他社線の車両ではその後も見ることができました。

1000形のワイドドア車で行われた試験の謎

30000形の登場に先立ち、1995年12月から1996年4月まで、1000形のワイドドア車にシングルアーム式パンタグラフを搭載して試験が行われました。
搭載されたのは1両だけで、サハ1851のみが交換されていました。

30000形は1996年1月に竣功していますから、この試験は採用を検討するものではありません。
冬季に使用した際の状況を把握することが目的だったようですが、少々謎が多い交換でした。

なぜかといえば、30000形の試運転自体は冬季にも行っており、それに加えて1000形でも試験を行ったことになるのです。
営業運転で継続的に使用した場合の状況を把握したかったのだと考えられますが、初めての導入ということで慎重になっていたのかもしれませんね。

おわりに

30000形の登場から10年後ぐらいには、ほとんどの車両がシングルアーム式パンタグラフとなっていた小田急。
本気になると動きが早いのは、いかにも小田急らしいですね。