これだけ野心家であった五島だが、女性関係も気になる所だ。
しかし、聞かれた五島はこんな事を語っている。
「最近よく人から、あなたにも昔はご婦人とのロマンスぐらいはあったでしょう、と聞かれるのだが、正真正銘私にはロマンスなどというものはない。
もし私にロマンスがあったとしたら、女に惚れていたとしたら、今日の私はあり得なかったろうと思う。
事業に対する野心がロマンスを征服してしまったというか、惚れたのはれたのということを考える余裕もなかったのである。
大体私などの相手にするのは玄人(くろうと)の女であるが、玄人の女に惚れられるのはロマンスグレーにならなければだめだ。
なぜかというと、女の欲しいのは金だし、金に惚れるのだから、四十、五十くらいのロマンスグレーになって、女への支払能力が出て来なければ惚れられるものではない。
私など、もう年をとって最近は肉体的にもすっかり衰えてしまったので、惚れられても見てもはじまらないが、しかし若い女と馬鹿話をしていると、仕事の話や世間の苦労からまぬかれて頭の中が「空」になって来る。
そうすると夜熟睡できるので、またあすへの活力が出て来るのである。
これが私の健康法である。
三昧(さんまい)ということがあるが、女でも、碁、将棋、スポーツ、なんでもよい。
三昧になる-すなわち「空」になるということが必要である」
この記事は2015-05-26
yahooブログにて掲載していました。