【最初で最後?】185系A6編成が長野総合車両センターへ自走で廃車回送

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2021年3月に定期列車での活躍を終えた185系。引き続き“波動用編成”の活躍が続いている一方で、「踊り子」で使用されていた編成は静かに“最期”の日を待つ日々が続いています。

2021年6月18日深夜から19日早朝にかけて、A6編成が大宮総合車両センター東大宮センターから長野総合車両センターへ回送されました。廃車のためと見られます。

185系の近況をお伝えしつつ、特殊な使命を担い、その特殊装備ゆえに自走回送となったA6編成を振り返ります。

尾久と東大宮を往復するのみ……

2021年3月のダイヤ改正で「踊り子」「湘南ライナー」などに使用されていた10両のA編成6本・7両のOM編成3本・5両のC編成6本が使命を終えました。

現在は多くの車両が大宮総合車両センター東大宮センターで留置されているほか、尾久車両センター・宇都宮運転所・大宮総合車両センター(本所)に疎開されています。

波動用編成が走行する度に各地で盛り上がるなか、かつて花形だった特急運用に充てられていたグループは疎開先の尾久から交番検査のため東大宮に一度戻る……程度で、静かに余生を送っています。

2021年3月改正に前後した廃車関連の移動は、2020年12月24日に波動用のOM03編成が自走で回送されたほか、2021年3月24日にA3編成・同月31日にOM09編成が機関車牽引の配給輸送で長野へ向かっています。それ以降4月・5月は特に動きがありませんでした。

前後に代替された209系・E217系の解体が優先されていたことが背景と思われますが、6月になってOM03編成の解体が始まりました。

解体作業が進み、長野総合車両センターに線路容量の余裕が生まれたことで、3ヶ月弱の期間を空けて廃車の動きが再開したものと考えられます。

“今回だけ”自走の理由

185系の廃車関連の動きはこれまで機関車による牽引を基本としていました。今回のA6編成は自走となっており、A編成としては初の動きです。

今回廃車回送となったA6編成は、お召し列車予備・御乗用列車などで使用されるための防弾ガラス装備となっています。

置き換えたE257系を含め、JR東日本の特急車では各路線・各形式に1〜2編成が防弾ガラスを装備しています。これらの装備車両は過去に実施された関連する動きを辿れば明らかですが、警備上の都合から現役の車両については明らかにされていません。

しかし185系の場合、グリーン車の一部の窓(該当車両の5列分)が開かない構造となっている関係で、外観で明らかな違いがあり、比較的多くのファンに知られていました。窓が開かない普通の特急車両では一見するだけでは区別がつかないため、ネット上や商業誌で半ば公然として語られていたのも、窓が開く185系ならではのエピソードと言えそうです。

防弾ガラスを装備している車両を含む編成は、解体済のB1編成と廃車待ちとなっているOM編成1本にも存在しますが、このA6編成についてはA編成で唯一、B編成同様にパンタグラフをPS24形に交換=狭小トンネルに対応しています。

そのため、今回自走回送とされた背景は過去の201系の事例とは異なり、廃車回送のためにパンタグラフを改装したわけではなく、自走可能な設備を有しているから自走回送とされた……といったところでしょうか。

185系自体は特急「はまかいじ」が松本駅発着で運転されていたほか、団体臨時列車での入線実績もあります。

しかし、「はまかいじ」は横浜線のATCに対応したB3〜5編成の限定運用となっていました。団体臨時列車についても波動用編成の入線となるため、A編成のグリーン車込み・貫通10両編成が中央線・篠ノ井線を走行する機会には恵まれませんでした

これらの改造の背景は、中央本線系統のお召し列車等での使用を想定した改造と考えられます。

185系はデビューから浅い時期に、貴賓車クロ157を牽引する使命を183系から継承しました。

7両編成のグリーン車をクロ157に差し替える組成を基本としており、183系に代わる形で転入したB1編成が担当している事例が多かったものの、A編成が使用された事例も存在します(過去の編成写真でも、前面方向幕下の通風口形状の違いでどちらかが分かります)。

お召し列車の運行は183系・185系が配置されていた東海道本線だけに留まらず、首都圏各地への発着で実施されていたため、将来的に中央本線を走行することを想定していたものと考えられます

クロ157を使用する場合は防弾ガラスのグリーン車こそ外すこととなりますが、これらの装備をしている編成は通常の定期検査に加えて外板塗装の塗り直しを実施するなど入念な整備が実施されています。グリーン車を外す場合でもこれらの編成を使用することとされるのが最も合理的です。

また、お召し列車の前後を伴走する予備編成や、御乗用列車(定期列車のグリーン車貸切で実施される場合を含む)についても防弾ガラス装備編成に限定されます。

須崎へのご静養などで大活躍

当時の田町電車区で2編成がどこでも走れる体制とすることに加え、踊り子号をご利用される場合に10両・7両どちらの列車でも可能な体制を組んでいたことはごく自然に思えます。

抜擢されたA6編成は御召・御乗用といった華々しい活躍を想定した装備であったものの、自身の引導を左右することとなったのは複雑な印象です。

須崎御用邸でのご静養の前後で定期列車(近年では踊り子114号の実績が多い)で登板することが多く、防弾ガラス装備は頻繁に活躍しました。

夏のご静養は天皇皇后両陛下(現在の上皇上皇后両陛下)が那須御用邸を、皇太子同妃両殿下(現在の天皇皇后両陛下)が須崎御用邸で行われることが多かったこともあり、御乗用列車は185系晩年まで何度も設定されました。

一方で、実際にPS24形でなければ走行できない中央線高尾駅以西への入線実績は筆者の知る限り見受けられず、狭小トンネル走行は“最初で最後”となったものと思われます。

“遜色特急”と揶揄されることも多かった185系ですが、お召し列車・お召し予備・御乗用列車といわゆるVIP列車に登場から晩年まで携われたことはなかなか名誉なことでしょう。

今後のA編成・C編成・OM編成の輸送については従来同様に機関車牽引の配給輸送、波動用のB編成は今回同様に自走で長野車両センターへ向かうものと考えることができそうです。

ファンから注目を集めやすい機関車牽引でないものの深夜の回送とされたのは、引き続き撮影者対策でしょうか。都心部では撮影が困難な反面、185系では珍しい単線の山間部となる篠ノ井線を明るい時間帯に走ることとなりました。

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