ブログを始めて2か月が過ぎました。
「九州の何処か」を走る我が模型鉄道も、社名や駅名を具体化しないと記事が書きにくくなってきました。
たかが模型の話ではありますが、鉄道名について真剣に考えてみたいと思います。
鉄道名に関する他の方々のブログ等の記事と重複する部分もありますが、私の考察の経過を書かせていただきます。
まずは、これまで私の印象に残った鉄道名を分類してみます。
1 可笑しみのある言葉をもじったもの、自虐的なユーモアが印象に残ります。
名奈信野言辺江鉄道、御幌鉄道、能呂井鉄道など
2 旧国名から名付けたと思われるもの
摂津鉄道、武蔵野鉄道、上総鉄道、下総鉄道、遠江鉄道など
3 実在する地名や路線名、施設名等から名付けたと思われるもの
雲竜寺鉄道祖山線、龍安寺鉄道、有度山麓鉄道、奥羽鉄道、佐久軽便鉄道など
4 架空の地名を名付けたと思われるもの
三津根鉄道、須津谷急行など
番外 国鉄〇〇線としたもの(名付けは上記1~4に包含されると思います)
国鉄香春線、国鉄美杉線など
他にも沢山の名付け方がありますし、作者の意図とは異なる分類になっているかもしれませんが、あくまで私の印象に基づくものです。ご容赦ください。
上記の他にも、白雪姫鉄道や銀河鉄道など、夢のあるネーミングが心に残っています。
それにしても列記したレイアウトは随分昔の作品が多いですね。この道に入った頃、古本も漁りながら、貪るように読んだ記事の記憶が強烈だったということでしょう。
さて、私の鉄道名です。
少年時代にシーナリィガイドを読んで以来、「川正線」に憧れ続けています。四十年に渡って私の脳裏にあり続けた名称です。当鉄道の路線名は「川正線」以外に考えられません。
私の鉄道は「〇〇鉄道川正線」と称することにします。
次に駅名を考えます。
シーナリィガイドの「川正線」の駅名は、「岩城家野」と「岩城川正」です。これは、旧国名を冠した実在の駅(岩代飯野、岩代川俣)をもじったものです。
この駅名の旧国名に相当する「岩城」を当鉄道の舞台設定に沿って呼び換えることにします。
我が郷土の旧国名を冠し、筑後~としたいところですが、当鉄道は「九州の何処か」にある設定なので、筑後に限定してしまうのは面白味に欠けます。
九州地方全体を表すうまい言葉はないものでしょうか。
調べてみたところ、「筑紫(つくし)」が浮上しました。
古事記の国生み神話で、イザナミが「筑紫島(九州)を生んだ」との記載があるようです。
同じ古事記でも「筑紫国」と言えば、筑前と筑後を合わせた地域を指し、九州全体の呼称はあくまで「筑紫島」なのですが、日本書紀には、九州の総称としての「筑紫」の用例があるそうで、これを踏襲することにします。私の川正線の駅名は、「筑紫家野」と「筑紫川正」です。
次は「〇〇鉄道」の部分です。
私の川正線は、国鉄の支線の設定なので、「国鉄川正線」がぴったりです。
しかしながら、鉄道模型を始めて四十数年の時を経て、初めて完成するかもしれないレイアウトです。やっぱり、独自の鉄道名を付けたいじゃないですか。
かの雲竜寺鉄道や摂津鉄道も国鉄を想定したレイアウトですが、荒崎さん、坂本さんの代名詞ですよね。
代名詞を自分で付ける、というのも変ですが、私も私の代名詞を付けたいと思います。
上記の分類を参考に考えてみましょう。
まず、1のようなユーモラスな名称です。これは非常に好ましいと思います。
私も考えましたよ。思いついたのが「棉志野(わたしの)鉄道」です。漢字の見映えも語感もよく、お気に入りでしたが、連れ合いから「洒落るなら、もっと面白く洒落たほうがいい。」と却下されました。
2の旧国名や、3の実際の地名などは、「九州地方の何処か」という設定に反して、どうしても地域が限定されてしまうので適当ではありません。
それなら、4の架空の地名はどうでしょうか。銀河鉄道のような壮大な名称も含めて、素敵な呼び名が考えられると良いのですが。
実は、初めてレイアウトに着手した中学1年の頃から、素敵な鉄道名を考え続けているのですが、悲しいことに、思いつかないのですよ。発想が貧困な私は、やっぱり何かを参考にしないと無理なようです。
そこで、「筑紫」を足掛かりに考えてみることにしました。
まず思い出したのが、郷土の天才画家、青木繁の短歌です。
「我が国は筑紫の国や白日別(しらひわけ)母ゐます国櫨多き国」
白日別は、筑紫の国の別称として古事記に記載されています。「白日別鉄道」、いい感じです。
でも、白日別は「筑紫国」の別称です。駅名の「筑紫~」は九州の総称のつもりですから、鉄道名が駅名より範囲が狭いのはいただけません。
続いて、短歌つながりで、色々と調べていくうちに、ついに見つけました。万葉集です。
「白縫筑紫の綿は身に着けていまだは着ねど暖けく見ゆ」
この「白縫(しらぬい)」は、「筑紫」の枕詞です。そして、この歌の「筑紫」は、九州の総称という解釈もあるようです。私自身、この解釈に完全に首肯できるわけではないですが、これに乗っかることにします。
ついに、我が模型鉄道の社名と路線名の決定です。当レイアウトは「白縫鉄道川正線」と称します。
これで、レイアウト製作の懸案のひとつだった駅名標を作ることができます。
そう意気込みながら、なぜか、一抹の寂しさを覚えてしまうのです。
長い模型趣味生活で、これまで鉄道名を決めてこなかったのは、あいまいな部分を残しながら、そこに夢を見続けていたいという心の動きだったのかもしれません。聖域がなくなってしまったような気分です。
でも、レイアウトは目の前に存在するのですから、自分の代名詞として大切にしていきたいと思います。
ご訪問ありがとうございました。
参考文献:竹生 政資 , 西 晃央「万葉集の枕詞「しらぬひ」の解釈について」 佐賀大学文化教育学部研究論文集 12(2), 75-95, 2008-01