皆様こんばんは。ブログおよびホームページ管理人の神@北見です。
今日は久し振りに本業のキハ58系のネタで行きたいと思います。今回は床下機器です。キハ58系には各形式がありますが2エンジン車をメインに見てみましょう。
キハ58系のバリエーションは非常に豊富で、冷房車・非冷房車、平窓車・モデルチェンジ車といった大きな分類の他、車体から屋根上、塗装など非常にバリエーションが多く興味深い形式になっています。
その割に床下の機器については機関換装以外はあまり取り上げられることはありません。今回はキハ58系の床下機器の製造年次による差異を見てみたいと思います。
・DMH17Hエンジン前の機器類
↑キハ58 564の例です。
キハ58系の中期車を見ると、DMH17Hエンジンの前には特に目立つ機器類は何もありません。しかし、とある製造次数では変化が現れます。
↑キハ58 733
エンジン前に、何やら表面にヨロイ戸状のガラリの付いた小さな横長の箱が付いています。
↑これはキハ65の図面ですが、同じものがあります。これは「整流器箱」と言って、機関に直結された交流発電機からの電流を直流へ変換するためのものです。一般形・急行形気動車の制御回路は直流24Vとなっています。
この整流器には製造年次により「セレン整流器」と「シリコン整流器」に分かれ、この画像のものはシリコン整流器になります。実車を見ると昭和40年度予算での製造車よりこの新型の整流器になりますので、これを見ると製造年次が区別できそうです。ちなみに「セレン整流器」の箱がどのような形状なのかは良く分かりません。
続いて若番車を見ると、これも機関の前に何やら箱があります。
↑キハ56 15を改造したキハ53 502のDMH17エンジンです。エンジン前に何やら横長の箱があり、○に継という表記があります。
↑キハ58 254にも似たような箱がありますが、先ほどのキハ53 502の物よりも横幅がかなり小さいです。
これは、
↑「継電器箱」というもののようです。ここでは第1次~4次急行形までが付けているような記載があります。
色々調べてみますと、キハ58系の第1次~4次車(いわゆる長大編成対応となる前の0番代車)については、長大編成車が登場後に長大編成改造を施工し性能が揃えられています。しかもこれについては「長大編成A・B工事」「長大編成C工事」と改造メニューが分かれているようです。
↑文献では長大編成工事にはAからCのタイプがあり、A・BとCに二分できるようです。
調べて見るとA・Bは1次から3次急行形、すなわちキハ58であれば1~189までが該当し、Cは4次急行形すなわちキハ58であれば190以降が該当するようです。
先の写真を見ると、1次急行形であるキハ53 502と、4次急行形であるキハ58 254で形状が異なるのが頷けます。
長大編成対応車では従来の制御回路に小型継電器を追加して各車の自車電源により各電磁弁を作用させる方法へ変更され、これにより長大編成を組んだ際の電圧降下に対処したということになっています。そのため長大編成対応前の0番代車にはこの小型継電器が追加で設置されて回路が変更され、そのため機関の前に継電器箱が付いたものだと思われます。
なお最初から長大編成対応として新製された車はこの小型継電器が新製時から取り付けられており、これは従来の接触器箱のレイアウトを全面的に見直してこの中に収納されました。但し長大編成対応で車ではこれにより接触器箱内部のスイッチ類が増えたため、側面からも接触器箱を開けれるように設計変更されています。
↑これはいすみ鉄道で現在も活躍するキハ28 2346です。接触器箱の側面も開閉可能となっており、ここにスイッチ類がまとめられています。これは0番代車とは異なる構造になっています。
要するにこの接触器箱形状(側面への主スイッチ用開閉蓋有無)や、追設された継電器箱の有無やその形状により、昭和35・36年度予算製造車(1次急行~3次急行形)、昭和37年度予算製造車(第4次急行形)、そして長大編成対応車(第5次急行形以降)とを区別できるようです。
・台車脇の機器箱
↑キハ58 200、203
赤丸で囲った中に箱があります。しかし付いていない車もいます。
↑キハ58 66、キハ58 144
若番車ですが付いていません。
↑キハ58 443、446 長大編成対応車になるとまた付いていません。
さて、そもそも上に挙げたキハ58 200・203に付いていた箱は、「逆転機再投入器箱」とか「逆転機制御箱」と呼ばれ、箱にも○に逆という字が書いてあります。
↑図を見ると「逆転NM箱」とあります。VMの意味は良く分かりませんが…。
これは、急行形気動車からは逆転機の補助かみ合わせ装置が取り付けられ逆転機の作動が確実かつ容易になりましたが、さらに昭和37年度急行用からは逆転機再投入装置が設けられ、逆転機を作動させたもののかみ合わせが合わなかった車が編成中にいた場合は、その車のみを再度投入させるという機能が追加されたものです。これにより外観上は台車脇に機器箱が追加されました。
それが昭和37年度以降(4次急行形)であるキハ58 190以降の車に該当するキハ58 200や203が付けていた箱になります。
↑おさらいですがこれですね。キハ58 200
では、37年度急行形(キハ58では190以降)から付いたこの逆転機再投入器ですが、その後はどうなったのでしょうか? 写真を見るとキハ58 400番代 つまり長大編成対応車からはまた箱が無くなっていますが…。
これは、長大編成対応車になって小型継電器の追加により制御回路が大幅に見直しされた際、この逆転機用の継電器もまとめて接触器の中に収められたようです。よって台車脇からは無くなったものと思われます。
このように、これまで差異には気づいていたもののその構造が良く分からなかった床下機器ですが、このような図書が○○オク等で入手できる時代になったのが非常に大きいです。
↑記事中で挙げた図面や記載はほぼこの「図説・ディーゼル動車」という本から読み取ることが出来ました。
今まで製造年次での違いを何となく把握していたものの、このようにその機器の変更などが具体的に記載されている図書があると非常に分かりやすいです。と言っても私は電気関係には疎いので難解で頭が痛いですが…。
ということで、キハ58系の床下機器について見てみました。この情報から、今まであまり車体関係の差異が少なかった昭和36・37・38年次車についても見分ける手助けになりそうです。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。それでは次回もお楽しみに!!
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