【水島・京葉臨海鉄道】DD200形が落成〜JR九州向け黒色塗装も製造中

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JR貨物グループの水島臨海鉄道・京葉臨海鉄道では、2021年7月にDD200形を相次いで導入しています。

2021年5月19日に水島臨海鉄道の601号機・6月8日には京葉臨海鉄道の801号機が姿を見せました。

このほか、DD200形の製造を手掛ける川崎重工業兵庫工場では、黒色塗装でJR九州の赤いコーポレートカラーを掲げた700番台も確認されており、今後の展開に注目が集まります。

製造が相次ぐ他社向け機

JR貨物が投入を続けてきたDD200形は、2017年6月に試作機・2019年8月から量産機が製造されている電気式ディーゼル機関車です。

先に登場したHD300形はDE10形の従事していた運用のうち構内入換を代替するための機関車ですが、このDD200形は本線走行する運用の代替を主目的としており、非電化の比較的短い距離の貨物列車を中心に活躍をしています。

これまではJR貨物向けの導入が進められていましたが、これまでに京葉臨海鉄道・水島臨海鉄道がDD200形の投入を明らかにしています。2021年度に入り、601・701・801号機といった他社向け機が相次いで製造されている姿が川崎重工業兵庫工場にて目撃されており、ファンから注目されていました。

2021年5月19日に水島臨海鉄道の601号機・6月8日には京葉臨海鉄道の801号機が甲種輸送(貨物列車としての輸送)が実施され、それぞれの事業者でのデビューを待つこととなります。

製造された京葉臨海鉄道DD200形をみる

今回甲種輸送が実施されたのは、京葉臨海鉄道DD200形801号機です。

水島臨海鉄道同様に、車体塗色はJR貨物所属機と同一になっています。京葉臨海鉄道で使用される機関車はこれまで水色塗装でしたが、DD200形は“色違い”とはなりませんでした。

水島臨海鉄道の601号機は運転台付近にロゴが設置されましたが、京葉臨海鉄道の801号機は現時点では特別の装飾は見られません。

2020年度までJR貨物が導入を進めてきた0番台と比較すると、運転台から車端部の距離が短い“2エンド”側の窓の拡大とワイパーが追加されている点が大きな違いとなります。

保安装置では、JR貨物機ではJR線内の本線走行を考慮してATS-PF・SFが設置されていますが、水島臨海鉄道・京葉臨海鉄道向けはATS-SFのみの設置とされています。列車無線アンテナがない点も目立ちます。いずれもJR線内の走行を考慮していない設備と考えられますので、両社の機関車がJR線内を自力走行する機会はなさそうです。

JR貨物機の“2エンド”

相次ぐ新造機導入の理由は

DD200形は2017年6月に試作機が登場し、2019年8月から量産機の落成が始まりました。

JR貨物での試験・活躍が評価されての発注と推察できますが、DD200形の導入が一斉に始まった背景を考えます。

念願の新形式

ディーゼル機関車は全国各地のJR・中小・三セクで見ることが出来ますが、国鉄分割民営化以降はHD300形・DD200形の導入まで直系の後継車両が登場していませんでした。

DE10形・DD51形といったディーゼル機関車の老朽化が進行しているものの、JR貨物での本格的な代替は同世代の電気機関車に比べてゆっくりと進行しました。

背景はいくつか考えられますが、特に大きいものとしては非電化路線の貨物列車廃止傾向と着発線荷役方式の普及が挙げられます。

まず、ディーゼル機関車の大きな活躍の場である構内入換業務については、着発線荷役方式が普及して活躍の場が狭まっている傾向がありました。

コンテナ貨物の載せ下ろし作業ではフォークリフト・トップリフターなどを用いた作業は架線との接触の恐れがあるため、貨物駅に到着した貨物列車は電気機関車からディーゼル機関車に付け替えて架線がない荷役線に入換、作業を完了したら再度入換・付け替えを実施する流れが基本でした。

貨物駅での停車時間削減=速達化と作業の合理化を目的として導入が進められているのが“E&S方式”とも呼ばれる着発線荷役方式です。

この方式では、貨物列車の着発線のき電(送電)を停止することで、フォークリフト・トップリフターなどを直付けすることが出来る構造とされています。構内配線を大きく変える必要があるものの、輸送効率上昇に大きく貢献しています。

2010年から構内入換に特化したHD300形の投入が先行したものの、ハイブリッド方式の製造費用の高さから大規模な貨物ターミナルなどの重点拠点への配置に留まっていたほか、構内入換に特化して最高運転速度は45km/hなど、支線級であっても本線走行は難しい車両となっていました。

一方で、本線走行を含む貨物列車牽引はDD51形またはDE10形が使用されていましたが、このうちJR北海道管内については従来のDD51形重連を単行で牽引できるDF200形がJR貨物発足まもなく開発されたものの、それ以外の線区では牽引能力が過剰・重量の制約(軸重制限)により波及しませんでした。

それ以外の路線のうち、DD51形が使用されていた線区では各地で運行本数減少・廃止・電化などで相次ぎ、今日まで運行されている系統はDE10形で賄える路線と関西本線貨物列車のみとなりました。

関西本線の貨物列車には北海道の貨物列車縮小で余剰となったDF200形が割り当てられ、2021年3月にJR貨物のDD51形は使命を終えています。

これらの事情からDE10形などの国鉄型ディーゼル機関車代替の本命とも言えるDD200形の登場は比較的最近となったものとみられます。

ハイブリッド機に比べて安価で実績も多く、DE10形同等の牽引能力がありながら最高時速も110km/hまで対応できる電気式ディーゼル機関車の登場は、同世代の機関車の代替を検討していたJR貨物以外のグループ会社・それ以外の鉄道事業者についても魅力的な車両だったことと推察できます

各地でDE10形などの検査が終了

このほかの大きな動きとして、JR貨物でDE10形(と類型機も?)の検査を相次いで終了している旨が挙げられます。

2017年には大宮車両所で国鉄型ディーゼル機関車の最終全検とされたほか、2021年には岡山機関区のDE10 1561号機が第2交番検査B最終出場のヘッドマークを掲げるなど、JR貨物全体で“終わり”が見えてきました。

これにより困るのが、従来DE10形や同型機の定期検査を委託していたグループ会社などです。

最近では、愛知県の衣浦臨海鉄道のKE65形が遠路遥々JR東日本秋田総合車両センターに定期検査を委託するなど、旅客会社に委託する事例が相次いでいます。JR貨物では旧来の機関車の面倒を見ないという大方針が垣間見ることが出来ます。

ただし、新たな外注先となっているJR東日本でも、2024年度の機関車牽引列車全廃に向けた“終活”が進んでいる状態です。こちらも中長期的なメンテナンスを委託するのは困難な状態となります。

今回導入される2社はいずれも自社で検査を行なっているのでこれらの変化は大きな影響はないものの、この変化はそれ以外のJR貨物グループ会社・貨物輸送を担う各社についても、DD200形またはHD300形の導入が検討される契機となることが想像できます。

一方で、各地に比較的近年に新製投入した機関車も存在しているほか、検査を自社で実施している会社への委託なども考えられますので、一概に在来全車両が代替されるとは言えません。どこの事業者がどれくらい導入するのかは各社の発表などを待つこととなりそうです。

JR貨物では今年も増備

2021年度はJR貨物本体でもDD200形が6機導入予定とされています(交通新聞)。

JR九州向けは黒色塗装で製造中

このほかファンにとって注目される点として、甲種輸送済となっている600番台・800番台の間となる700番台は黒色塗装・金色手摺りとなっている姿が川崎重工業兵庫工場で製造されています。赤いJRマーク・保安装置表記などからJR九州向けと断定出来ますが、現時点で正式な発表はありません。

JR旅客会社のDD200形導入は初となり、JR貨物開発形式の旅客会社導入はJR東日本のEF510形・JR九州のDF200形に続く3例目となります。

ブルートレイン廃止と並行して、昨今のJR各社では機関車牽引列車が削減が続いています。JR東海では機関車を全廃済みとなっており、JR東日本がこれに続く予定です。

一方で、JR九州では「ななつ星 in 九州」が運行されており、こちらはDF200形7000号機と77系客車の機関車牽引方式が採られています。

JR九州では熊本に7機のDE10が在籍しており、「ななつ星 in 九州」の一部区間のほか、SL用の50系客車の牽引なども担当しています。管内の事業用列車についても、レール輸送の工臨(工事列車)のほか、軌道検測もマヤ34形事業用客車を使用しています。

レール輸送用貨車・検測車の後継形式がどうなるかにもよりますが、少なくとも機番からDF200と異なって複数機・最大で7機程度の布陣となりそうです。

日本国内では機関車牽引列車の削減が続いている一方で、機関車のファンは根強い印象です。令和の機関車牽引の“ネタ”ものは九州が盛り上がりを見せそうです。

DE10形・類型機関車は北海道から九州まで幅広く在籍していますが、代替車両の決め手に欠く状態でした。JR東日本のように事業用の電車・気動車で代替するのか、JR九州のように機関車の投入も視野に入れているのか、残された各社の動向が注目されます。

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