「◇」から「<」へ 電車のパンタグラフ形状が変化したワケ!

電車に乗る機会も多く、電車の屋根の上に搭載されているパンてグラフを眺める事はありませんが、注目すると面白い!

電車の屋根上にはパンタグラフが載っていますが、その形状に注目すると、最近の電車は「<」の字型をしている一方、古い電車は「◇」の形をしています。中にはパンタグラフのみを更新する例も。形状が変化した理由は何でしょうか。

周辺環境にも影響を与えるパンタグラフ

 主に上空に張られた架線(電線)から電気を得て走る電車は、屋根の上にパンタグラフと呼ばれる集電装置が付いています。特に都市部の電車だと、JR・私鉄問わずパンタグラフ形状は「<」が主流ですが、古い電車だと「◇」の形をしたものも見受けられます。

 

 従来から採用されていた「◇」のパンタグラフは、細い棒を複数組み合わせてふたつの菱形にし、

集電舟(架線に擦らせて電気を採り入れるための部品)を支える構造です。

一方の「<」は「シングルアーム」と呼ばれ、1本の棒が途中で折れるような構造です。菱形に比べ部品の数が少ないシングルアームは製造費が安くなるほか、構造が簡素化されたことでメンテナンスが容易になるというメリットがあります。

 また部品数が少ない分、重量が軽くなり、車両全体の軽量化を図ることも可能に。車両が軽いとレールに与えるダメージも少なくなり、線路のメンテナンスにかかる費用も抑えられます。以上の点から、古い電車であれパンタグラフを「◇」から「<」へ更新する例もあります。

 

新幹線・高速電車用のパンタグラフ。

N700S新幹線車両用のパンタグラフ。

基本的にはシングルアーム形パンタグラフであるが、従来の700系などに見られるタイプより下枠(関節部分より下側)のアームが極端に短くなり、その関節部と下枠部分も流線型のカバーで完全に覆われた新開発のパンタグラフを採用している。これによって従来のシングルアームパンタグラフよりも風切り音の軽減と、架線への追随性の一層の向上を果たしている。

 そのほか、高速走行する電車の場合もシングルアームの方が好都合です。構造物が多い菱形は、走行中に受ける空気抵抗が大きくなります。電車が速く走れば走るほど、空気抵抗によって生じる騒音も大きくなってしまうのです。騒音を抑えられるという点も、シングルアームが普及した理由のひとつでしょう。

 

N700系16両編成の場合、進行方向に関わらす常にパンタグラフは先頭から5両目後部と12両目前部に位置するように設計されています。

パンタグラフは先頭から遠ければ遠いほど騒音面で有利になることと、2基あるパンタグラフの間隔をできるだけ伸ばしたいということの兼ね合いによるものです。この考え方は700系で確立したもので、700系とN700系のパンタグラフの搭載位置は完全に前後対照になっているのが特徴です。
 

秋田新幹線・E6系電車のパンタグラフ。

E6系新幹線電車のシングルアーム パンタグラフ。

 

 ちなみに架線は必ずしも同じ高さで張られているわけではありません。例えば踏切では、トラックが架線を引っかけないよう高く設置されているほか、トンネルでは掘削断面を小さくするために架線も低く設置されています。パンタグラフには、随所で架線の高さが変化しても、集電舟が架線から離れないようにするための性能が求められています。

 

北陸新幹線「W7系」高速電車のパンタグラフ。

新幹線電車のパンタグラフは高速走行時の騒音(ノイズ)を極力抑える構造のデザインでシングルアーム。

「W7系」高速電車のシングルアームパンタグラフ

 

JR西日本・JR500系電車のパンタグラフ。

JR500系電車のパンタグラフは「のぞみ」として運用していた時代と、

現在の「こだま」として運用する、パンタグラフは異なる!現在はシングルアームのパンタグラフ。

 

JR500系が「のぞみ」として運転していた時は、梟の羽の構造からヒントを得て、デザインされた低騒音の高性能パンタグラフ。

 

0系新幹線の時代は、下枠交差型パンタグラフを採用していた。

菱形の下枠を交差させることで、作用高さを損なうことなく(集電舟の可動範囲を狭めることなく)上枠を小型化でき、

それによる軽量化で架線追従性の向上を図ったもの。

0系新幹線のパンタグラフは下枠交差型。

 

EF66-27号機・電気機関車のパンタグラフは下枠交差型パンタグラフを搭載している。

 

EF210形電気機関車はシングルアームのパンタグラフを搭載している。

 

シングルアームパンタグラフは1955年(昭和30年)にフランスの大手鉄道用機器メーカーであるフェブレー社 (Faiveley S.A.) が開発し、特許を取得した。このため欧州では、路面電車から高速車両まで幅広く普及しており、特に高速化に熱心なフランス国鉄では1960年代後半以降標準的に採用されている。イタリア国鉄西ドイツ国鉄の車両も、フランスへ乗り入れるものは架線高さの問題もあって、古くからシングルアームパンタグラフが採用されていた。この特許は期限切れ以降、日本国内でもシングルアームパンタグラフが普及した!

以上、集電装置(パンタグラフ)について説明いたしました。

 

 

by   GIG@NET

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