(2015年3月、直江津から越後湯沢までほくほく線の普通列車に乗り、引退間近の特急「はくたか」を撮影した時の記事を加筆修正して再掲載します)
直江津発16時31分発、ほくほく線経由越後湯沢行きに乗った。この列車は越後湯沢着が18時24分。2時間近くもかかる。ほくほく線の普通列車の中では所要時間が長いタイプだ。単線のほくほく線で特急列車を優先したダイヤを組むと、普通列車の通過待ちの停車時間は必然的に長くなってしまう。
時刻表にはほくほく線内各駅の発車時刻しか掲載されていないが、駅間の所要時間が通常より長い箇所を見つければ、そこで特急通過待ちがあると推測できる。案の定、ほくほく大島を出て、長い鍋立山トンネルに入り、トンネル内の信号場で停車。運転士が「特急列車の通過のためしばらく停車します」と放送した。
ほどなく、耳が「ツン」とする圧迫を感じた。特急「はくたか」がトンネルに突入したことがわかる。列車が近づくにつれ「ゴォー」という音が大きくなり、通過の瞬間、こちらの車両が風圧でグワンと揺れ、すさまじい轟音を残して走り去っていった。この一瞬を撮影しようと、最後部の窓越しでカメラを構えていたが失敗した。この先、もう一回、トンネル内通過のチャンスがあるのでその時にしっかり撮っておこうと思う。
十日町に着く頃にはだいぶ暗くなってきた。十日町では約20分も停車する。この間に特急はくたか19号越後湯沢行きが通過する。

ほくほく線の十日町駅は高架で、犀潟寄りには勾配がある。特急は坂を駆け上がってカーブしながら十日町を通過してゆく。待ち構えていると坂を下った先にヘッドライトが見えた。
列車の動きが遅い。おかしいなと思ったら、飯山線の列車だった。飯山線は地上にホームがある。
列車の動きが遅い。おかしいなと思ったら、飯山線の列車だった。飯山線は地上にホームがある。


雨降る中を通過してゆく特急「はくたか」。
ほくほく線や上越線で何度も撮影した「はくたか」だが、これが最後の走行撮影となった。

「はくたか」が引退すれば消されてしまうだろう。

十日町を出て、次のしんざを過ぎると赤倉トンネルに入る。トンネル内の信号場で「はくたか」通過のため停車する。また耳ツンがした。特急が接近している。
轟音を響かせ疾走してゆく特急「はくたか」。また失敗してしまった。かえって動画を撮影しておけばよかったと後悔する。
六日町から上越線に入り、越後湯沢着18時24分。次に乗り換えるは19時14分発上越線水上行き。50分もあるので「はくたか」を撮影しておく。駅や沿線で何度も撮影した特急「はくたか」もこれでいよいよ見納めである。これまではこんな感じで撮りたいとか、あの場所も行ってみたいなどと、次の撮影の事を考えながら帰りの列車に乗ったが、今日はもう次がない。といって、最後だから何か特別な撮り方をしようとは思わない。見慣れた越後湯沢駅に停車している「はくたか」をそのままの姿で撮ることにした。

特急「はくたか」を真ん中に、左は上越線長岡行き115系普通列車、右はほくほく線経由直江津行き。暗いので見えにくいが、115系は湘南色の編成だった。

18時39分、冷たい雨の降る中、「はくたか22号」が発車してゆく。

続いて18時53分、「はくたか21号」が数分遅れて到着した。
上越新幹線に乗り換えるお客が一斉に通路にあふれかり、中には小走りに急ぐ人もいる。駅の放送で「はくたか号が遅れたため自動改札機には切符を通さずそのままお通りください」と呼びかけている。「はくたか」が到着するたび、逆に新幹線が到着するたびに繰り返された慌ただしい乗り換えの光景もあと数日で終わる。

乗り換え通路には、「はくたか」の引退を惜しむ寄せ書きがあった。利用者それぞれの思い出が綴られていた。

再びホームに戻ると、19時39分発「はくたか24号」福井行きが停車していた。先ほどの「はくたか21号」の折り返しである。まだ客は乗っておらず、作業員が車内清掃をしていた。
「はくたか」の福井行きという表示は珍しい。まもなく開業する北陸新幹線は金沢が終点だが、いずれ福井まで延伸する。「はくたか 福井」の表示は一度消滅するが、新幹線の「はくたか 福井」がいつの日か復活するだろう。

私にとって見納めとなる特急「はくたか」は北越急行の683系だった。「はくたか24号」はほくほく線普通列車と並び、冷たい雨に打たれていた。
やがて、普通列車水上行きが到着した。名残惜しいが、これに乗らなくてはならない。湿気で曇っていた窓を手で拭いて、「はくたか」を見送ろうとしたが、後ろ姿はぼんやりとしていた。
さようなら、特急「はくたか」。