さてこちらの写真は、阪急のデイ100に対抗すべく1934年に国鉄の京阪神間に投入された、ご存じ関西急電の祖、クモハ43の飯田線での最晩年の姿です。
ところで、この写真は赤変褪色したラッシュフィルムをコニカ-ミノルタのフィルムスキャナ純正ドライバで自動補正して読み込んだものですが、読み込んだオリジナルの状態は以下の状態でした。このような冴えない写真を、拙作の汎用色チャンネルマスク作成ツールを使ってどのように復元するかというサンプルとして、以下補正過程を提示します。
一見して彩度が極めて低く冴えない状態なのが分かります。なお色数はadobeRGBベースで測定しGIMPの色立体分析機能を使って測定していますが、固有の色数を調べてみると、68万色余りしかありません(この色数は、オリジナルサイズである、約7500 x 5000ピクセルでの数です)。
そこで、RawTherapeeでRGB計測をしてみると以上のような状態です。結局RGB値が接近しているため冴えず、色数も少ないということが分かります。従ってこれをもうちょっとましにするには、R, G, Bの各値を引き離し、色の多様性を増やすという補正が必要なことが分かります。
そこで、まず電車のブルーの補正を考えます。汎用色チャンネルマスク作成ツールで以下のようなB透過マスク原稿画像を作成します。
これを編集して、電車の青の部分だけ透過させたマスクを作ります。
このマスクをかけたレイヤーのB値をトーンカーブで上昇させます。またG値も若干上げました。
次に植物の緑を改善します。再び汎用色チャンネルマスク作成ツールを使いG透過画像を作り、そこから電車部分を塗りつぶしたマスクを作ります。
トーンカーブでG値、R値を引き上げるとともに、B値を大きく引き下げます。これにより、G, RとBの値の差を拡大します。
最後に線路などの鉄錆部分の褐色を改善するためにR透過マスクを作成します。
このマスクは編集せずに使いました。これにより褐色を改善するために、RとGを下記のように引き上げます。GはRより控えめです。
以上の補正レイヤーを下からオリジナル、R補正、G補正、B補正の順に並べて統合し、TIFFファイルとして出力します。
この時点で40万色ほど増えました。これをRawTherapeeに読み込みさらに調整を加えます。まず露出を補正しました。さらにLab調整の輝度のトーンカーブ補正を行います。ごく弱いS字カーブ補正をかけます。通常のトーンカーブ補正ではなくLab調整を使うのは、コントラストや明度の変化による色相の移動を避けるためです。
ホワイトバランス調整はやろうと思ったのですが、やらないほうが良かったので取りやめました。
逆に色数が減ってしまいました。さらにもうちょっと何かないかということで霞除去を弱く掛けました。当初は[自然な彩度]で再度を上げようと思ったのですが、色相が変化するようなので、霞除去に切り替えました。
この結果が一番上の写真で、色数は当初の2倍近くには増えました。やみくもに彩度上昇をかけるより良い結果が得られていると思います。因みにオリジナルにただRawTherapeeの自然な彩度モジュールで彩度上昇を掛けると下記のようになります。
RawTherapeeの自然な彩度モジュールがどのようなアルゴリズムなのかは分かりませんが、一般的に彩度を上昇させるということは、R, G, Bの差を広げるということです。従って、一律に彩度を上げるということは、一律にR, G, B間の差を広げるということになります。しかし、画像の場所によって広げるべきところと、広げるべきでないところがあるのではないでしょうか。また広げるべき幅も場所によって異なると思います。ここで紹介している方法だと、それを局所ごとにコントロールできるというメリットがあります。また色相も必要に応じて局所ごとにコントロールすることができます。
参考までに補正した画像のRGB値を計測した結果を示します。
ただ、RawTherapeeでコントラストを増やすとGIMPで補正した結果より色数が減ってしまいます。そのあたりが課題として残ってしまいました。
ともあれ、R,G,B間の差が少なくなって色が冴えなくなった画像の改善方法として参考になれば幸いです。