(※2015年3月、北陸新幹線開業の直前に、新潟県のほくほく線を走る特急「はくたか」にお別れ乗車した時の記事を加筆修正して再掲載します)
北陸新幹線開業と特急「はくたか」、「北越」の廃止など、2015年3月ダイヤ改正がいよいよ目前に迫ってきた。3月になってからバタバタと駆け巡るのは避けようと、昨年12月から1月初めにかけて、北陸本線と信越本線で廃止される列車にお別れ乗車をしてきた。廃止される列車への惜別の気持ちは何回訪ねても気がすむものではなく、また行きたいと思うこともあるが、そうかといって何度も通い続けていてはキリがないし、ダイヤ改正前にもう一度訪ねて、それでおしまいにしようと思っていた。
3月1日、日曜日。高崎発12時22分発水上行きに乗った。この日に出かけたのは特別な理由はない。単に自分の休暇であり、大雪でダイヤが乱れそうにないからで、昼過ぎのやや遅い列車に乗ったのは、夜勤残業の疲れで早起きが出来なかったからである。
水上で長岡行きに乗り換え、越後湯沢着14時17分。
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越後湯沢駅の1番線に、14時39分発、特急「はくたか14号」が発車を待っていた。681系9両編成。白い車体は雪解け水や雨しぶきで汚れが目立ちやすく、黄ばんで見えることもあるが、この編成は洗車したばかりなのだろうか、とてもきれいだった。
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先頭車両を見ると塗装が所々剥がれている。遠目にはきれいに見える車体も近寄ってつぶさに観察すると、だいぶ使い込んでいる車両であることがわかる。豪雪地帯と日本海沿いの厳しい気象条件の下を走り続けてきた証しでもある。
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越後湯沢駅の乗車案内札。2週間後には取り外されているだろう。
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「はくたか」が発着する1番線ホーム。臨時列車を除き、「はくたか」はすべて1番線から発着する。もともと1番線は上越線の下り本線だが、新幹線改札にいちばん近いため、このホームが「はくたか」専用になっている。
ちなみにこの日の「はくたか14号」は車体の帯の色が、青と黄色だった。1997年のデビュー以来、「はくたか」はずいぶん見てきたが、この色の編成を見たのは初めてだ。681系の全編成の事までわからないが、青と黄色の帯は北陸本線の「サンダーバード」や「しらさぎ」の編成ではないかと思う。「はくたか」もJR西日本の車両だから、何かの都合で混在するのだろうか。
撮影を一通り済ませ、接続する新幹線が到着する前に6号車自由席に乗り込み、進行右手の窓側の席に坐る。9両のうち、自由席は6号車と7号車の2両しかない。やがて新幹線からの乗り換え客が続々と車内に乗り込んできて、たちまち満席になった。
「はくたか14号」は越後湯沢を定刻に発車。次の石打までは下り勾配が続き、カーブも連続する。床下からモーター音が響いてくるが、加速する時の音とは明らかに違い、速度を抑制しているのがわかる。自動車でいえば、長い下り坂でエンジンブレーキをかけながら下って行くような感覚だろう。
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線路の両側には除雪された雪の壁が延々と続く。高々と積もった雪を見ると、まだ春は遠いと思う。だが、3月になり幾分寒さが緩み、レールの雪は解けて路盤が見えている。前回1月10日に上越線に乗った時は最も雪が多かった。あの頃はレールの表面も見えないほど雪に覆われていた。
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石打駅の手前で「はくたか13号」とすれ違う。「はくたか」の車体と同じくらい雪の壁が高い。
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石打の次、大沢を通過。ホームにも雪の壁が出来ている。この駅では「はくたか」を何度も撮影した。
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次の上越国際スキー場前でもよく撮影した。ここは構図の自由度が高く、アウトカーブのハイアングルをはじめ、編成写真も正面アップなどいろいろな角度から撮影可能で、しかも上下列車とも狙えるのだからお気に入りの場所だった。大沢駅とともに、2008年1月には4回も撮影した。雪が降り続く中で夢中で撮影したのも今ではいい思い出だ。
南魚沼の雪原を快走してきた「はくたか14号」は六日町の手前で減速し、ポイントを渡って六日町を通過。上越線と別れ、ほくほく線に入る。「はくたか」に乗るのは今回で3回目だが、前2回は越後湯沢発9時台の「はくたか4号」で、六日町と十日町に停車した。さらに時刻表には表示されていないが、六日町を出て赤倉トンネル内の信号場で「はくたか3号」と交換のためいったん停車した。つまり、「はくたか4号」はほくほく線内で3回も停車する遅いタイプで、越後湯沢-直江津間の所要時間は55分。それに比べ、いま乗っている「はくたか14号」は直江津まですべて通過し46分。これははくたか全列車の中でも速いタイプになる。「はくたか」の最後の乗車で、最も高速列車らしい走りっぷりを見せる列車に乗ったことになる。
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十日町の次、まつだいでも何度か撮影した。まつだい駅は1線スルー方式の構内配線で、待避線側のホームから通過線を高速で走り去ってゆく「はくたか」を狙った。まつだい駅には高速進行を示す青2色の信号や、最高速度160km/hの表示があり、高速鉄道らしい雰囲気があった。
高速鉄道らしいといえば、「はくたか」がポイントを通過する時の音も独特だ。一般的に在来線の列車が分岐器を通過する時は、ガタン、ゴトンと騒音が極めてうるさくなる。車内にいてもポイントを通過する時は床下からガタンゴトンがけたたましく響いてくる。それに対し、ほくほく線の分岐器は新幹線と同様のタイプで、レールの欠損がない。まつだいの他、虫川大杉、くびき、それにトンネル内の信号所を通過する時も、「はくたか」はポイントを通過しているのか判別できないほど滑らかに走行してゆく。
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トンネルの連続するほくほく線も、くびきを通過すると一転して広大な頸城平野が車窓に広がる。山里では多かった雪も平地にくるとすっかりなくなっていた。くびきを通過したところで「これより先は携帯電話など通信機器類の電波が届きます」と車内放送があった。
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犀潟で信越本線と合流し、直江津着15時25分。
このまま金沢まで乗っていたいと思わせるほど、「はくたか」の乗り心地は快適だった。
(続く)