日常輸送を見直すなら観光列車も見直さないと | 鉄道きさらんど

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いつも列車・バスなど公共交通の事ばっか考えてます。

 

 

旅行などの外出自粛の嵐が吹き荒れた中、鉄道会社の決算を見ると地域輸送ありきの民鉄では意外と踏みとどまっている会社も結構あるが県またぎの出張やイベント参加や観光などの移動、インバウンド需要を当てにしてきて、そういう目的で使われる新幹線や特急や観光開発で稼ぐビジネスモデルを採ってきたJR旅客会社各社の苦戦ぶりはひどい。

 

 

JR本州3社は会社の規模が大きいから赤字額は凄いがその中でもただでさえ企業体力が東日本や東海より脆弱な西日本は秋に独自のダイヤ改正(改悪?)をして在来線の地域輸送列車を大幅に刈り込む。全線一律にではないが、「ご利用の減少率が大きい昼間時間帯を中心に、列車本数とご利用状況の乖離が大きい区間」があり、大阪圏でも並行私鉄に逸走しているような線区は削減対象で、さらに影響が大きいのが都市部から離れたローカル線の削減対象候補の路線である。

 

福井は地元紙が小浜線・越美北線を大幅減便すると報じているが越美北線の減便でSNSが騒然としている。

 

 

「越美北線の減便の検討対象は、福井―越前大野間の18本のうち乗客数が少ない12本と越前大野―九頭竜湖間の全9本で、全体の8割近くに相当する。確定ではなく、効率的な車両運用などを検討」するということなので候補に挙がった列車がすべて廃止されるというわけでもなさそうだが早とちりして越美北線の末端区間は廃止にはならなくても全く列車の設定がない開店休業状態、つまり実質的な運行休止になると思う人もいる。さすがにそうはならないにせよ廃線間際の札沼線非電化区間のように極端に少ない本数にはなりそうではある。

 

これについて、誰のせいでもないコロナ自粛の影響を受けていて民間企業だから赤字路線を削減するというのは当然という人もいるだろう。ローカル線減便や廃止などをすると脊髄反射的に公共性を盾にして反発する人がいて、ネットなどではそういう人にさらに反発する人もいる。しかし鉄道会社自体が固定資産税減免や許認可を受けて地域独占の業態であり、更に国鉄破綻から再出発したJRの場合長期債務は旧国鉄清算事業団やJRが負担して返した分もあるが全体の一部で、利用者や沿線住民だけでなく、JRに乗らない人、JRの線路が通ってない人も含めて全国民に債務の負担が付け替えられたことを考えるといまでも国民の負担や協力で初めて成り立つ存在。単に儲からないから…というソロバン勘定による企業の論理を一方的に主張するだけとはいかないだろう。

 

で、この社長会見の次の日にJR西日本は新コンセプトの観光列車(新造ではなく既存車両の改造車だが)を来年投入するというリリースを出している。ローカル線のなかでも地域輸送列車の赤字幅と今回の観光列車の投入費用を比較できないからローカル列車を大減便するなら

観光列車を走らせるなとは言えないとは言え、さすがにこのタイミングでのリリースは沿線の住民感情を逆なでしかねないかもしれない。本当に経営が苦しいならお遊び的な列車を新しく用意して走らせるどころではなさそうと思うのが世間一般の発想だろうし。

 

まだ去年はJR西に限らずコロナ自粛以前に予定通りオリパラが開催されインバウンド特需の恩恵に浴する前提で一昨年以前から計画していた観光列車や観光バスや観光船の導入、ホテルの開業がコロナ自粛の以降も事業をやめられず続々とつづいたがさすがにインバウンドや団体旅行などがかなりの期間もどらないのが明白になった今地域輸送そっちのけで新しい観光列車の導入はどうか。

 

それこそ社長会見で「この非常に厳しい状況は(中略)コロナ前の水準には戻らないと考えています」という前提でローカル列車大削減をぶち上げるなら人の移動を前提にする商売、つまり観光も元に戻らないという前提で観光列車もシビアに存在意義を見直すべきなのに。

 

 

まぁ、もともとこの会社は豪華列車を導入する一方で一昨年に終電繰り上げをぶち上げていて日常輸送よりお遊びの輸送優先だった。コロナ禍を経ても改まらないのは呆れてしまうが。