みなさんこんにちは。ガサキ鉄道です。
今回は電車のモーターの種類、特徴、歴史を扱います。
※今回は写真なしです。
交流モーターと直流モーターの違い
交流モーターは交流電流、直流モーターは直流電流が流れるモーターのことです。交流はプラスとマイナスが決まっておらず1秒間で何千回も電流の向きが変わります。放電しにくいことから今では家庭のコンセントに流れて、標準になっています。一方の直流は、小学校で習うプラス極とマイナス極が決まっているものです。使われることは少ないです。しかし、再生可能エネルギーを利用すらり場合は、電力変換の無駄がなく、効率的です。
鉄道に供給される電流は直流が多いですが、地域によっては交流の区間もあります。両地域を跨ぐ列車は特殊な設備が必要です。
直流モーターから交流モーターへ
かつては電線が直流か交流かに関わらず、直流モーターが使われていました。電線が交流の地域(九州、北陸、東北、北海道など)では、コンバータというもので交流を直流に変換していました。
通常は直巻き式モーター、界磁チョッパ制御では複巻式モーター(東急8000系で初採用)でした。制御方式についてはあまり関係ないので気になった方は別のサイトを見てください。
しかし、直流モーターは、整流子とブラシという部品があり、整備が大変になる原因でした。そこで、整流子がない交流モーター(交流整流子モーター除く)が検討されるようになりました。
ところが、交流モーターは直流から交流に変換して使うため、電圧の制御が大変難しかったのです。
そこで、VVVFインバータ(可変電圧可変周波数)制御が開発されました。
これは、半導体でできたスイッチング素子とインバーターでできており、パズル変調をする点では従来のチョッパ制御と同じです。スイッチング素子は、高速(1秒間に何千回も)でオンオフを繰り返すスイッチのことで、オンになっている時間とそうでない時間の幅を変えることで平均的な電圧を制御するものです。
そして1986年に、東急9000系で交流モーターが初採用されました。この時採用されたのは、誘導モーター(かご型三相誘導電動機)です。
誘導モーターと同期モーター
整流子のない交流モーターは、同期モーターと誘導モーターに分けられます。
同期モーターは、回転子が電磁石のため、回転子に直流電流を流すスリップリングという部品がありました。しかし誘導モーターは、それがなく完全に非接触のため採用されました。
誘導モーターは、三相交流で流れます。これは、三本の線で流れる電気で、3分の1周期ずつ最大電圧になる時間がずれます。そして、筒の内側に120度ずつ固定コイルを置いて、それぞれに流すと最大電圧になる時間がずれて、磁力が回転したようになります。それに筒の中心にある回転子が吸い寄せられて回転します。
※家庭のコンセントは単相交流です
しかし、誘導モーターは、インバーター(架線から流れてくる直流電力を交流電力に変換する装置)が大型化するというデメリットがありました。ですがそれは素子の改良で解決しました。
以降誘導モーターの車両は急増し、2002年の253系以降直流モーターの車両は製造されなくなりました。
一方で同期モーターも改善が進み、回転子を永久磁石にして接触部を無くした永久磁石同期電動機(PMSM)が生まれました。種類は埋込磁石構造(IPMSM)というものです。
より強力なモーターであることから、2002年に東芝が開発したものがJR東日本の試験車両E993系(ACトレイン)に採用されました。その後2006年に京葉線のE331系で実用化し、2010年には東京メトロ千代田線の16000系に採用されました。JRはその後E331系の開発に失敗し(故障が頻発したため量産されず短命廃車)、以降は私鉄で広がっていきました。
全閉構造
さらに2000年からPMSMの全閉構造が研究され、2010年に東京メトロ16000系がを採用しました。全閉構造は、従来の外気冷却をやめ、熱交換冷却することで内部の汚れがなくなります。これによりなんと製造から廃車まで一度も内部清掃をする必要がありません。回転子を抜かずに軸受を交換し、分解せずに給油するリフレッシュ方式も実現しました。
その後、誘導モーターでもこの技術は可能になりました。
2002年、全閉外扇型モーターが東芝から開発されました。こちらも利点がたくさんありますが、出力はPMSMには劣ります。はじめに2006年に西日本鉄道3000系で採用され、2015年にはJR東日本E235系にも採用されました。
次に、PMSMの欠点についてです。PMSMは構造上モーター1台ごとに独立したパワーユニットが必要になります。それにより、VVVFが高価になります。
そのため、最新型の制御装置「フルSic-Mosfet素子」のVVVFの搭載を見送り、ひと世代前の技術「IGBT」素子を採用した場合が多いです。しかし素材は2012年からハイブリッドSic(ダイオードのみSic、トランジスタは従来のSi)になり、また4in1(1つの冷却装置に4つのインバーターをつける)システムも採用され、進化していました。
※Sic=炭化ケイ素、Si=ケイ素(シリコン)
しかし、2021年に東京メトロ17000系はフルSic+PMSMという組み合わせを実現しました。
6極モーター
従来の4極よりコイル数を増やした誘導モーターです。これにより、出力を増やすことができました。しかしその分高速なスイッチングが要求されますが、最新の「フルSic-Mosfet素子」により実現しました。
これは、2021年にJR東海のN700Sで採用されました。
いかがでしたか。このブログでは今後鉄道についていろいろ話していきます。
参考
電車のメカニズム ブルーバックス
鉄道の科学 ブルーバックス
東急今昔物語 戎光祥出版
鉄道ファン
鉄道ジャーナル
東芝プレスリリース
三菱電機プレスリリース
JR東日本プレスリリース
Wikipedia
東洋経済ネット