旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

この1枚から 白プレのEF65 1094・移籍してきたカマ【1】

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 数ある国鉄形電機の中で、どのカマが一番お好きでしょうか?

 こんな質問を投げかけられると、「国宝級」とまで言われているEF66 27号機を上げられる方がおおいかと思われます。確かに、国鉄直流電機の中でも最強と謳われたEF66の中にあって、0番代で唯一2021年現在も生き残っているのは27号機だけです。それ故に、非常に人気の高いカマになっているのは間違いないでしょう。

 なぜ27号機だけが残されたのか。その理由は諸説あるので、ここでは断定的なお話はできませんが、旧式化した車両は補修用の部品の確保もままならなくなるので、古くなればなるほど維持管理が難しくなってしまいます。幸いかな、EF66にはほぼ共通設計で部品も共有できる100番代があるので、極端に部品がなくなることはあまりないようですが、これだけ古い機関車を維持し続けるのはやはり苦労も相当なものです。所属する吹田機関区の検修陣の技術力の高さが、27号機を今なお走らせ続けているのはその証左と言えます。

 話はそれてしまいましたが、筆者が好きなカマと言われれば、どれもこれもが思い入れがあるので挙げることに迷ってしまいますが、強いて言えば交流機のED76でしょう。いずれ別の機会にお話をしますが、ED76は直流機のように自動進段で制御するのではなく、昔ながらの単位スイッチのように細かく刻まれたノッチを、機関士が主電動機に流れる電流の状態を見ながら進めていくので、これぞ巨大な機械の塊を動かしているという感じがすきな理由の一つです。

 もう一つの理由は、やはり生まれてはじめて電気機関車というものに、直に触れることができたからでしょう。鉄道マンになって、研修とはいえ小倉車両所に配置になり、全検で入場してきたのが真っ赤なED76でしたが、指導担当の先輩と一緒になって足回りに取り付けられている割りピンを外すなど、汗と油にまみれながらも鉄道車両に触れた印象はとても大きいものがありました。

 一方で、当時はあまり関しを寄せなかったカマもあります。

 EF65がそれで、別にEF65が悪いカマだというのではなく、直流区間であまりにも当たり前に見かけることが多かったので、一種の普段から見慣れた風景の一つとしか捉えられなかったのです。もちろん、細かく見ていくとEF65も数々の魅力を備えた機関車なのですが、あまりにも数が多かったのために、筆者が鉄道マンとして鉄道の現場にいた頃はとにかく見慣れすぎたためか、大して関心を持たなかっただけなのかもしれません。

 そのEF65も、時の流れとともにその数を徐々に減らしていってます。1987年の国鉄分割民営化のときには、旅客と貨物あわせて296両ものEF65が継承されました。これは、電気機関車の1形式としては最大の数で、それだけEF65が直流電機の中でも「標準機」として位置づけられていたことがよくわかります。とりわけ、機関車が主体となるJR貨物には 両のEF65が継承されたことからも、使い勝手の良い万能機であることが伺えるでしょう。

 既にご承知のように、0番代と500番代という非貫通のEF65は淘汰されてしまい、1000番代PF形もPS17パンタグラフを装備した初期型、さらに非ブロックナンバー装備の中期型は廃車となってしまって今日では見ることができません。残った後期型も、後継となるEF210が増備されるたびに御役御免となり、徐々に廃車されてきています。

 さて、その数あるJR貨物EF65も、分割民営化から30年以上が経つと様々な形で変化がありました。例えば、新型機の増備は国鉄時代のように一気に何十両というわけにもいかず、年に数両というのが限度になっています。これは、国鉄時代は必要とあらば借金をしてまでも車両の増備をしていましたが、民営化後はそのような強引な方法を採ることができません。そんなことをしてしまえば、ただでさえ財政基盤が脆弱なJR貨物にとって、命取りともなりかねないことになってしまいます。借金をするということは、債務を増やすということなので、毎年赤字決算を続けてきた会社が債務を増やしてしまえば、たちまち会社は立ち行かなくなり、監査を担う会計検査院から厳しい追求を受ける羽目になるでしょう。

 そこで、手持ちの機関車を長く使い続ける必要があったため、今後、長い間運用し続けることを前提に、主電動機のコイルの巻き直しや、配管や電気配線をすべて交換することで、運用できる寿命を伸ばす「更新工事」を施しました。その更新工事の施工を受けたEF65は、従来の青15号とクリーム色2号の塗装から、EF66 100番代で採用されたライトパープルと濃淡ブルーに塗られました。また、貨物列車の在車位置を把握するために、GPS装置を一時は取り付けられています。更に細かいところでは、保安装置を最新式の機器が設置されたため、JR貨物の機関車にはATS-Snに対応するATS-SFを装備しました。また、一部の路線ではATS-SnではなくATS-Pへの更新され、これに対応するATS−PFの追設など、様々な変化を遂げています。

 今回ご紹介する1094号機もまた、時代の流れに翻弄されたと言っても過言ではない1両だと思います。

 

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 EF65 1094号機は、昭和52年度第1次債務車の1両として製作された第7次車です。増備の目的は、紀勢本線電化開業と旧型電機の置換え用としてでしたが、実際には500番代P形の置換え用でした。そのため、第7次車のうち21両がブルトレ牽引を受け持つ東京機関区に新製配置され、1094号機を含む4両が下関運転所に、そして2両が新鶴見機関区に配置されました。

 下関運転所に新製配置された1094号機は、主に東京機関区配置のEF65が台車検査の施行時に、その代走という形で東京ー九州間のブルトレ運用に就いていた500番代P形を置換えました。これは、東京ー九州間のブルトレ運用が東京機関区の受け持ちであったことと、台車検査を施工すると東京区配置のEF65だけでは数が足りず運用が賄えないため、西の要衝である下関所に配置のEF65をその予備機として充てるために、一部京阪神ー九州間のブルトレ運用にEF58を充てることで、東京区の500番代P型を下関所に配転することで行っていた運用でした。また、東京区のEF65はその運用の性質から常に長距離走行をこなしていたため、台車検査を所属する区所ではなく予備機としての運用を持っていた下関所で受けていたことも、本来の運用受持をする東京区ではなく下関所のEF65が代走していたのでした。

  

《次回へつづく》

 

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