[ 国立公園鉄道の探索 ]
熊本城遠望
国立公園を走る鉄道の探索などしておりますと、大都市は通過するだけ、ということが多くなってしまいます。
ただ、その県を代表する都市の中には、風景が素晴らしいところも多々あります。
熊本市はまさにそんな都市の一つです。
しかも、ここには「展望台好き」を喜ばせる展望スペースが市の中心部に開放されています。
さらにそこは交通の便も抜群によいのです。
この3月、熊本空港から熊本市を経由して島原へ向かう途中の僅かな時間を利用してその「展望スペース」に立ち寄りました。
白色と黒色の対照が鮮やかな熊本城天守閣が、麗らかな陽光のもと冴えわたっておりました。
城内に数多く繁茂する緑樹、背後の山々が醸し出す庭園のような風景の中に天守閣が聳え立っていました。
この展望スペースは熊本市役所14階にあります。
熊本市電の「熊本城・市役所前停留所」から、車道を渡ってすぐのところに市役所があります。
熊本空港から「空港ライナー」て゜肥後大津駅まで運んでもらい、豊肥本線で新水前寺駅まで進み、そこで市電に乗り換えてやってきました。
熊本市電はA、B2系統で運行されています。新水前寺~熊本城・市役所前間はどちらに乗っても大丈夫です。
但し、そこは混雑することも多い区間です。
市電が走る通りからは、熊本城壁が迫って見えます。
通りに面したところに熊本市役所があります。これから14階の展望スペースまで上がってみます。日曜でも開放されていました。
真下を眺めおろしてみました。市電の軌道はここで通りに沿って急カーブします。
2016年の4月の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城天守閣は、熊本市により「復興のシンボル」として復旧工事が進められてきました。
2021年4月26日に修復工事は完了。一般公開される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、公開は延期されたようです。
熊本日日新聞の記事(2021.4.26)は、「本格復旧という意味では長い道のりが始まったばかり」と伝えています。
「1607年の築城当時から残る櫓など城内に13棟ある国重要文化財の復旧は、先行して工事を終えた長塀以外はこれからとなる・・・・・
国特別史跡である熊本城文化財的価値を担保するにはこれからの復旧がかかせない。
市が目標とする2037年度までに全てを被災前の状態に確実に戻し、その価値を守ることが肝要」
との指摘がなされていました。
こちらの写真は、2017年4月16日に、同じく市役所14階から撮影したものです。
熊本地震の本震(2016年4月16日)とされる二度目の震度7の地震が起きた日から一年目にあたります。
天守閣の屋根は地震により大半が崩れ落ちるなど、大きな被害がありましたが急ピッチで復旧工事が進んでいる様子がわかりました。
この日は、熊本市内で用件があったため、この後熊本城の周囲を歩いてみました。
緑色の「鉄の腕」で支えられているのは「飯田丸五階櫓」です。
倒壊防止の緊急工事、大掛かりな作業なので圧倒されました。
南東角の一筋の石垣だけで持ちこたえたので「奇跡の一本石垣」とも呼ばれました。
この飯田丸五階櫓は、西南戦争前に、老朽化した既設の櫓が陸軍により破却されました。そして、2005(平成17)年に木造復元されました。
石垣の復旧工事のため、櫓の曳家(ひきや)も一時検討されましたが、被災状況からそれが難しいと判断され、今は一旦解体保管されているようです。
城壁側に移動して櫓を眺めてみました。木々の合間から傾くこともなく佇立している様子が眺められました。
こちらは、熊本城本丸の南側の入口近くにある「馬具櫓」です。こちらも2017年4月16日の画像です。
この石垣は、熊本地震の前震、本震の時に、歪み、変形が生じ、その後の2016年5月10日に発生した余震、この揺れは震度2程度であったのですが、この時に崩壊したそうです。
この日私が訪ねた熊本市内の公共施設は、外観的には全く被害がなく(内部の設備は大きな影響を受けたのですが)、その周囲の建物もほとんど被害らしい様子はありませんでした。結果的に、年月が重ねられた熊本城内、特に石垣が崩れた場所で地震の破壊力を見せつけられることになりました。
2021年の画像に戻ります。市役所14階の展望スペースを発ち、市電で熊本駅まで移動しました。
熊本地震の発生の後、路面の点検などを終えた市電は、比較的短期間で運転再開されました。