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2021年5月5日、阪急神戸線の六甲駅で発生した『六甲事故』から37年の節目を迎えました。
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事故の当事者である阪急2050編成の中間車2両(c#2000・c#2051)は還暦を迎え、今日も元気に走っています。



【事故から37年、「列車防護無線」がようやく登場】
阪急電鉄・山陽電鉄では列車事故が発生した時に対向列車・後続列車に危険を知らせるために、
「駅非常通報装置」「踏切非常通報装置」「列車無線」「業務用携帯電話」「手旗・信号炎管又はカンテラ」
を使用してきました。

[各設備の利点と欠点]
・駅および踏切の非常通報装置

固定式の設備である「駅・踏切非常通報装置」は、9D82D268-5208-4A30-A7F2-CBF27685F461
踏切・駅ホーム・遠隔監視センターにある発報装置を操作することにより、『特殊発光信号機』を点灯させることで後続列車・対向列車に危険を知らせます。阪急電鉄では『特殊発光信号機』とATSが連動しているため目視・ATS信号の両方から非常ブレーキの操作を促すことで列車の安全を確保することができます。
その一方で、この設備は駅や踏切にしか設置されていないため、踏切のない駅間や高架橋・鉄橋などにはそのような設備が設置されていないため使用することができません。


・列車無線、業務用携帯電話
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『列車無線』『業務用携帯電話』は事故の発生を運行指令室((阪急)〇〇線指令)に直接知らせることで対向列車・後続列車への停止指示を送ってもら方法です。
運行指令室を経由することにより警察・消防への通報を列車指令室から行うことができるため、消防・警察の通報を乗務員が行う手間を省くことが出来ますが、「乗務員からの一報→指令室からの停止信号→対向・後続列車の乗務員が受報」という経路を経る必要があるため実際に列車が止まるまでに時間を要します。

・手旗や信号炎管、カンテラによる直接的な列車防護手段
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手旗・信号炎管・カンテラは列車乗務員が乗務員室や胴乱に常備されている手旗・信号炎管・カンテラを使用し直接危険を知らせる方法です。この方法は現場にいる乗務員が直接列車に危険を知らせることができる従来からある方法であり、『六甲事故』の時には接近してくる対向列車に対し事故当該列車(阪急車)の運転士はこの方法を用いて危険を知らせました。

そして2020年9月、阪急電鉄と山陽電鉄では新たに『列車防護無線』のシステムが整備されました。

【阪急・山陽における「列車防護無線」】
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阪急電鉄と山陽電鉄、能勢電鉄、堺筋線の車両には列車無線設備とともに「列車防護無線」と呼ばれる設備を設置し、運転台・列車無線機にある『発報』ボタンを操作することで発報した車両を中心とする周囲の列車に対して非常ブレーキの操作を促す警報信号(音声信号)を動作させるものです。現行型の発信機は阪急宝塚線で「能勢電鉄乗入れ対応車両」と「5100系以後の能勢電鉄所属車両」に整備されていたものと同じタイプのものとなっており、阪急所属車両では「阪急-能勢(所属路線に関わらず同じ仕様)」、山陽所属車両では「阪神・山陽-阪急」の周波数切替機能(周波数切替は列車無線の社局間切替スイッチと連動)を備えています。また、このシステムは列車無線と同様に電源回路が別系統からも供給可能な構造(防護無線専用の蓄電池が併設されている)となっており、脱線や停電により通常の電源(架線・補助電源(MG・SIV)から供給される電源)が絶たれた状況下でも使用することができます。
※能勢電鉄では無線機一体型の防護無線を装備していた編成についても2020年7月までに阪急防護無線対応型の仕様に更新されています。
※堺筋線では元から(阪急所属車を含む)「非常」のボタンが無線機についており堺筋線内における列車防護無線の発信機を兼ねていますが、大阪メトロ所属車両が阪急線内でどのように防護無線を使用しているかについては確認できていません。


2020年11月に六甲事故の現場のすぐ近く(現場である「六甲道踏切」の隣の踏切)で発生した踏切障害・列車脱線事故では事故の当該編成(阪急8000系)が実際にこの「列車防護無線」を使用し、接近する対向列車・後続列車に対する列車防護をおこなったことが確認されています。

[阪急・能勢・山陽・堺筋の各無線系統別にみた路線図]
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乗務員の訓練や保安システムの進歩、安全に列車を運行するために欠かせないシステムの研究は今も続いています。

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http://blog.livedoor.jp/uppi_natettyan/archives/22094005.html

鉄道コム 
【解説:六甲事故】
1984年5月5日に阪急六甲駅構内で発生した列車衝突事故、六甲駅を通過中の高速神戸駅発梅田行きの特急列車(阪急2000系8両編成)に六甲駅発御影待避線行きの回送列車(山陽3050系4両編成)が衝突、山陽車側の4両と阪急側の前3両が脱線、72名が負傷した。山陽車側の運転士(山陽側からの直通列車は阪急線内でも運転する、逆も同じ)がATSを無断で切り、車掌の合図・出発信号機の現示を無視して発車したことが原因であった。この事故で阪急側のc#2050が廃車となり、c#2154が冷房化・改番の上で2代目c#2050を名乗ることとなった。c#2050(2代目)がのちに能勢電鉄1754編成となったことにより、c#1754(c#2154→c#2050)は阪急2100系に由来する唯一の現役車両(営業線上にいる車両としては)となっています。

現在も現役にある車両は、
・山陽3064編成(山陽側の当事車:c#3507を除いた3両が現役)
・阪急2050編成(阪急側の当事車:c#2000とc#2051が能勢電鉄1754編成の中間車として現役)
・阪急c#4050(阪急側の救援列車:車籍は有していないが現在も西宮車庫に配置)
・阪急2068編成(阪急側の救援列車の牽引車:現在の能勢電鉄1756編成(c#1786のぞく))
の合計9両です。