旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

兵どもが夢の跡 廃線後の輸送を担う碓氷線【2】

広告

〈前回からの続き〉

blog.railroad-traveler.info

  

 国鉄バスをルーツに持つJRのバス。実のところ、首都圏の都市部に生まれ育った筆者にとっては、あまり縁のない存在でした。ドライブや旅行などで東名高速道路を運転していると、東京と名古屋や大阪を結ぶハイウェイバスを見かけますが、やはり乗る機会は皆無でした。

 このツバメを描いたバスに初めて乗ったのは、今から10年ほど前に、旅行で草津温泉に行ったときのこと。行きは横川駅からJRバス関東の碓氷線に、帰りは草津温泉駅から軽井沢駅へ志賀草津高原線に乗ったのでした。はじめは「JRのバス」ということで少々興奮したものでしたが、実際に乗ってみると地元で乗るバスとあまり変わりがなかった印象でした。少しだけ「ああ、やっぱり国鉄から受け継いでいるんだ」と感じたのは、碓氷線は鉄道代行の性格が強く、横川駅から軽井沢駅まで途中にバス停がなく、直行で結ばれていたことでしょうか。

 帰路の志賀草津高原線は、やはり草津温泉駅でしょう。「駅」となっていますが、ここには鉄道線路はなく、街の中にある小規模なバスターミナルといった感じです。それでも「駅」を名乗っているのは、国鉄やJRにとって自動車線は鉄道を代替する路線なので、鉄道駅に準じた扱いをするために自動車駅という位置づけになっているのです。そして、この草津温泉駅には鉄道がないのにもかかわらず、「みどりの窓口」が設けられて全国のJR線の乗車券や特急券なども販売しているのです。こうしたあたりは、やはりJRの「駅」ならではだといえます。

 ところでタイトルにもある「碓氷線」。

 信越本線の部分廃止後、バス輸送に代替になったことで新設された路線ですが、今日では1日に7往復しか運転されていません。運行経路も、鉄道にほぼ近い旧道ではなく、比較的線形が緩やかな碓氷バイパスを経由しています。碓氷バイパスは「碓氷」の名を冠していますが、実際には碓氷峠ではなく入山峠を経て軽井沢へと至る道路です。碓氷峠を経由する国道18号線は、184箇所もの急カーブが存在し、しかも急勾配が続く狭隘な道路なので、短時間で運行するには碓氷バイパスを利用するほうが合理的といえます。

 

f:id:norichika583:20210424184643j:plain

JR東日本の子会社であるJRバス関東によって、信越本線の廃止区間代行バスである碓氷線が開設された。一般の路線車とは別に、碓氷線専用としての車両も配置し運用も別になっている。写真は日野ブルーリボンシティの長尺車 KL-HU2PREA M537-00404(出典:Wikimedia Commons ©Mutimaro, CC BY-SA 3.0

 

 実際、筆者もレンタカーなどでどちらも運転したことがありますが、旧道はとにかく険しく、スピードも出せなかったのに対し、バイパスは旧道に比べると緩やかだったので、バス路線としてはバイパスのほうが運転しやすいといえます。もっとも、このバイパスもシーズンによっては車が集中してしまうために渋滞が発生しやすく、路線バス、特に碓氷線のような鉄道連絡を担うバスにとっては特に避けたいもので、その場合には旧道経由で運転されるとか。そして、遅れが発生したときには、バスの到着を列車が待っているという珍しい光景もあるそうです。こうしたあたりは、信越本線の廃止によってバス代行とし、そのバス自体に鉄道連絡という特殊な役割を担わせた碓氷線の性格をよく表していることといえるでしょう。

 新型コロナウィルスが猛威をふるい、緊急事態宣言が出ては解除されることが繰り返され、遠くへの外出も難しい昨今ですが、ウィルス感染の心配がなくなった日には、また訪れてみたいものです。

 今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

あわせてお読みいただきたい

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info