続・鹿島鉄道キハ600のジャンパ連結器

 鹿島鉄道のキハ600形のジャンパ連結器(車両の制御回路引通し線を接続するためのもの)に関して以前記しましたが、これに関してもうひとつ気になる点があります。

鹿島鉄道キハ600のジャンパ連結器

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写真1 キハ551のジャンパ連結器

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写真2 キハ614のジャンパ連結器

 写真1および写真2は関東鉄道の車両のジャンパ連結器で、一般的な構造です。すなわち乗務員室の床下に制御回路ツナギ箱があり、そこからまず床下のジャンパ栓受に制御回路が接続されています。栓受には、両端に栓(プラグ)を取付けたジャンパ線が挿入されています。隣の車両に接続する側の栓はそのままぶらぶらさせると損傷するので、車体に取付けた栓納めにはめ込んであります。

 ちなみにジャンパ栓受を車両の左右両側に取付けておけば、車両の向きが変わってもジャンパ連結器を接続することができます。写真1および写真2は片側にしかないので車両の向き逆転には対応できませんが、それでもジャンパ線が経年劣化しても簡単に交換できる(保守性が良い)という利点があります。

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写真3 キハ602のジャンパ連結器

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写真4 キハ602のジャンパ連結器

 一方、写真3および写真4は、鹿島鉄道キハ602のジャンパ連結器です。乗務員室の床下に弁当箱のような制御回路ツナギ箱があり、そこから2本の電線(ジャンパ線)が伸びているところまでは写真1および写真2と同じです。しかしその先はジャンパ栓受ではなく、そのままずーっとジャンパ線が続き、先端に取付けられたジャンパ栓が車体の栓納めにはめ込まれています。写真1および写真2でジャンパ栓受があるところには電線クリート(ふたつ割の絶縁体)があり、ジャンパ線が車体下部に固定されています。

 この構造だとジャンパ線は車体から取外すことはできません。経年劣化した場合は、クリートをゆるめてツナギ箱の端子からジャンパ線を外して交換…という面倒なことになります。

 なぜこのように保守性が悪い構造にしてあるのだろう…と思いましたが、よくよく考えるとこのあたりが地方私鉄の事情を物語っていることに気づきました。つまり、車両数が少ない地方私鉄の場合保守員はもともと最小限です(人件費は半ば固定費)。保守性重視の構造にしたところでそれ以上の人員削減効果はありません。したがって、保守員を増員しなくてよい範囲であれば、多少作業が増えたとしても問題ないわけです。このジャンパ連結器の例であれば、栓受-栓をなくして部品代が減る方が、組織全体としての経費節減になるということなのではないでしょうか。

 関東鉄道ぐらいの両数になってくると逆に、多少部品代が増えたとしても保守性向上による人件費節減効果の方が大きい…という判断ではないかと思われます。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…