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エトセトラ

2021.03.22

2020年10月1日に運行開始した東京BRT。前回の記事では東京BRTの概要や将来の計画などを紹介したが、今回東京BRTの車両たちを見てみよう。

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京成バス 1009号車・1003号車
2020.11.7/晴海BRTターミナル

▲晴海BRTターミナルで待機する東京BRTの車両たち。2020年10月に運行開始した東京BRTでは、3車種9台の車両が使用されている

東京BRTでは、運行開始より9台の車両を使用している。内訳は、トヨタSORA5台、いすゞエルガ3台、いすゞエルガデュオ1台。SORAとエルガが単車タイプで、エルガデュオが連節バスである。全部で9台という小所帯にもかかわらず3車種もあるバラエティに富んだ布陣となっており、趣味的には嬉しいところ。車両の所属はいずれも京成バス奥戸営業所東雲車庫となっている。

車両番号(社番)はメーカー等にかかわらず1001からの連番となっており、1009号車までが在籍している。ナンバープレートはそれぞれの車両の車両番号に合わせた希望ナンバーを取得しているが、車両の導入途中でご当地ナンバーの「江東」が登場したため、足立ナンバーの車両と江東ナンバーの車両が混在している。

塗装は京成バスの標準色ではなく、東京BRT専用のレインボーカラーが採用されている。前回の記事でご紹介した東京BRTのトータルデザインに基づくものだが、鮮やかなレインボーカラーはまさに都心と臨海地区を結ぶ虹の架け橋といった感じだ。

以下、各車種について見ていこう。

トヨタSORA ZBC-MUM1NAE 燃料電池バス
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京成バス 1002号車・1003号車
2020.11.7/晴海BRTターミナル

▲5台が在籍し、東京BRTの主力となっている燃料電池バス・トヨタSORA

東京BRTの主力車両となっているのがトヨタの燃料電池バスSORA(ZBC-MUM1NAE)である。京成バスと東京都が2016年4月に公表した東京BRTの事業計画1)によれば、車両については本格運行時に単車タイプの車両を全て燃料電池バスにするとのことなので、今後とも主力になるであろう車両である。

車両に搭載された燃料電池でつくられた電気によりモーターで走行する燃料電池バスの静粛性は抜群。排出するのは水だけであり、未来のバスを体現したかのような存在である。燃料電池バスの燃料となる水素は、中央区晴海の選手村付近にある東京晴海水素ステーションで補給している2)

5台あるSORAのうち、1001号車に自動正着制御システム3)が装備されている。国が中心となって進めているART(Advanced Rapid Transport)技術の実証的な導入によるもので、東京都と京成バスが結んだ東京BRTの運行にかかわる基本協定の中で盛り込まれていた内容でもある。

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京成バス 1004号車
2020.11.7/晴海BRTターミナル

▲晴海BRTバスターミナルのバス停では正着制御用の誘導線(緑色の破線)が引かれているほか、縁石はバスが正着しやすい形状のものが使用されている

東京BRTの正着制御は車載カメラが路面上の誘導線を検知して車両を自動で制御する方式を採用しており、晴海BRTターミナルの構内にはそのための誘導線が引かれているのを見ることができる。今のところ実験段階で営業運転には使用されていない模様だが、車いすでもベビーカーでも乗り降りしやすい交通機関を目指している東京BRTにとっては、将来的に必要な装備となろう。

いすゞエルガ 2PG-LV290Q3
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京成バス 1008号車
2020.11.7/中央区晴海

▲SORAとともに単車タイプとして3台導入されたいすゞエルガ2PG-LV290Q3。塗装のデザインをSORAとエルガデュオに合わせており、ブラックフェイスが印象的である

SORAを補完する格好で一般的なディーゼルタイプの車両も3台導入されている。車種はいすゞエルガ(2PG-LV290Q3)。江戸川営業所や市川営業所でも導入されている車種だが、中ドアに窓が増設されていたり前面に東京BRTのロゴが取り付けられていたりするなど、東京BRT専用の特別仕様になっている。

前述のとおり本格運行時には単車タイプの車両を全て燃料電池バスにするとしており、のっけからなんとも先行きがあやしい車両となっている。それなら最初から燃料電池バスで揃えておけばいいのにという気がしないでもないが、燃料電池バスはたいへん高価なので、予算などの大人の事情が垣間見える車両である。

いすゞエルガデュオ LX525Z1 連節バス
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京成バス 1009号車
2020.11.7/晴海BRTターミナル

▲1台が導入された連節バス・いすゞエルガデュオ。東京BRTが同車種の導入第1号になった

BRTの名にふさわしい存在として連節バスが1台導入された。車種は2019年5月に発売開始された国産初のハイブリッド連節バスのいすゞエルガデュオ(LX525Z1)となっている。国産の連節バスは日野自動車からもブルーリボンハイブリッド連節バスが同時発売されているが、エルガデュオとして導入・運行開始した全国第1号となっており、今のところエルガデュオに乗れるのは東京BRTのみ4)である。チラシなどで車両のイメージを掲載する際にはエルガデュオがよく使われており、東京BRTのシンボル的な存在になっている。

運行ダイヤは固定されており、時刻表で連節バスが充当する便を確認することができる。早朝に1回だけ虎ノ門ヒルズまで走るほかは、新橋折返しの便に使用されているようだ。点検等で走らない日がある場合は、東京BRTの公式Webサイトでその旨のお知らせが掲示される。エルガデュオを目当てに東京BRTを訪れる際には、まずは同社の公式Webサイトをチェックしておくのがよいだろう。

東京BRT 車両一覧

2020年10月1日現在の東京BRTの車両一覧を以下に示す。

社番 登録番号 型式 備考
1001 足立231い1001 トヨタZBC-MUM1NAE 20 燃料電池バス、正着制御システム装備
1002 足立230こ1002 トヨタZBC-MUM1NAE 20 燃料電池バス
1003 足立230き1003 トヨタZBC-MUM1NAE 20 燃料電池バス
1004 足立230き1004 トヨタZBC-MUM1NAE 20 燃料電池バス
1005 足立230え1005 トヨタZBC-MUM1NAE 20 燃料電池バス
1006 足立230え1006 いすゞ2PG-LV290Q3 20  
1007 江東210あ1007 いすゞ2PG-LV290Q3 20  
1008 江東210あ1008 いすゞ2PG-LV290Q3 20  
1009 江東210あ1009 いすゞLX525Z1 20 連節バス、ハイブリッド
  • 1)都心と臨海副都心とを結ぶBRTに関する事業計画[PDF] - 2016年4月。東京都都市整備局、京成バス。
  • 2)東京晴海水素ステーションの開所について[PDF] - ENEOSの2020年10月8日付プレスリリース
  • 3)車両をのりばに隙間なく停車させるようにする運転支援技術のこと。鉄道においてはTASC(Train Automatic Stop-position Controller、定位置停止装置)というのがあるが、それのバス版といった感じだろうか。
  • 4)2021年4月より三重交通が伊勢市内でいすゞエルガデュオを使用した「神都ライナー」の運行を予定している。東京BRTに次ぐエルガデュオの運行第2号になる。
  • 京成バス
  • BRT

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