【ヘッドマーク掲出】震災復旧も支えた名機!JR貨物のDD51がラストラン

スポンサーリンク

2011年3月11日14時46分の東日本大震災から今年で10年を迎えました。

東北地方のガソリンを確保すべく奔走した勇姿が大きな感動を呼んだJR貨物のDD51形も、ダイヤ改正前日となる2021年3月12日にて運用を退きます。

ラストランが近づいたことで、JR貨物では10日より2種類のヘッドマークを掲げての運行が行われました。

国鉄から継承したDD51形

DD51形は、非電化路線で活躍していた蒸気機関車を代替するため、国鉄が1962年から全国各地へ投入したディーゼル機関車です。

この機関車は、主要路線で大型蒸気機関車によって運行されていた旅客列車の高速性能・貨物列車の重量列車牽引の双方の性能を満たしつつ、曲線通過性能や軸重(線路に掛かる負荷)軽減などの工夫で“亜幹線”まで入線することを実現しています。

同時期に電気式など様々な方式・形状のディーゼル機関車が開発されたものの、国鉄の形式標準化の流れもあり、このDD51形と入替・地方路線などを目的としたDE10形が全国的に導入されています。

当時は“無煙化”を進めた第一人者としてファンから忌み嫌われるデビューとなりましたが、着々と増備が進行。

649機もの大量投入となりましたが、貨物列車・客車列車の運行縮小と電化の進行により、国鉄からの継承は259機、国鉄事業清算団から4機の復籍に留まりました。

JR東海・九州では比較的短命となったほか、JR北海道でも寝台特急が北海道新幹線延伸で運行を終了するとともに引退。残されているのはJR東日本で2機・JR西日本で8機。そして今回運行を終了するJR貨物のみと風前の灯火となっていました。

後継機の登場で徐々に活躍を縮小

JR貨物では、国鉄分割民営化直後から各地にて機関車の新形式投入が進められたものの、非電化路線についてはかなり消極的となっていました。

新形式としてDF200形電気式ディーゼル機関車を開発したものの、重量の制約から活躍の場は北海道のみに留まっていました。北海道では五稜郭から札幌貨物ターミナルを高速で運行するためにDD51形が重連牽引となっており、これの解消が狙いでDF200形は大出力の機関車とされています。

コンテナ以外の貨物輸送が年々削減傾向となるなかで新形式の開発はしばらく行われず、DD51形にエンジン改装などの大規模な更新工事をすることとされました。当初は青基調のカラーリングでしたが、後に現在の塗装に変更されています。

その後も原色機・更新機が全国で運用されてきましたが、年々運行範囲は縮小。

DD51形がニュースで大きく取り上げられたものとしては、開業からパイプライン完成までを支えるべく設定されたものの、成田空港闘争での襲撃事件でも知られることとなる成田空港ジェット燃料輸送があります。登場時にはファン層から嫌われていた機関車が、政治的な背景で過激派の目の敵にされることとなったことは不憫に思えます。

ファンから注目される2000年代まで運行されていた列車としては、後にその実績が再評価されることとなる磐越西線でのセメント輸送、比較的近年まで見られた美祢線の石灰石輸送、そして大阪近郊を走る城東貨物線(現在のおおさか東線)の貨物輸送などがあります。

寝台特急牽引機として一般利用者に注目された旅客会社継承機に比べると静かな最後でしたが、多くの機関車ファン・貨物列車ファンに見送られながら歴史に幕を下ろしていきました。

最後の活躍は関西本線

写真:四日市側のヘッドマーク

しばらくディーゼル機関車の新形式がなかったJR貨物でしたが、構内入換用にハイブリッド機関車HD300形、そしてDE10形で運行される短編成・平坦線区の貨物列車についてはDD200形が開発され、長年同僚として活躍していたDE10形の淘汰が徐々に進行しています。

DD51形は直接的な置き換えの動きはなかったものの、運用減少で少しずつ削減され、最後の活躍の場は関西本線の貨物列車となっていました。

この系統についても、北海道エリアのDF200形の運用削減により100番台が200番台化改造を受けて愛知に転出。2016年の登場から試験が繰り返され、2018年から徐々に関西本線の世代交代が進行しました。

置き換えられるDD51形も検査切れとともに除籍・解体が進められ、現在は857号機・1028号機・1801号機の3機のみの活躍となってしまいました。最後となった2020年改正での定期運用は関西線を3往復・名古屋臨海高速鉄道を1往復の運用を担っています。

報道では2020年の引退とされていましたものの、年度の終わりとなる2021年3月12日が最後の運行日となりました。

写真:名古屋方のヘッドマーク

東日本大震災や岡山広島豪雨で“ピンチヒッター”

晩年のDD51形を語る上では、災害迂回輸送で“ピンチヒッター”として登板したエピソードが外せません。

2011年の東日本大震災では、津波被害や高速道路寸断で東北地方のガソリン不足が深刻となるなか、上越線・磐越西線を経由して福島県へガソリンを届ける大役を担いました(過去記事)。

このほか、2019年の岡山・広島豪雨では山陽本線が大きな被害を受けたため、山陰本線経由で物流を支えました。

貨物列車が撤退して久しい線区に乗務員訓練を急遽実施して“復活”させた出来事は、ファンはもちろん沿線利用者にとっても大きな話題となりました。

普段はあまり注目を集めることは少ない鉄道貨物輸送。その中でも老朽化が進んで主力機ではなくなっていたDD51形が、災害時に持ち前の万能さを発揮したエピソードは後世まで語り継がれることとなるでしょう。

結局直接的な代替機は存在せず

先述のように、DE10形の代替として拠点駅の構内入換はHD300形・本線走行となる貨物列車としての運行はDD200形が開発されていますが、DD51形の代替は重連運行の解消を狙った出力・重量の大きいDF200形以降は登場していません

DD51形単機での運行がちょうど良かったはずの関西本線貨物列車も新造形式とはならず、北海道の運用削減で捻出されたDF200形での代替となりました。

DF200形は高速走行・重量の大きい北海道の貨物列車には適している機関車ですが、その軸重の課題から石北本線や四日市港線などでは入線試験に時間を要するなど、運用上の課題は大きい印象です。

もし今後、電気機関車が運行されている各路線が長期不通となった場合、DD51形のようにすぐに代替できる機関車は居ない状態となってしまいます。

災害の多い日本の今後を考えると出力は小さくても入線出来そうなエリアが多いDD200形の入線確認を予め実施しておけば……とも思いますが、元々が採算度外視で行っていたことを考えると難しいところでしょうか。

DD200形の高速性能は110km/hとDE10形に比べて進化していますが、出力はDE10形と同等とされています。DD51形でも空転等で苦戦していた山陰本線、重連牽引でないとクリアできなかった磐越西線ではともに性能不足で、DF200形の軸重問題を考えるとこちらの入線も難しそうです。

2024年以降にDF200形の置き換えに向けた電気式内燃機関車6両の導入が官報により示されており、この新形式がどのような仕様で登場するかが今後の注目ポイントとなりそうです。

関連記事はこちら

画像元ツイート紹介

今回のヘッドマーク掲出の写真は、フォロワーの三 河 鐵さま(@Mikawa_5300)より掲載許諾を頂いています。

コメント