皆様こんにちは。ブログおよびホームページ管理人の神@北見です。

 

引き続き記事重視で行きたいと思います。

 

キハ58系は冷房化に際し、初めに施工されたグリーン車は自車で完結する制御・電源システムで施工されたのに対し、普通車に対しては1エンジンのキハ28に自車含め3両給電用の発電セットを搭載し他車へ給電するシステムが採用されました。そのため冷房電源及び制御回路を引き通すため、電源用のKE8、制御回路用のKE53Cジャンパ連結器が増設されることになりました。

 

気動車の場合は車両の向き、連結位置に制約を受けないようにすることが運用上の前提条件となるため、前位側・後位側ともにジャンパ連結器が装備されました。そのため制御用ジャンパ連結器は編成中の片端にしかケーブルが付かないのに対し、冷房用のKE8・KE53Cは前後位側ともにジャンパケーブルが装備されています。また電車のように同一系列でしか連結を行わなく、使用されているエリアも限られている形式であればジャンパ連結器の整理が行われるのかもしれませんが、1両単位で他の一般形気動車含め混結が可能な事、運用範囲も全国に広がっていることから既存のシステムに追加する形でしかジャンパ連結器の増設が行われなかったのでしょう。一般形気動車で芯数の少ない古いジャンパ連結器をいくつも繋げる方式から多芯ジャンパ連結器1本にまとめる構想はキハ66・67やキハ40系で準備工事に至りましたが結局形式統一がままならず実際に本格採用されたのはJR化後の新系列気動車になってからですね。
 

↑キハ28 2157 運転席側には制御用のKE53が2本、そしてタイフォン横の太いのは冷房電源用のKE8、助手席側には冷房制御回路用のKE53Cと太いのが4本もあり、さらに尾灯脇には放送用のKE67、見えづらいですが連結器胴受下にはブレーキ用のKE68もあります。この車はJR東日本で保安ブレーキを装備し更にジャンパコネクタが追加されておりもうぐちゃぐちゃです。

 

↑キハ28 2158 こちらはJR西日本車でキハ28 2157にあった連結器横の保安ブレーキ用コネクタはありませんが、JR西日本ワンマン車の一部はワンマン回路用のジャンパ連結器が放送ケーブル脇にありました。

 

↑こちらはキハ56 138 キハ58の原形もほぼ同じで非冷房車なので制御用KE53が2本しか太いのはありません。これと放送用ケーブル、連結器胴受下に電磁ブレーキ用のKE68です。ただし北海道では晩年電磁ブレーキを使用しないのでこのKE68を撤去する車が多くいました。
 

さて話がそれましたが、キハ58系普通車の冷房化の際には、冷房電源用のKE8と制御用のKE53Cが増設されています。

 

↑キハ58 564 右の赤丸で囲ったのは冷房電源用のKE8、左の水色で囲ったのは冷房制御回路用のKE53Cです。

 

さてここまでは良く知られた事実でこれで終われば特に何も面白くないのですが、これで終わらないのがキハ58系の面白いところでしょう。

 

↑キハ58 562 赤丸で囲った中にあるKE8ジャンパ栓納めの位置が明らかに先のキハ58 564と比べて低い位置にあります。

 

そして色々と古い文献を調べてゆくと、1970年~1971年のキハ58系冷房化初期の写真を見ると全国的にこのようにKE8ジャンパ栓納めの位置が低い車ばかりです。果ては、新製間もないキハ65もこのように低い位置にKE8ジャンパ栓納めがあります。

 

ではなぜこのような低い位置の車と高い位置の車の2種類があるのかと思い調べてみると、バイブル誌である「鉄道ピクトリアル 第686号 2000年6月号 特集キハ58系(Ⅰ)」を参照すると、23ページに興味深い記述があります。ここではキハ58系の新製後に、検修・保守・保安上の理由で改修が行われた項目について記載されており、昭和46年度の記載の中で、

 

「冷房用のジャンパ連結器が、曲線通過時に密着自連やアングルコックに接触するため、ジャンパ栓納め、元タメ管アングルコックの位置変更、スカートの切り欠きを行う」というものがあります。まさにこの記述がキハ58系のKE8ジャンパ栓納め移設のカギとなっています。

 

要するに、キハ58系冷房化初期の頃は先に挙げたキハ58 562のような位置に冷房電源用KE8の栓納めが取り付けられましたが、これは位置が低いため連結器やブレーキ管のコックに接触するため、これを避けるために位置が上げられたという事になります。

 

↑例ですが、四国のキハ58では元々赤い四角で囲われた部分にKE8ジャンパ栓納めがありましたが、現在の位置に変更されたということになります。

 

↑九州の車も当初は赤い四角で囲ったあたりにKE8ジャンパ栓納めがありましたが、1971年以降に位置が上げられており、さらにタイフォン脇にあったKE53ジャンパ栓納め1つの位置も幌に近い部分に移設されています。

 

↑キハ58 541 山陰のキハ58も同様ですね。

 

このように当初は低い位置で冷房改造が始まったキハ58系ですが、1971年の特修工事より上に移設され、またこれ以降に冷房改造された車は当初からタイフォンの左上あたりにKE8ジャンパ栓納めが設置されました。

 

しかし、先のキハ58 562は低い位置のままであり、1971年から特修工事で位置変更が指示されたにも関わらず、そのまま残る車が居たのはキハ58系らしい点でした。国鉄本社特修工事の指示を無視?してそのまま低い位置で残っていたのは「新潟」「千葉」「水戸」の車で圧倒的に多く見られました。

 

↑キハ58 1012 新潟で急行「赤倉」指定席用に冷房化されたキハ58 1009・1010・1012・1019~1021は全車KE8ジャンパ栓納めの位置が低いまま残っていました。なお位置が低いということは昭和46年以前に冷房化されたことを意味していました。

 

↑元水戸のキハ28 2392 この車もKE8ジャンパ栓納めが低いですね。

 

↑元千葉配置のキハ28 2485 これもKE8ジャンパ栓納めの位置が低いです。九州にはこの他に元千葉のキハ28 2449がいましたがこれも同じく低い位置にありました。

 

このように、運転上・安全上問題があり特修工事で改造が指示されたのに、「新潟」「千葉」「水戸」では移設されていないのが分かります。

 

なおこのような例もあります。

 

↑キハ28 2481・2482(米子車) 千葉ヘッドマークステイが残っていることから分かる通り元千葉車で、1990年代までKE8ジャンパ栓納めの位置は低いまま残っていましたが、1990年代に通常の位置へ移設されました。だたし低い位置にあった時代の取付ボルトがそのまま残っており、昔は低い位置にあった痕跡が残っていました。

 

また、KE8ジャンパ栓納めの移設忘れは先に挙げた「新潟」「千葉」「水戸」以外にもごく少数残っており、

 

↑米子地区生え抜きのキハ28 2467ですが、KE8ジャンパ栓納めの位置が低いままです。

 

↑元和歌山車のキハ28 2413ですがこれも低いですね。

 

↑こちらも元和歌山車のキハ58 1032です。位置が低いまま残っています。

 

このように改修工事が全車に及ばず中途半端に終わる事、さらに未改修の車が優先的に淘汰される訳でもなく末期まで残っていることが、キハ58系趣味を面白くしていますね。このような例はこのジャンパ栓納めに限らず他のパーツにも散見され、例を挙げるときりがありません。

 

なお、このKE8ジャンパ栓納め位置変更は、位置が上がるだけでなくタイフォンに近い側に(外側に)寄るように移設されましたが、なかには幌枠に近いまま移設された車もいました。

 

↑キハ28 2353 通常はタイフォンに接するくらいの位置にあり、幌枠とは離れています。

 

ところが、

↑キハ28 2088、2119、2385 一部ではこのKE8ジャンパ栓納めが幌枠に近い方にある車もいました。主に名古屋・金沢地区に散見されます。

 

そして極めつけは…

 

↑キハ58 439 この車はジャンパ栓納めが下向きでは無く若干(20~30度くらい)斜め横向きに付いています。極力ジャンパケーブルをKE53と離したかったのでしょうがタイフォンが邪魔で右にずらすことも出来ず、苦肉の策として斜めにしたような感じです。

 

キハ58系に限らず、また国鉄に限らず私鉄でもジャンパ栓納めは真っすぐ下向きに取り付けられるのが常識ですが、このような常識破りの車が居るのがキハ58系の特徴でした。

 

ということで今回はキハ58系冷房車のKE8ジャンパ栓納めについての考察でした。繰り返しになりますが、保守上・安全上の理由で改修が始まったものの結局全車に及ばない中途半端さが複雑さに拍車をかけています。

 

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。それでは次回もお楽しみに!!

 

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にもキハ58系各車の解説がありますのでご覧になってください。