横須賀線ストーリー | 書斎の汽車・電車

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 今回は、佐藤良介『横須賀線70系時代(上)(下)』(RMライブラリー249・250)のご紹介です。

 タイトルの通り、「スカ形」こと70系電車が活躍した時代を中心とする横須賀線の回顧本です。

 

 最近の若いファンの方はどうか知りませんが、横須賀線というと、首都圏の国電(という言葉も最早死語ですかね)の中でも、特別な存在でした。やはりモハ32などのクロスシート車が高速運転をするという戦前のイメージ、2等車(グリーン車)の存在などが、「特別な電車」というイメージを作ってきたのでしょう。その横須賀線の戦後の「顔」といえるのが70系電車でした。

 本書では、その70系が投入されてから、111・113系に追われて横須賀線を去るまでの歴史が詳しく紹介されています。製造年次ごとの変化、編成の変遷、更新工事など、エピソードは豊富です。

 横須賀線電車は70系のみの整った編成というのは実はあまりなく、戦後関西から転入してきた42系も、70系に伍して長らく活躍しています。その42系についても、投入から晩年の3扉化に至る歩みがよくわかります。こちらも、モハ43はもちろんですが、「流電」の中間車なども「スカ色」に塗られて活躍していまして、ちょっと模型化してみたくなります。

 2等車のバリエーションが豊富なのもこの線の特徴でしょう。70系のサロ46(後のサロ75)だけでなく、戦前派のサロ45、17m級のサロ15、果ては80系「湘南形」のサロ85まで陣容に加わっています。この傾向は新性能化後も続いていまして、特急車に匹敵するような「サロ」がある一方、懐かしの「並ロ」もあり、さらに特急用からの改造車などバラエティに富んでいたのを思い出します。

 

 本書の主役は、70系を中心とした電車ですが、横須賀線で活躍した機関車や貨物列車などについても頁が割かれています。昭和20年代にあっては、B20形蒸気機関車や8500形(のちのDD12形)ディーゼル機関車、それに在日米軍用の冷蔵車、タンク車などが顔を見せます。また、電気機関車でも、ED10、ED23、ED17の24・26号機(旧ED51)といった好ましい面々が登場します。下巻39頁のED17の26号機がク5000からなる自動車専用列車を牽くシーンなど、手持ちの模型で再現してみたくなりました。このほか、クヤ9000なるオールドタイマーが使用されていた大船工場の職員輸送列車、久里浜駅構内の留置車など、興味深い写真多数です。

 

 何度も述べていますが、本書はとにかく「模型ゴコロ」を刺激してくれます。さしあたっては、手持ちのマイクロエースの70系に、モハ43、サロ45、サハ48などを組み込んでみたくなりましたが、70系のスカ色の色あいが登場時のものとなっていることから、塗装で苦労しそうです。

 マイクロエースの70系電車です。70系のみの整った編成なのですが、これに42系を組み込みたいというのですから、我ながら欲張りだなあと思います。

 

 さて、横須賀線といえば、E235系1000番代の投入が始まり、『とれいん』誌では3月号でさっそくこの電車の特集を組んでいます。一方、追われる立場の「平成のスカ形(?)」E217系については、『鉄道ファン』誌が4月号で特集を組んでおり、鉄道雑誌の世界ではちょっとした「横須賀線ブーム」となっています。各誌を読んで、それぞれの時代の横須賀線電車に思いをはせるのもまた一興でしょう。