DD51形ディーゼル機関車の引退特集その3
「東日本大震災」この経験を生かした迂回貨物輸送は中国地方でも
2018年(平成30年)の夏、岡山・広島を中心に大きな被害をもたらした集中豪雨では、西日本の大動脈である山陽本線が大きな被害を受けました。
迂回路として、倉敷からの伯備線・そこから山陰本線というルートが検討されました。
しかしながら、10年以上前であるもののなんとか実績があった磐越西線とは異なり、もはやJR貨物内に山陰本線を走れる機関士はいませんでした。
そんな状況下でも、JR貨物ではJR西日本所有のDD51形ディーゼル機関車にて乗務員訓練を実施してまで迂回貨物列車の運行を達成しています。
駆け付けられるDD51形の残存数・山陰本線のダイヤ上の制約など、磐越西線とは異なる厳しい条件もあるなかで、なんとかコンテナ貨車6~7両・1日1往復の貨物列車運行を実現しました。
もちろん、普段の山陽本線の貨物列車本数を考えれば微々たる輸送力です。
しかしながら、西日本のインフラを守る為に入念な準備をしてまで運行に至ったのは、紛れもなく東北での経験あってのことでしょう。
目先の利益だけにとらわれなかった、JR貨物の上層部の英断には頭が上がりません。
普段は貨物列車が走る事の無い、山口線の篠目駅を通過、新山口駅に向かうDD51 857号機が牽引する、山陰迂回貨物列車。
吹田機関区・DD51 857号機
使命を終えた機関車たちの今
各地からかき集められて磐越西線を走ったDD51形ディーゼル機関車ですが、現在はほとんど見かけない機関車となってしまいました。
もともとが余剰車であったこともあり、そのまま活躍した者や所属区に戻って活躍した者などがありましたが、現在は今回の輸送に携わった8両全ての機関車が廃車されてしまいました。
しかしながら、彼らの雄姿・伝説は、南東北の住民にとって、鉄道マンにとって、沿線の鉄道ファンにとって決して忘れられることはなく、これからも語り継がれていくことでしょう。
そして、盛岡までの迂回輸送を担った電気機関車たちですが、こちらはその多くは現在も貨物輸送に従事しています。
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