コロナ禍によるJR各社の業績不振は深刻さを増しており、JR西日本の長谷川一明社長は18日の定例記者会見で「ローカル線の維持は難しくなっており、今後の在り方について協議していく」と述べた上で、LRT化やバス転換を含め、廃線に向けた路線見直しに言及しました。

 

↓は報道した毎日新聞の記事(予告なくリンク切れする場合があります)。

『JR西社長「経営悪化でローカル線維持困難」 廃線視野に見直し』

 

 

 

JR西日本は本州3社の中でも営業エリアが広い分、多数の不採算路線を抱えており、経営の重荷になっているのは確かです。

特に中国山地の人口希薄地帯を走る路線は特に深刻といえましょう。

(芸備線備後落合駅に停車中のキハ120。左側の新見行の走行区間である備後落合~東城は1日3往復の列車しかなく、輸送密度10前後というJR全線の中でも極端に低い区間である)

 

 

 

同社もJR北海道と同様、特定地方交通線転換とは別に1990年代からいくつかの不採算路線を廃線にしており、3セク化の例を除けば1997年の美祢線南大嶺~大嶺、2003年の可部線可部~三段峡、最近では2018年3月31日限りで営業を終了した三江線の例があります。

 

 

 

同社のドル箱路線だった山陽新幹線はコロナ禍によってビジネスや観光での利用が極端に減少し、京阪神エリアの各線もテレワークの普及で通勤利用が減少する事により、大幅な減収で不採算路線の赤字の穴埋めまで手が回らなくなった、といった処でしょうか。

 

 

 

いくら公共交通とはいえ、慈善事業ではありませんから不採算路線の全てを残すワケにはいかないというのは解ります。都市間輸送としての役割もなく、列車を走らせても極端に利用が少ない路線に対してはバス転換などの見直しも必要かもしれません。しかし、中には住民の大切な足として利用されている路線もある事でしょう。出雲の國・斐伊川サミットという組織が運行経費を負担した上で『奥出雲おろち号』を走らせている木次線のように、観光資源として活用されている例もあります。

 

 

 

ローカル線の存廃問題はあくまでも地元と鉄道事業者との話し合いで決める事であって、日常の利用客でもない我々外野が「廃線には断固反対!」「いや、赤字路線だから廃線は仕方ない」なんて偉そうな事は言えません。しかし、既に上場して完全民営化した西日本ですから、株主から「不採算路線は廃線にしろ!!」と責められるのは目に見えています…。


国鉄分割民営化を推進した自民党の新聞広告には「ローカル線(特定地方交通線以外)もなくなりません」との文言がありました。しかしそれから30数年…それは真っ赤なウソでした。

 

分割民営化を進めるにあたって、公共財として線路などのインフラを国や自治体が管理する『上下分離方式』でJRは運行のみを担うやり方や、株式上場後も『モノ言う株主』に乗っ取られないように政府が大株主として出資を維持したり(国鉄と同じ3公社の1つで、先に民営化された旧電電公社のNTTは依然として財務大臣が筆頭株主を維持している)、持ち株会社方式でJR各社を束ねるといった施策が必要だったと思います。

 

赤字を垂れ流し続けて結局解体されてしまった国鉄に対する反省なのかもしれませんが、だからといって日本の交通政策は鉄道に対してはあまりにも蔑ろにしているとしか言いようがありません。

道路、空港、港湾は国なり自治体が整備しますが、鉄道に関しては基本的に事業者がインフラ全般を管理しなければなりません。それなら採算が取れるハズがないでしょう。
 

他のJR各社も、四国や九州も北海道の例に倣い、各路線の収支を公表して不採算路線の存廃問題を提起しています。

このままでは、日本中からローカル線はもとより、地方幹線までもが消えてしまう事になりかねません。

それでも、ある程度の需要が見込まれる路線については存続すべきだと思いますが…。

今見直すべき事は、国鉄分割民営化の在り方ではないでしょうか?

 

乱文乱筆失礼しました。